普通の勇者とハーレム勇者

リョウタ

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1章 五人の勇者

1章 エピローグ 〜終わった物語が再び動き出す時〜

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──孝志とネリーが揉めていた丁度その頃、とある一室にて重大な会議が行われていた。


そこでは、魔王に傷付けれられて意識不明の重体だった六神剣のクロードが目を覚まし、回復魔法で動けるまでに回復した事で、彼への聞き取り調査が執り行われていた。


無論、今回の魔王についての話である。
前もってクロードと共に帰還していたエディにも聞き取りは行っていたのだが、クロードと魔王の戦闘時、かなり離れた位置に居たので大まかにしか見えていなかった。


この場にはクロードの他に、王族として第一王子ブローノと第二王女マリア。

焦げ茶色の短髪に細身な体の男性、六神剣リーダーの【マティアス・ファングス】

緑色のフードを被った男性、宮廷魔道士長【オーティス・アルカナ】

そして王国に複数あるそれぞれの騎士団の団長と副団長が出席していた。


──実力者の集まりで総勢で三十人以上は居る。


更に離れたところには王国最強騎士の剣帝ユリウス・ギアードと剣聖アリアン・ルクレツィアが、部屋の入り口の付近で壁にもたれ掛かる様にして立っていた。

当然、2人はこの位置に追いやられた訳ではなく、王族を交えた重要な会議の時は万が一の襲撃に備えてあえてこの場所を陣取っている。


ちなみに、第一王女ネリーにも声は掛かっていたが、橘雄星に会いに行くと言う、くだらない理由から欠席。

国王ゼクスに至っては、こういう時の会議はほとんど子供達に任せているので参加はしない。



──クロードが騎士達から次々と飛んで来る質問に答えながらも、淡々と魔王との戦闘について語ってくれている。

エディに聞いた時は片手でクロードの大剣を止め、更には人差し指での一撃でクロードを戦闘不能にするなど、にわかに信じられなかった。
だが、実際に交戦したクロードが言う以上は信じずにはいられない。
指一本に負けたなんて屈辱的な嘘をわざわざ言うとは思えないからだ。


ただ、エディと証言が一致してしまった以上は、これ以上クロードに戦闘の事を聞いてもエディに聴いた情報と変わりはないと判断した。
戦闘が専門の騎士達は未だに興味を持っている様だが、ブローノは早々にクロードしか解らないであろう事を聞く方向に話を変えた。


「他に、何か特徴とかはなかったかい?例えば実際に対峙しないとわからない様なスキルの影響を受けた可能性があったとか…エディは戦いこそ見えていたらしいが、遠すぎて魔王の顔すら満足に見えなかったみたいだったからね」

「そうでしたか……顔は見ていませんでしたか……だからエディは平気だったんですね」

「ん?どう言う事だ?」

ブローノはクロードが奇妙な事を口にしたのを聞いて思わず首を傾げた。
顔?…顔を見ていたらどうだと言うのだろう?詳しく聞いてみる事にした。


「顔がどうとか……その話を詳しく聞きたい」

「はい。そこが彼女の戦闘能力と同じ位に特徴的なところでして…」

少しクロードが言い淀む。
そして何故かマリアの方へと視線を向けて言い淀む様な仕草をみせた。


「その、女性であるマリア様の前で言い難いことですが…」

そういうとクロードはマリアの言葉を待つ。
今から自分の語る話は、もしかしたらマリア様が聞くと不快に思うことかも知れない。


「構わないわ、是非、話を聞かせてちょうだい」

マリアの返答を聞いたクロードは、一度唾を飲み込みゆっくりと話し始めた。


「はい…実は今回の魔王、どう表現したらいいのか……その、あまりにも醜い顔をしておりまして」

「……醜い顔?」

余りに予想外の言葉に聞き返す様な返事をしてしまった。

一瞬、ブローノは考え込むが、魔王として脅威とは関係無いと思い至った。
確かに女性の容姿を貶すのはマリアの前では無礼なことかも知れない。

クロードが深刻そうに語るので何事かと気を張っていたんだが…
ブローノが「なんだそんなことか」と言いたげな反応をみせると、すかさずクロードが声を上げる。


「いえ!私の話を聞く限りではわからないと思いますが!世にも恐ろしい本当に身震いする程の醜さだったのです!!」

クロードが声を張り上げる。
王族の前で声を張り上げるなど御法度だが、その事が頭から離れているかの様に見えた。

明らかに何かネジが飛んだようだが、それでも直ぐにネジをシメ直した。


「ブローノ様、並びにマリア様の前で大変な無礼を!申し訳ありませんでした!」

冷静になったクロードはすぐさま膝を付き謝罪の礼を取った。


「構わん…今の君の反応を見る限り、軽く聞き流して良い様な話ではなさそうだ。普段礼節を弁えた君がそれ程に取り乱すのだからな」

フォローも交えつつ、ブローノはクロードを落ち着かせる様な言葉を掛けた。


「それは、ただ醜いだけなのか?もしかしたらスキルによりその様に見えてしまっていた可能性がある様に感じなかったか?」

「はい…スキルによる影響かも知れませんが……私も吐き出しそうな気持ち悪さを必死に堪えていましたので……敵とは言え女性に対して失礼な物言いですが、本当に実際に見なければ解らないと思います……ですが、絶対、目を見てはダメです、呑み込まれます……私のように……っ」

語るクロードだが、途中から支離滅裂な途切れ途切れな物言いになってしまった。
そして彼の顔は話している内に、あの時の事を思い出したと言わんばかりに恐怖に満ちたものに変わった。

……未だに強い影響がある様だ。
本当に醜さだけでこうなるのか?
いや、あり得んな……何らかのスキルの影響を受けてしまっているのは明白だろうな。

…ブローノは、クロードに同情しながらも冷静に分析していた。

だがしかし、その只ならぬクロードの姿を見た騎士達の間には大きな動揺が走る──



──そんな中、マリアは離れた所に居るユリウスとアリアンの方へと何気なく視線を向けた。

すると、あの2人だけが他の者たちと全く違う反応をみせていたのだった。

その表情はこの場には相応しくない、喜びに満ちたものでマリアには意味がわからなかった。


(何やらユリウスとアリアンが嬉しそうに話しているけど、聴き取れないわね──父上の事を言っている様にも聴こえたけど何なのかしら?)

