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二章 黒曜麒麟
六十二話
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次の日の放課後。
ソラはいつものように四人と顔を合わせると、深く息を吸い、覚悟を決めたように口を開いた。
「……みんなに、お願いがある」
その声色に皆んなボッケ、リン、マルコ、ファラが自然と表情を引き締めた。
ソラは一歩前に出ると、その場で頭を下げた。
「一緒に、Bランクダンジョンに行ってほしい」
空気が止まった。
Bランクダンジョン――学生が軽々しく口にしていい場所ではない。
本来なら、幾度も死線を潜り抜けてきたベテランのシーカーたちが、命を賭けて挑む領域だ。
「もちろん……断ってくれていい」
ソラは頭を下げたまま、続ける。
「無茶なお願いだって分かってる。俺たちはまだ学生だし、経験も足りない。
正直に言えば、行かない方が正しい選択だと思う」
一瞬、喉が詰まる。それでも言葉を止めなかった。
「理由は……俺の勝手だ。
泣きそうになってる女の子を見て、放っておけなかっただけだ。
そんな理由で、みんなを危険な場所に連れて行こうとしてる」
床に落とした視線が、さらに低くなる。
「だから……本当に、断ってくれて構わない。
それでも……それでも、お願いします」
静寂が流れる。
誰もすぐには口を開かなかった。
ソラの胸の中で、不安が膨らんでいく。
――やっぱり、無理だよな。
――こんな話、聞かせるべきじゃなかった。
ボッケは腕を組み、難しい顔をしている。
リンは視線を落とし、何かを考え込むように唇を噛んでいる。
マルコはいつもの軽薄な笑みを消し、珍しく真剣な目をしていた。
ファラもまた、黙ったままソラを見つめている。
沈黙の一秒一秒が、やけに長く感じられた。
「……」
最初に口を開いたのはボッケだった。
「……とんでもない場所に行こうって言い出すもんだな」
低く、ぶっきらぼうな声。だが拒絶ではない。むしろ状況を噛み締めるような口調だった。
リンは胸の前で指を絡め、小さく息を吸う。
「決して……楽なところじゃ、ない……よね……」
不安を隠しきれない声。それでも視線は逸らさず、ソラをまっすぐ見ている。
マルコは肩をすくめ、いつもの調子でソラを指さした。
「ソラ君はさ、偶にとんでもないことを言い出すよね!」
そう言ってウインクするが、笑顔の奥に覚悟が滲んでいた。
最後にファラがやれやれ、と首を振る。
「ソラはまだまだですねー。ほんと、世話が焼けまーす」
その言葉に、四人は自然と顔を見合わせた。
言葉はなくとも、視線だけで意思が通じ合う。小さく、だが確かな頷き。
そして、四人が同時にソラへ向き直る。
「「「「5人で同じパーティだろ! 一緒に行くよ!」」」」
声が重なり、はっきりとした答えが空気を震わせた。
ソラは一瞬、言葉を失った。
呆然と四人を見つめ、それから思わず声を荒げる。
「……っ、みんな! 本当に分かってるのか!?
Bランクだぞ!? 授業じゃないんだ!
