《カクヨム様で50000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう

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一章 契約と回帰

第二話

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――落ちていく。
 意識は深い深い闇へ沈み、身体の輪郭すら曖昧になった。

 その中で、唯一鮮明な声が響いた。

『ソラ、お前が選んだのだ。“生き直したい”と』

 黒猫の――いや、悪魔の声だ。

『過去に戻る代償は決して軽くはない。だが、お前にはその価値がある。
 だから私がお前を選んだ』

 言葉の意味が、ぼんやりと染み込んでいく。

『もうだけ一度やり直せ。
 次は……最高の人生を歩め』

 暗闇が裂け、強烈な光が視界を満たした。

 ――眩しい。

 まぶたを開く。
 見えたのは、かつて毎日見上げていた、若い頃の自分の部屋の天井だった。

 壁に貼られた懐かしいポスター。
 新品の訓練用木剣。
 学校指定のカバン。

 そして――

「……ここは……俺の、部屋……?」

 手のひらを見た瞬間、呼吸が止まった。

 小さい。
 細い。
 懐かしすぎるほど、未熟な手。

 ――15歳の頃の俺の身体だ。

「嘘だろ……? こんなに戻るなんて……」

自分が戸惑っていると背後からにゃあと声がした。
  黒猫――いや悪魔は、机の上から俺を見下ろしていた。
 その瞳は、弱った野良猫のものではない。

「ソラ、お前はもう以前のお前とは違う」

「どういう意味だ?」

『契約によって、お前の体は書き換えられた。
 この世界の人間は与えられたスキルを変えることはできない。それは“絶対に”不可能だ』

「……それは知ってる。だから俺は――」

『だが、契約者であるお前だけは例外だ。
 お前のスキルは――増やすことも成長させることもできる』

 心臓が跳ねた。

「成長…?」

『試してみろ。目を閉じて、自分の内側を見ろ』

 言われた通りに意識を集中すると、視界の裏側に淡い光の文字が浮かび上がった。

――――――――
【スキル一覧】
・アイテムボックス Lv1
――――――――

 全身に鳥肌が立った。

『お前は私の契約者――ただ一人、スキルを強くすることができる存在だ』

 黒猫は尻尾をゆらりと揺らす。

『成長すればアイテムボックスは拡張するし別の“能力”に変質することもある。
 今のお前は、可能性そのものだ』

 胸が熱くなるのを止められない。

「……本当に、やり直せるんだな」

『ああ。
 スキルを成長させられるお前だけの道だ。
 だが、努力は必要だ。
 そこを間違えるなよ』

 黒猫の瞳は、まっすぐ俺を見ていた。

「……ありがとう。
 本気で、この先を変えてみせる」

『なら始めよう。
 未来を変える、第二の人生を』



朝日が差し込む部屋で目を覚ました瞬間、自分の身体が十五歳の頃のものだという現実が再確認される。夢ではない、二十年前に戻ったのだ。

 鏡の前に立つと、不安げなあどけなさの残る顔。三十五歳のときの疲れ果てた表情はもうない。

何度見ても、不思議で、情けなくて、けれどどこか懐かしい。

「……ここからやり直すんだ」

 自分に言い聞かせるように呟く。

 今日は進路の分岐点――スキル診断日。

 十五歳になった者は全員、街のスキル鑑定所へ行き、生涯の能力を判定される。それがこの世界での“運命決定の日”だ。

 本来の俺は、その日ここで絶望した。

 アイテムボックス――戦えない、守れない、強くなれない、ただ荷物を入れるだけのスキル。

 その烙印を押されたのが今日だった。

(……だけど今は違う)

