16 / 217
1章 五人の勇者
1章 エピローグ 〜終わった物語が再び動き出す時〜
しおりを挟む──孝志とネリーが揉めていた丁度その頃、とある一室にて重大な会議が行われていた。
そこでは、魔王に傷付けれられて意識不明の重体だった六神剣のクロードが目を覚まし、回復魔法で動けるまでに回復した事で、彼への聞き取り調査が執り行われていた。
無論、今回の魔王についての話である。
前もってクロードと共に帰還していたエディにも聞き取りは行っていたのだが、クロードと魔王の戦闘時、かなり離れた位置に居たので大まかにしか見えていなかった。
この場にはクロードの他に、王族として第一王子ブローノと第二王女マリア。
焦げ茶色の短髪に細身な体の男性、六神剣リーダーの【マティアス・ファングス】
緑色のフードを被った男性、宮廷魔道士長【オーティス・アルカナ】
そして王国に複数あるそれぞれの騎士団の団長と副団長が出席していた。
──実力者の集まりで総勢で三十人以上は居る。
更に離れたところには王国最強騎士の剣帝ユリウス・ギアードと剣聖アリアン・ルクレツィアが、部屋の入り口の付近で壁にもたれ掛かる様にして立っていた。
当然、2人はこの位置に追いやられた訳ではなく、王族を交えた重要な会議の時は万が一の襲撃に備えてあえてこの場所を陣取っている。
ちなみに、第一王女ネリーにも声は掛かっていたが、橘雄星に会いに行くと言う、くだらない理由から欠席。
国王ゼクスに至っては、こういう時の会議はほとんど子供達に任せているので参加はしない。
──クロードが騎士達から次々と飛んで来る質問に答えながらも、淡々と魔王との戦闘について語ってくれている。
エディに聞いた時は片手でクロードの大剣を止め、更には人差し指での一撃でクロードを戦闘不能にするなど、にわかに信じられなかった。
だが、実際に交戦したクロードが言う以上は信じずにはいられない。
指一本に負けたなんて屈辱的な嘘をわざわざ言うとは思えないからだ。
ただ、エディと証言が一致してしまった以上は、これ以上クロードに戦闘の事を聞いてもエディに聴いた情報と変わりはないと判断した。
戦闘が専門の騎士達は未だに興味を持っている様だが、ブローノは早々にクロードしか解らないであろう事を聞く方向に話を変えた。
「他に、何か特徴とかはなかったかい?例えば実際に対峙しないとわからない様なスキルの影響を受けた可能性があったとか…エディは戦いこそ見えていたらしいが、遠すぎて魔王の顔すら満足に見えなかったみたいだったからね」
「そうでしたか……顔は見ていませんでしたか……だからエディは平気だったんですね」
「ん?どう言う事だ?」
ブローノはクロードが奇妙な事を口にしたのを聞いて思わず首を傾げた。
顔?…顔を見ていたらどうだと言うのだろう?詳しく聞いてみる事にした。
「顔がどうとか……その話を詳しく聞きたい」
「はい。そこが彼女の戦闘能力と同じ位に特徴的なところでして…」
少しクロードが言い淀む。
そして何故かマリアの方へと視線を向けて言い淀む様な仕草をみせた。
「その、女性であるマリア様の前で言い難いことですが…」
そういうとクロードはマリアの言葉を待つ。
今から自分の語る話は、もしかしたらマリア様が聞くと不快に思うことかも知れない。
「構わないわ、是非、話を聞かせてちょうだい」
マリアの返答を聞いたクロードは、一度唾を飲み込みゆっくりと話し始めた。
「はい…実は今回の魔王、どう表現したらいいのか……その、あまりにも醜い顔をしておりまして」
「……醜い顔?」
余りに予想外の言葉に聞き返す様な返事をしてしまった。
一瞬、ブローノは考え込むが、魔王として脅威とは関係無いと思い至った。
確かに女性の容姿を貶すのはマリアの前では無礼なことかも知れない。
クロードが深刻そうに語るので何事かと気を張っていたんだが…
ブローノが「なんだそんなことか」と言いたげな反応をみせると、すかさずクロードが声を上げる。
「いえ!私の話を聞く限りではわからないと思いますが!世にも恐ろしい本当に身震いする程の醜さだったのです!!」
クロードが声を張り上げる。
王族の前で声を張り上げるなど御法度だが、その事が頭から離れているかの様に見えた。
明らかに何かネジが飛んだようだが、それでも直ぐにネジをシメ直した。
「ブローノ様、並びにマリア様の前で大変な無礼を!申し訳ありませんでした!」
冷静になったクロードはすぐさま膝を付き謝罪の礼を取った。
「構わん…今の君の反応を見る限り、軽く聞き流して良い様な話ではなさそうだ。普段礼節を弁えた君がそれ程に取り乱すのだからな」
フォローも交えつつ、ブローノはクロードを落ち着かせる様な言葉を掛けた。
「それは、ただ醜いだけなのか?もしかしたらスキルによりその様に見えてしまっていた可能性がある様に感じなかったか?」
「はい…スキルによる影響かも知れませんが……私も吐き出しそうな気持ち悪さを必死に堪えていましたので……敵とは言え女性に対して失礼な物言いですが、本当に実際に見なければ解らないと思います……ですが、絶対、目を見てはダメです、呑み込まれます……私のように……っ」
語るクロードだが、途中から支離滅裂な途切れ途切れな物言いになってしまった。
そして彼の顔は話している内に、あの時の事を思い出したと言わんばかりに恐怖に満ちたものに変わった。
……未だに強い影響がある様だ。
本当に醜さだけでこうなるのか?