下手したら……本当に命を落とすかもしれないんだぞ!」
それは拒絶ではなく、心配からくる焦りだった。
自分の願いが、仲間の命を賭けるものだという自覚が、ソラを焦らせていた。
ボッケは肩をすくめる。
「やれやれ……一緒に行ってほしいのか、止めてほしいのか分からん奴だな」
そして、真剣な目で続けた。
「だが、それでも答えは変わらん。私たちは――ソラ、お前と一緒に行くさ」
リンとファラが、同時に小さく、しかし力強く頷く。
「……うん」
「そういうことでーす」
マルコは軽く笑いながらも、真っ直ぐな声で言った。
「女の子が泣きそうになってる。それだけで、行かない選択肢なんてないよ!」
ソラの胸に、熱いものが込み上げた。
言葉にならず、ただ深く、深く頭を下げる。
「……ありがとう。
本当に、ありがとう……!」
仲間たちは何も言わず、ただ笑った。
その笑顔が、ソラの覚悟をより一層強く固めていく。
ソラはいつものように四人と顔を合わせると、深く息を吸い、覚悟を決めたように口を開いた。
「……みんなに、お願いがある」
その声色に皆んなボッケ、リン、マルコ、ファラが自然と表情を引き締めた。
ソラは一歩前に出ると、その場で頭を下げた。
「一緒に、Bランクダンジョンに行ってほしい」
空気が止まった。
Bランクダンジョン――学生が軽々しく口にしていい場所ではない。
本来なら、幾度も死線を潜り抜けてきたベテランのシーカーたちが、命を賭けて挑む領域だ。
「もちろん……断ってくれていい」
ソラは頭を下げたまま、続ける。
「無茶なお願いだって分かってる。俺たちはまだ学生だし、経験も足りない。
正直に言えば、行かない方が正しい選択だと思う」
一瞬、喉が詰まる。それでも言葉を止めなかった。
「理由は……俺の勝手だ。
泣きそうになってる女の子を見て、放っておけなかっただけだ。
そんな理由で、みんなを危険な場所に連れて行こうとしてる」
床に落とした視線が、さらに低くなる。
「だから……本当に、断ってくれて構わない。
それでも……それでも、お願いします」
静寂が流れる。
誰もすぐには口を開かなかった。
ソラの胸の中で、不安が膨らんでいく。
――やっぱり、無理だよな。
――こんな話、聞かせるべきじゃなかった。
ボッケは腕を組み、難しい顔をしている。
リンは視線を落とし、何かを考え込むように唇を噛んでいる。
マルコはいつもの軽薄な笑みを消し、珍しく真剣な目をしていた。
ファラもまた、黙ったままソラを見つめている。
沈黙の一秒一秒が、やけに長く感じられた。
「……」
最初に口を開いたのはボッケだった。
「……とんでもない場所に行こうって言い出すもんだな」
低く、ぶっきらぼうな声。だが拒絶ではない。むしろ状況を噛み締めるような口調だった。
リンは胸の前で指を絡め、小さく息を吸う。
「決して……楽なところじゃ、ない……よね……」
不安を隠しきれない声。それでも視線は逸らさず、ソラをまっすぐ見ている。
マルコは肩をすくめ、いつもの調子でソラを指さした。
「ソラ君はさ、偶にとんでもないことを言い出すよね!」
そう言ってウインクするが、笑顔の奥に覚悟が滲んでいた。
最後にファラがやれやれ、と首を振る。
「ソラはまだまだですねー。ほんと、世話が焼けまーす」
その言葉に、四人は自然と顔を見合わせた。
言葉はなくとも、視線だけで意思が通じ合う。小さく、だが確かな頷き。
そして、四人が同時にソラへ向き直る。
「「「「5人で同じパーティだろ! 一緒に行くよ!」」」」
声が重なり、はっきりとした答えが空気を震わせた。
ソラは一瞬、言葉を失った。
呆然と四人を見つめ、それから思わず声を荒げる。
「……っ、みんな! 本当に分かってるのか!?
Bランクだぞ!? 授業じゃないんだ!
下手したら……本当に命を落とすかもしれないんだぞ!」
それは拒絶ではなく、心配からくる焦りだった。
自分の願いが、仲間の命を賭けるものだという自覚が、ソラを焦らせていた。
ボッケは肩をすくめる。
「やれやれ……一緒に行ってほしいのか、止めてほしいのか分からん奴だな」
そして、真剣な目で続けた。
「だが、それでも答えは変わらん。私たちは――ソラ、お前と一緒に行くさ」
リンとファラが、同時に小さく、しかし力強く頷く。
「……うん」
「そういうことでーす」
マルコは軽く笑いながらも、真っ直ぐな声で言った。
「女の子が泣きそうになってる。それだけで、行かない選択肢なんてないよ!」
ソラの胸に、熱いものが込み上げた。
言葉にならず、ただ深く、深く頭を下げる。
「……ありがとう。
本当に、ありがとう……!」
仲間たちは何も言わず、ただ笑った。
その笑顔が、ソラの覚悟をより一層強く固めていく。
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