 右手を見る。手のひらは小さいが、確かにあの時とは違う力がある。

 黒猫のクロ、いや――悪魔との契約。
 スキルを“成長”させられる特別な存在。

「お前がいれば……いや、俺次第で変えられる」

『気が早いな』

「うおっ……!」

 振り返ると、ベッドの上でクロが丸くなっていた。黄金の瞳だけがこちらを見ている。

「お前、ずっとそこにいたのか?」

『契約者の監視は義務だからな。安心しろ、寝顔は特に見ていない』

「見てるじゃねえか……」

 ため息をつくと、黒猫は喉を鳴らした。

『今日はスキル診断だな。前の人生では絶望しただろうが……今回は違う』

「……知ってるのか」

『契約者の過去くらい把握している。
 だがソラ、勘違いするな。スキルがアイテムボックスであることは変わらない』

「やっぱり……」

 心臓がずしりと重くなる。
 それでも――ここが終わりじゃない。

『ただし、“ここから伸びる”。それだけは絶対だ』

 クロの言葉は、妙に胸に響いた。

「……行ってくる」

『ああ、見届けてこい。人間世界の残酷さを』

「励ましてるのか貶してるのか分からん……」

家を出て30分ほどで目的地であるスキル鑑定所についた。
スキル鑑定所の前は、同じ年頃の少年少女で賑わっていた。
 緊張する者、友達同士でふざけている者、親に励まされている者。それぞれの期待や不安が入り混じる。

「おい見ろよ、ソラが来てる」

「え……ああ、アイツか」

 小さく指さされる。
 二十年前と同じ反応に、胸の奥がざらつく。

「身体弱いし、あいつスキル大したことねえんじゃね」

「たぶん生活系だろ、雑魚確定じゃね?」

 笑い声。
 前の人生なら、ここで心が折れていた。

 しかし今の俺は違う。
 何を言われても、心は不思議と静かだった。

(この声を二十年前にも聞いたな……)

 過去がそのまま目の前で再現されている。

「次の人」

 鑑定士の老職員に呼ばれる。
 部屋に入ると、水晶玉のような大きな魔導具が置かれていた。

「手を置いてください。深呼吸して、力を抜いて……」

 言われた通りにする。

(……分かってる。結果は変わらない)

 アイテムボックス。
 この世界で最も地味で、軽視されるスキル。

 だが前の人生の俺とは違う。
 たとえ同じスキルでも――ここから成長できる。

 魔導具が淡く光った。

「結果が出ました……」

 鑑定士が静かに読み上げる。

「スキルは――アイテムボックス」

 部屋の外がざわついた。
 笑い声が聞こえる。
 どこかで落胆するような溜息も。

「……やっぱりそうか」

 分かっていたとはいえ、胸が少し痛んだ。

「だが、悪くはありませんよ。生活には困りませんし、補助として……」

「いえ。十分です。ありがとうございます」

 鑑定士は驚いたように目を細めた。

「ずいぶん冷静だね」

「……まあ、覚悟してましたから」

 本当は違う。
“覚悟”ではない。
すでにこの未来を経験しているだけだ。

 鑑定所を出ると、外で待っていた数人の同級生がさっそく噂を始めた。

「アイテムボックスだってよ」

「やっぱ雑魚じゃん」

「だよなー」

 笑われても、何も感じない。
 むしろ――

(よし、これでいい)

 計画通りだ。

アパートに戻る途中、クロがひょいと壁から飛び降りてきた。

『どうだった?』

「知ってたくせに……」

『まあいい。結果を聞かせろ』

「アイテムボックスだったよ……」

『前の人生と同じ、か』

「……ああ」

クロは尻尾を揺らし、少しだけ笑ったように見えた。

『だが勘違いするな。
 “ここからがスタート”だ』

 その言葉を聞いた瞬間、

――――――
【スキル:アイテムボックス Lv1 → Lv2 に成長可能】
――――――

 脳裏に光が走った。

「……っ!」

 立ち止まる俺に、クロは満足げに言う。

『見えただろう?』

「これ……本当に……?」

『ああ。鍛えれば、使えば、工夫すれば――
 スキルは必ず成長する。お前だけの力だ』

「……ありがとう」

 本気でそう思った。

『レベルを上げるヒントを教えてやろう。
 今夜、私が特別に“やり方”を示す』

「やり方?」

『ああ。スキルを育てるための、最初の一歩だ』

 クロの瞳が、闇夜の中で妖しく輝く。

『第二の人生、本当の開幕は――今夜だ』
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