普通の勇者とハーレム勇者

リョウタ

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番外編 綺麗な花

少女白書・上巻

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♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎

私の名前はエミリア・ファルゼム。
ヴァルキュリエ隊所属の騎士見習い。
年齢は11歳で年相応の背丈をしてます。
髪は黒色で見た目は平凡……騎士団に所属している事以外は目立つ所なんてない、普通の女の子。

そんな私は、現在、とんでもない人に恋をしてしまいました。
それは勇者と呼ばれる方で平民出身の私なんかとは身分が違う……だから、叶わぬ恋なのは解っています。

だけど、好きになってしまったものは仕方ないですよね?


───────


──私がその人で出会ったのは本当に偶然の事でした。

その人と出会う二日前。
私はヴァルキュリエ隊で仲の良い女の子達と一緒に、本日、異世界から呼び出された勇者様達の姿を見に王宮を訪れていました。
あまり乗り気ではありませんでしたが、断ると空気が悪くなると思ったので仕方なく着いて行きました。

総勢二十人に及ぶ大人数で出向いたのですが、数に関係なく私達は門前払いをされます。
まぁ、当たり前のことなんだけど……

ですが私にとっては運悪く、このタイミングで勇者様達が城を出て来てしまい、私たちは遠目で勇者様達の姿を確認出来てしまいました。

男性一人に、女性三人。
そして全員がこっちの様子に気が付いたみたいで、男性勇者と金髪の女性が嬉しそうにこちらに手を振って来ます。
皆んなは男性勇者の綺麗さに歓声をあげてましたが、私は何だか関わりたくない人種だと思ってしまった。

あんなに整った容姿をしているのに……どうしてだろう?
多分、偶然街中で出会そうものなら、直ぐにUターンしてその場から立ち去ると思います。

どうかヴァルキュリエ隊には来ません様に……!!


───────


それから二日程たった頃、訓練が休みの日に私はとある事情で勇者様達が過ごす宮殿を訪ねる事となりました。
来ないで下さいと祈ったのに、まさか自分自身が出向く事になるとは予想外です。

目的は、宮殿の中にある訓練場に居る婆さまに荷物を届けること。
女性三人は良いのですが男性の勇者様には出会いたく無かったので、私はこそこそと隠れながら目的地を目指しました。


「──ああ!婆さまっ!」

訓練場に到着するとすぐ様目当ての人物を見つける事が出来た。
そして私は婆さまに会えた事が嬉しくて脇目も振らず抱きついてしまいました。

相手は私の祖母・ダイアナ・フィールズ。
王宮メイド長の肩書きを持つ凄い婆さまだ。
もちろんそれだけでは無くて、孫である私達を心から可愛がってくれる優しい人です。
だから私はいつも婆さまに会えるのを楽しみにしています!


「──あら?エミリア久しぶりね。相変わらず可愛いわ……けど、今は勇者様が訓練中よ?加えて勇者様は男性です。殿方の前で人に抱きつくのはよくないですよ?」

婆さまは怒るでは無く諭すように、私の頭を撫でながら注意してくれた。

──だが、私はそれどころでは無かった。
今婆さまが口にした言葉……男性の勇者と言えば、該当する人物はただ一人。

私は恐る恐る訓練中の人物の方に顔を向ける。


──あっ、違った……
相手が全くの別人だった事に私は安堵しました。

訓練中の勇者様は黒髪で微妙にかっこいい容姿の方。
なんと言うか、普通な私には親近感を覚える存在です。

そして勇者様との訓練相手を見て私は驚愕しました…!

なんと相手は私達ヴァルキュリエ隊の誰もが憧れる存在、アリアン・ルクレツィア様だったのです!