いや、あり得んな……何らかのスキルの影響を受けてしまっているのは明白だろうな。
…ブローノは、クロードに同情しながらも冷静に分析していた。
だがしかし、その只ならぬクロードの姿を見た騎士達の間には大きな動揺が走る──
──そんな中、マリアは離れた所に居るユリウスとアリアンの方へと何気なく視線を向けた。
すると、あの2人だけが他の者たちと全く違う反応をみせていたのだった。
その表情はこの場には相応しくない、喜びに満ちたものでマリアには意味がわからなかった。
(何やらユリウスとアリアンが嬉しそうに話しているけど、聴き取れないわね──父上の事を言っている様にも聴こえたけど何なのかしら?)
マリアはユリウスの事を騎士としても人間としても尊敬している。
しかし、彼は父である国王ゼクスに対しては上辺だけでなく心から忠誠を誓っている様なのだ。
彼に対して唯一それだけが欠点なところだ。
(ユリウスと父上との過去に、何が有ったかは知らない……でも今の父上は昔とは違うのよ?)
マリアは7年前の……母であるレオノーラが亡くなる以前の父の姿を思い出し、悲しげな表情を浮かべた。
───────
~ユリウス視点~
クロードが恐怖に震える姿に場が騒然となる。
ただそんな中、少し離れた位置でその話を聞いていたユリウスとアリアン……この2人だけは皆とまったく違う反応をみせていた。
それも、長年の夢でも叶えられたかの様な歓喜に溢れる表情だ。
「……っ!!ユリウス!」
「ああ間違いない!あの子だ……っ!」
そう、クロードが語っていた魔王の特徴を聞いて、ユリウスはある人物を思い浮かべていた。
皆はクロードの話を直接聞くまで、大剣を片手で止めたり、指先で戦闘不能にさせるなどあり得ない、エディの見間違いだと笑っていたが、ユリウスとアリアンの2人だけは、ある人物の可能性をすでに考えていた。
そして現在、外見的特徴をクロードが語った事により、その人物で間違いないと確信した。
──それは、かつてユリウスが王国の騎士団に入団する前の話。
もう10年以上も前になるが、アリアンと共に冒険者として生計を立てていた頃に出会った幼い龍人の少女の事だ。
彼女は特殊な産まれだった為、人里離れた家に住んでおり、常に仮面を着けて俺たちと接していた。
もちろん、理由があり仮面を着けて居たのだが、それが容姿を隠す為だとは思いもしてなかった。
その時はまだ彼女の外見を知らなかったからである。
もし知って居たなら、もっと違う結果になっていたかもしれない……何の覚悟を持たずに少女の顔を見たあの時よりはマシな対応が出来ていた筈だ。
少なくとも仮面が外れた少女の素顔を見て、まるで化け物でも見るかのような視線を向ける事は無かっただろう。
そしてあの時、彼女の素顔を見て怯えてしまったのを最後に、あの子は二度と俺たちの前に姿を現さなかった……弁明の機会すら与えてくれずに──
「もう10年以上も探して見つからなかったのにな……見つけたのが偶然偶々クエストに行っていたクロード達だとは……」
「あの子の戦闘能力を考えると死んではいないと思ってたけど……まさか魔王になっているなんて……」
「いや、アリアン。あの子が魔王に選ばれる事は、ゼクス王が可能性として考えていた話だよ。だからこそゼクス王は勇者召喚を強行したんだそうだ……あれだけ強いあの子が完全な敵である可能性を考えてね」
「…ははっ、そうか……と言うことは、またゼクス王の言った通りになったのね……まったく愚王の名が聞いて呆れる」
「勇者召喚の時なんかは思わず吹き出しそうになったよな~……よく演じられるなまったく」
無能な発言を度々繰り返してはマリア王女をイラつかせていた姿を思い出し、ユリウスは苦笑いする。
「ネリー王女は相変わらずゴミ屑だったけどね!」
「お、お前止めとけってマジで!何で油断してるとすぐそんなこと言うのっ!不敬罪って言葉知ってる?」
「知ってるよ!死ぬやつ!」
「正解!……解ってるなら何で言うのよ?あと今はシリアスな場面だからね、弁えようか?」
「……は~い」
「……不満そうだな?」
「あっ!その台詞さっき孝志に言ったやつ!」
「孝志ぃ……かわいそうに……」
だいたい想像が付くが酷い目にあったんだろう……俺のせいでもあるし、なんかゴメンな。
「でもあの優秀なブローノ王子やマリア王女が拒んでいた勇者召喚が正解だったとはね」
「勘違いはするなよ?ブローノ王子やマリア王女が反対するのは当然さ……あの子の事を知っているのはゼクス王と俺達の3人だけだからな」
「そうね…あの子を知ってるのはこの国では3人だけ……」
アリアンも懐かしいあの時の事を思い出したのだろう……少し感傷に浸っている様子が見えた。
アリアンも俺と同じ位あのとき彼女を拒んだ事を後悔しているからな…
「…また会いたいな」
俺に顔を向けるとアリアンはそんな事を口にした。
「……ああ、必ず会いに行こう」
心はとても穏やかだ。
彼女は魔王で、自分とアリアンは彼女に敵対しなくてはならない立場。
それでも長年どれだけ探しても手掛かりひとつ掴めないでいた、あの子の足取りをようやく掴んだのだ。
今回は新しく呼び出された勇者も居る。
もしかしたら彼らや彼女らもあの子の呪いを打ち消す切っ掛けになってくれるかも知れない。
そして俺もアリアンも未熟なあの時とは違う。
きっと今度こそ救える筈だ……そう───
──前勇者の息子と前魔王の間に産まれたあの少女を……
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。
みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。
勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。
辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。
だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる