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二章 黒曜麒麟
九十二話
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ソラたちは、戦闘による消耗もなく無事に九階へと辿り着いた。
ただし、立ち止まる暇もなく駆け抜けてきたため、全員の呼吸は荒い。
それぞれが壁や膝に手をつき、短い時間だけ息を整える。
ガリオンたちのことが脳裏をよぎる。
だが――彼らはベテランのシーカーだ。
危なくなっても自分達で乗り越えられる、今は信じるしかない。
「……今は、自分たちの役目を果たすだけだ」
ソラはそう心の中で言い聞かせ、気持ちを切り替えた。
これから自分達が相手にするのは、
Bランクダンジョンの主――黒曜麒麟。
倒す必要はない。
必要なのは、ただ一つ。黒曜麒麟の“角”。
だが、最大の不確定要素はカイトだった。
無事でいてくれればいい。
助け出せれば、それでいい。
――もしも、すでに戦い、全滅していたら。
最悪の可能性が脳裏をかすめる。
ソラはその想像を振り払い、覚悟を固めた。
周囲を見渡せば、リンも、ユナも、他の仲間たちも、口には出さずとも同じ覚悟を抱いているのが分かる。
その沈黙を破るように、ハーデンがユナへと歩み寄った。
「ユナさん」
真剣な眼差しで、はっきりと言葉を選ぶ。
「黒曜麒麟に対して奇襲をかけられるのは、おそらく出会い頭の一度きりです」
一瞬の間。
「この中で、最も高い攻撃力の魔法を放てるのは、ユナさんです」
ハーデンは深く頭を下げるほどではないが、誠実に問いかけた。
「お願いしても、よろしいですか?」
ユナは一度、ぎゅっと拳を握る。
脳裏に浮かぶのは、病床に伏す母の姿。
そして――一緒にこのダンジョンに来てくれた仲間たちの顔。
「……はい」
顔を上げ、まっすぐにハーデンを見据える。
「やります。必ず」
その声は、震えも迷いもなかった。
ハーデンは続けて、ソラたち一人ひとりの顔を見渡した。
その視線には、迷いも甘さもない。
「これから先、私たちは黒曜麒麟と戦います」
低く、しかしはっきりとした声がソラ達の思いを引き締める。
「生半可な戦闘になるなど、決して思わないでください。
そして――どんな理由があったとしても」
一拍、間を置く。
「私が倒れた時点で、皆さんはこの階まで引き返してください」
一瞬、空気が凍りつく。
「……このポーションを渡しておきます」
ハーデンは人数分の回復薬を取り出し、順に手渡していく。
「絶対に、全員が無事に戻ること。
それを最優先にしてください。いいですね?」
その言葉は命令であり、願いでもあった。
ソラたちはその想いを真正面から受け止め、力強く声を揃える。
「はいっ!」
必ず全員で生きて帰る。
そして、黒曜麒麟の角も手に入れる。
その決意が、全員の胸で一つに重なった。
ユナはすでに氷魔法を練り上げていた。
いつでも最大威力を放てるよう、全神経を集中させている。
――ユナの持つ最大威力の氷魔法。
《ビッグ・アイス・ランス・シェル》
どれほどのダメージを与えられるかは未知数だが、無傷で済むはずがない。
ユナとハーデンはそう確信していた。
そして、階段を上り――扉の前に立つ。
ハーデンが静かに頷き、扉を押し開いた。
その瞬間。
視界に飛び込んできたのは、空中を舞う人影。
「――カイト!?」
カイトの体が、まるで人形のように吹き飛ばされていた。
命は繋ぎ止めている。
だが、その状態は明らかに限界だった。
一刻の猶予もない。
ハーデンは即座に状況を把握し、ユナに小声で叫ぶ。
「ユナさん……お願いします!」
その声に、ユナは一切の迷いなく応える。
魔力が解き放たれる。
「――《ビッグ・アイス・ランス・シェル》!!」
同時に、ハーデンの指示を受ける前から、ソラたちは飛び出していた。
次の瞬間――
極大の氷槍が夜の世界を切り裂き、黒曜麒麟へと直撃する。
轟音と共に氷が炸裂し、
黒曜麒麟の巨体が大きく後方へと弾き飛ばされた。
ついに――決戦の幕が、切って落とされた。
ただし、立ち止まる暇もなく駆け抜けてきたため、全員の呼吸は荒い。
それぞれが壁や膝に手をつき、短い時間だけ息を整える。
ガリオンたちのことが脳裏をよぎる。
だが――彼らはベテランのシーカーだ。
危なくなっても自分達で乗り越えられる、今は信じるしかない。
「……今は、自分たちの役目を果たすだけだ」
ソラはそう心の中で言い聞かせ、気持ちを切り替えた。
これから自分達が相手にするのは、
Bランクダンジョンの主――黒曜麒麟。
倒す必要はない。
必要なのは、ただ一つ。黒曜麒麟の“角”。
だが、最大の不確定要素はカイトだった。
無事でいてくれればいい。
助け出せれば、それでいい。
――もしも、すでに戦い、全滅していたら。
最悪の可能性が脳裏をかすめる。
ソラはその想像を振り払い、覚悟を固めた。
周囲を見渡せば、リンも、ユナも、他の仲間たちも、口には出さずとも同じ覚悟を抱いているのが分かる。
その沈黙を破るように、ハーデンがユナへと歩み寄った。
「ユナさん」
真剣な眼差しで、はっきりと言葉を選ぶ。
「黒曜麒麟に対して奇襲をかけられるのは、おそらく出会い頭の一度きりです」
一瞬の間。
「この中で、最も高い攻撃力の魔法を放てるのは、ユナさんです」
ハーデンは深く頭を下げるほどではないが、誠実に問いかけた。
「お願いしても、よろしいですか?」
ユナは一度、ぎゅっと拳を握る。
脳裏に浮かぶのは、病床に伏す母の姿。
そして――一緒にこのダンジョンに来てくれた仲間たちの顔。
「……はい」
顔を上げ、まっすぐにハーデンを見据える。
「やります。必ず」
その声は、震えも迷いもなかった。
ハーデンは続けて、ソラたち一人ひとりの顔を見渡した。
その視線には、迷いも甘さもない。
「これから先、私たちは黒曜麒麟と戦います」
低く、しかしはっきりとした声がソラ達の思いを引き締める。
「生半可な戦闘になるなど、決して思わないでください。
そして――どんな理由があったとしても」
一拍、間を置く。
「私が倒れた時点で、皆さんはこの階まで引き返してください」
一瞬、空気が凍りつく。
「……このポーションを渡しておきます」
ハーデンは人数分の回復薬を取り出し、順に手渡していく。
「絶対に、全員が無事に戻ること。
それを最優先にしてください。いいですね?」
その言葉は命令であり、願いでもあった。
ソラたちはその想いを真正面から受け止め、力強く声を揃える。
「はいっ!」
必ず全員で生きて帰る。
そして、黒曜麒麟の角も手に入れる。
その決意が、全員の胸で一つに重なった。
ユナはすでに氷魔法を練り上げていた。
いつでも最大威力を放てるよう、全神経を集中させている。
――ユナの持つ最大威力の氷魔法。
《ビッグ・アイス・ランス・シェル》
どれほどのダメージを与えられるかは未知数だが、無傷で済むはずがない。
ユナとハーデンはそう確信していた。
そして、階段を上り――扉の前に立つ。
ハーデンが静かに頷き、扉を押し開いた。
その瞬間。
視界に飛び込んできたのは、空中を舞う人影。
「――カイト!?」
カイトの体が、まるで人形のように吹き飛ばされていた。
命は繋ぎ止めている。
だが、その状態は明らかに限界だった。
一刻の猶予もない。
ハーデンは即座に状況を把握し、ユナに小声で叫ぶ。
「ユナさん……お願いします!」
その声に、ユナは一切の迷いなく応える。
魔力が解き放たれる。
「――《ビッグ・アイス・ランス・シェル》!!」
同時に、ハーデンの指示を受ける前から、ソラたちは飛び出していた。
次の瞬間――
極大の氷槍が夜の世界を切り裂き、黒曜麒麟へと直撃する。
轟音と共に氷が炸裂し、
黒曜麒麟の巨体が大きく後方へと弾き飛ばされた。
ついに――決戦の幕が、切って落とされた。
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