マリアはユリウスの事を騎士としても人間としても尊敬している。
しかし、彼は父である国王ゼクスに対しては上辺だけでなく心から忠誠を誓っている様なのだ。

彼に対して唯一それだけが欠点なところだ。

(ユリウスと父上との過去に、何が有ったかは知らない……でも今の父上は昔とは違うのよ?)

マリアは7年前の……母であるレオノーラが亡くなる以前の父の姿を思い出し、悲しげな表情を浮かべた。


───────


~ユリウス視点~


クロードが恐怖に震える姿に場が騒然となる。

ただそんな中、少し離れた位置でその話を聞いていたユリウスとアリアン……この2人だけは皆とまったく違う反応をみせていた。

それも、長年の夢でも叶えられたかの様な歓喜に溢れる表情だ。


「……っ!!ユリウス!」

「ああ間違いない!あの子だ……っ!」


そう、クロードが語っていた魔王の特徴を聞いて、ユリウスはある人物を思い浮かべていた。

皆はクロードの話を直接聞くまで、大剣を片手で止めたり、指先で戦闘不能にさせるなどあり得ない、エディの見間違いだと笑っていたが、ユリウスとアリアンの2人だけは、ある人物の可能性をすでに考えていた。

そして現在、外見的特徴をクロードが語った事により、その人物で間違いないと確信した。




──それは、かつてユリウスが王国の騎士団に入団する前の話。

もう10年以上も前になるが、アリアンと共に冒険者として生計を立てていた頃に出会った幼い龍人の少女の事だ。

彼女は特殊な産まれだった為、人里離れた家に住んでおり、常に仮面を着けて俺たちと接していた。

もちろん、理由があり仮面を着けて居たのだが、それが容姿を隠す為だとは思いもしてなかった。
その時はまだ彼女の外見を知らなかったからである。

もし知って居たなら、もっと違う結果になっていたかもしれない……何の覚悟を持たずに少女の顔を見たあの時よりはマシな対応が出来ていた筈だ。

少なくとも仮面が外れた少女の素顔を見て、まるで化け物でも見るかのような視線を向ける事は無かっただろう。


そしてあの時、彼女の素顔を見て怯えてしまったのを最後に、あの子は二度と俺たちの前に姿を現さなかった……弁明の機会すら与えてくれずに──



「もう10年以上も探して見つからなかったのにな……見つけたのが偶然偶々クエストに行っていたクロード達だとは……」

「あの子の戦闘能力を考えると死んではいないと思ってたけど……まさか魔王になっているなんて……」

「いや、アリアン。あの子が魔王に選ばれる事は、ゼクス王が可能性として考えていた話だよ。だからこそゼクス王は勇者召喚を強行したんだそうだ……あれだけ強いあの子が完全な敵である可能性を考えてね」

「…ははっ、そうか……と言うことは、またゼクス王の言った通りになったのね……まったく愚王の名が聞いて呆れる」

「勇者召喚の時なんかは思わず吹き出しそうになったよな~……よく演じられるなまったく」

無能な発言を度々繰り返してはマリア王女をイラつかせていた姿を思い出し、ユリウスは苦笑いする。


「ネリー王女は相変わらずゴミ屑だったけどね!」

「お、お前止めとけってマジで!何で油断してるとすぐそんなこと言うのっ!不敬罪って言葉知ってる?」

「知ってるよ!死ぬやつ!」

「正解!……解ってるなら何で言うのよ?あと今はシリアスな場面だからね、弁えようか?」

「……は~い」

「……不満そうだな?」

「あっ!その台詞さっき孝志に言ったやつ!」

「孝志ぃ……かわいそうに……」

だいたい想像が付くが酷い目にあったんだろう……俺のせいでもあるし、なんかゴメンな。


「でもあの優秀なブローノ王子やマリア王女が拒んでいた勇者召喚が正解だったとはね」

「勘違いはするなよ?ブローノ王子やマリア王女が反対するのは当然さ……あの子の事を知っているのはゼクス王と俺達の3人だけだからな」

「そうね…あの子を知ってるのはこの国では3人だけ……」

アリアンも懐かしいあの時の事を思い出したのだろう……少し感傷に浸っている様子が見えた。
アリアンも俺と同じ位あのとき彼女を拒んだ事を後悔しているからな…


「…また会いたいな」

俺に顔を向けるとアリアンはそんな事を口にした。


「……ああ、必ず会いに行こう」


心はとても穏やかだ。
彼女は魔王で、自分とアリアンは彼女に敵対しなくてはならない立場。

それでも長年どれだけ探しても手掛かりひとつ掴めないでいた、あの子の足取りをようやく掴んだのだ。


今回は新しく呼び出された勇者も居る。
もしかしたら彼らや彼女らもあの子の呪いを打ち消す切っ掛けになってくれるかも知れない。

そして俺もアリアンも未熟なあの時とは違う。
きっと今度こそ救える筈だ……そう───





──前勇者の息子と前魔王の間に産まれたあの少女を……


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