「……いいなぁ~……アリアン様に稽古を付けて貰えるなんて……」

勇者ってやっぱりズルい……

私がそんな風に思って訓練光景を眺めて居ると、婆さまがお声をかけてくれました。


「──そうだ、エミリア、良かったらお菓子でも食べて行かない?本当は勇者様の為に作ったのだけど、どうやら食べる暇はないようですし……余らせると勿体ないわ……ね?」

「はい!頂きます!婆さま!」

私はこの勇者様からは特に嫌な感じがしなかったので、この場に留まる事を二つ返事で承諾しました。
今日は騎士団も休みだしね。

そして婆さまと一緒に直ぐ近くに置かれたベンチに腰を降ろし、出来立てのスコーンにクリームを付けて頂きました。


──────


「……………………」

既にお菓子は無くなり、婆さまに届ける荷物も渡し終えた。

そして婆さまも用事があるとこの場を離れてしまったので、いつ帰っても良いはずなのに……私は目の前の訓練に目が釘付けになってしまっている。


「……………………」

目が離せないのは憧れのアリアン様を見ているからでは無い。

もちろん、最初はアリアン様の活躍を観るのが目的だったけど今は全然違う。

私が無言のまま訓練の様子を観ていると、アリアン様の訓練相手の勇者様が、また思いっきり吹っ飛ばされてしまった。

「…………ぁ……が、がんばれっ……!」

だが、勇者様は声援が聴こえている訳でもないのに、苦しそうにしながらも手に持っている剣を支えにしてその場から何とか立ち上がる事が出来た。

そして、こうして立ち上がるのは何度目か分からない。

勇者様は攻撃をその身に受けても、その度に何度でも立ち上がっていた。
どうしてあんなに必死で頑張れるんだろう……?

──いや、理由は明白だ。
あの勇者様は、どういう訳か大した力を持っていないみたい。
多分、私相手にも苦戦すると思う。
さっきから勇者様の事をずっと観ていたから解る。

だから、少しでも強くなろうと必死に頑張ってるんだ……


──そうか……弱いから、あの人は他の勇者様と一緒に行動出来ず、一人で訓練しているんだ。
だって本当に必死でアリアンさんに向かって居るんだもん……あの勇者様は少しでも強くなろうという気高い志を持った凄い人なんだ…!

あんなに頑張れる人は今まで見た事ない。
きっと本当に手を抜くのが苦手な努力家な人なんだ……一緒懸命に頑張る男の人って、なんて素敵なんだろう。

けど勇者様の背中は、必死に立ち向かわないとアリアン様に殺されると言っている様にも見えた。

多分、自分を奮い立たせる為にそんな暗示を掛けて居るんだ……だって、優しいアリアン様がそんな酷いことする筈ないもん……

その後も私は婆さまが帰って来るまで、ずっと勇者様の頑張る姿を見守り続けた。


♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


~真実・孝志サイド~

※エミリアに会話は聞こえていません※


「はぁはぁはぁ……ア、アリアンさん……もう、限界です……もう辞めましょう……ね?」


「ん?もう無理なのか?そんな訳ないだろ?まだやれるだろ?」

「い、いや、も、もうホント無理ですっ!これ以上やったら死んでしまいますっ!はぁはぁ……ご、ご慈悲を……!」

「そうなのか……じゃあ、試しに私を殺すと言ってみろ?」

「え?ど、どうして?」

「良いから言ってみろ、言えば解るさ」

「は、はぁ……ア、アリアンさん、こ、殺してやるッ!」

「──言ったな……?」

「え?言わせたんでしょ?」

「理由はどうあれ、私を殺すと口にしたのは確かだ……殺意を抱かれた以上……私も抵抗せざるを得ないな……」

「……つ、つまり……?」

「訓練続行だっ!!」

「……いや、バカだろあんたっ!!」

「……はぁ?」

「じょ、冗談です、はは」

「……なんだと?私に嘘を付いたのか?」

「ひ、ひぃッ?!睨まないで……こ、怖い……言葉も通じないし」

「何も怖がることは無いだろう……まぁいい、訓練を再開しよう──ん?よく見ればお前の剣、もうぼろぼろだな?」

「ッッッ!!?──そ、そうなんですよ!なのでこれ以上の訓練は──」

アリアンは新しい剣を孝志に投げ渡した。


「………………」

「…………よしッ!では孝志!始めるとするかっ!!」

「ぶっ、ぶっ殺してやるッッ!!!」

「はははッ!今のは中々の殺意だぞっ!そのいきだッ!さぁ来いッッ!!」


──こんな感じの訓練が、日暮れまでずっと続くのであった。
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