100 / 217
6章 勇者と、魔族と、王女様
プロローグ 〜華麗ならぬ食卓〜
しおりを挟む更新遅れました。
今日からしばらく毎日更新します。
ーーーーーーーーーー
フェイルノートと呼ばれる最強の悪魔。
あのアレクセイさんすら敗北に期した化け物に勝利を収めた功労者たるこの俺は、現在、アルマスが療養している部屋で夕食をとっている。
メンツは俺とアルマス……そしてさっきからやたら俺に付き纏ってくる迷惑この上ない男、アッシュの三人だ。
ぶっちゃけ、流石に療養中のアルマスの部屋で夕飯はどうかと思ったが、アレクセイさんは食べる元気が無く、オーティスさんは忙しそうに王国と連絡を取ったりしているので、あのままだとヤンキーと二人きりでの食卓になりそうだった。
もうマジでそれだけは絶対に嫌なのでアルマスの部屋で食事をとらせて貰う事にした。
因みに夕飯は俺の手作り。
台所の場所と食材の在り処をアレクセイさんに聞き、更には置いて有った調理器具や、それの使い方も向こうの世界と一緒だったので問題無く調理する事が出来た。
料理はスクランブルエッグと、ウインナーっぽい肉をそのまま焼いたヤツ。
スクランブルエッグは卵料理の中で一番作りやすいと思う……なんたって卵をぐちゃぐちゃに掻き混ぜれば良いだけだから、目玉焼きの様に黄身が破れる心配も皆無。
……そして何より、ケチャップと良く合う。
俺はケチャップであえたスクランブルエッグをスプーンですくい頬張った。
「すると、口一杯にケチャップの酸味が広がり、均一の取れていないスクランブルエッグ達が……え~と……なんて言うか、口の中で暴れている……まぁなんと言うか…………とにかく美味い!!」
ついつい感想を口から漏らしてしまうのだった。
「おめぇ表現力ゼロだな」
「……うるせぇよ、黙って食え」
「おう。じゃあ頂くとするぜ」
促されたアッシュは、孝志と同じ様にスプーンでスクランブルエッグを掬い取りそのまま口の中に運んだ。
「……あんまり旨くねぇな」
「作って貰って何だその言い草はッ!?ええ?!うちの母親だったら引っ叩かれてるぞっ!?」
「お、わ、わりぃ……けどよぉ~?この赤いケチャップ……?て言うのか?……いくらなんでもかけ過ぎだろ?せめて俺の分だけでも取り分けてからかけてくれよ」
「……あ、味を誤魔化してんだよ……ケチャップかけなかったら俺の飯クソまずいぞ?」
「んだよっ!謝って損したぜっ!」
「オイオイオイ、死ぬわオマエ……フェイルノートを仕留めた俺に向かってその態度は命知らずにも程があるわ流石に」
「……いや、おめぇ動けない所に攻撃加えただけだろうがよ。なんでそこまで得意になれんだよっ」
「うるせぇ!過程はどうあれ、仕留めたのは結果的に俺なんだよ!だったら俺の手柄って事じゃないか!違うか?」
「…………おめぇがトップに立ったら部下の手柄は全部自分のモノにしそうだな」
「……加えて上司の失敗は部下の責任」
「とんだクソ野郎だなっ!!」
知らない内に疲れが溜まっていたんだろう。
俺もアッシュも実にくだらない事を切っ掛けにヒートアップする。
適当に作った料理にダメ出しされたって普段は何とも思わないのに……そういえば向こうの世界では弘子(いもうと)に良く言われたっけ?
お前の料理はケチャップで誤魔化すのを前提に作られているって……まぁほんとの事だけどな。
──そして、二人のやり取りを黙って聴いていたアルマスだったが、ほっとけば静かになると思っていた口論も次第に熱くなり、放置しても一向に治る気配が無いので仕方なく注意する事にした。
「……二人とも」
「「んだよ!?」」
「ご飯は静かに食べましょう……特に孝志、お母さんにそう教わって来たでしょう?」
「う……うん。なんかごめんね?」
「解れば良いんですよ(ニッコリ…………んでアッシュ、貴方は人に出されたモノにいちゃもん付けるなんて何様ですか?文句があるなら自分で料理すれば良いでしょ?」
「わ、悪かった」
「いや、謝れば良いって事でも無いですよ」
「おいっ!コイツと扱いに差があり過ぎるだろッ!?喧嘩両成敗って言葉知ってるかぁ!?」
「あの……アルマス?俺にも悪いところ有ったから、あんまアッシュを責めないでやってくれ……」
「孝志……へっ、お前って奴は……」
「おい、良くわからん所で友情感じるんじゃねーよ!」
終始ふざけ合って居た三人だが……確かに、病人の前で煩くし過ぎたと孝志は少し反省するのだった。
因みに……アルマスは孝志が作ってくれた『無味』のお粥を、それはそれは美味しそうに食べて居たと言う。
──そしてアルマスに注意されたアッシュはこう思った。
『なんで額にう○この絵を描いた女に注意されなければ成らないんだ』……と。
─────────
食事を終えた俺は全員分の食器を片付けた後、食後のコーヒーを楽しもうと段取りをしていた。
場所は台所に移ったのだが、アッシュは相変わらず付き纏って来るからウザい……でも俺より圧倒的に強いから無理矢理離すことも出来ないし……どうしたもんかなぁ~。
なんて事を考えながらも俺は優しいので律儀に三人分のコーヒーを用意するのだった。
あっ、病人ってカフェイン与えて良いんだっけ?
………………まぁいいや。
そして3つのコーヒーカップにコーヒーを注いだタイミングで脳内に例の【音声】が鳴り響く。
『──た、孝志っ!?いま到着したんだけど、どうしたの!?城とか結界が凄いボロボロ何だけどッ!!??』
「あひぃッ!!?」
脳内に呼び掛けて来る声は『危険察知』のスキルとか有るけど、今回の相手はテレサだ。
しかも、この場所で戦闘の形跡があった事に驚いたらしく、物凄い大きな声で話し掛けて来るもんだから思わず飛び跳ねてしまう。
そのリアクションを見ていたアッシュには、テレサの声など聞こえないので俺が突発的に飛び跳ねた様に見えたらしい。
なのでヤバい奴を見る様な目でこっちを見て来る。
「……は、はは……お……おうッ!」
「止めろや、その心底気を遣ったリアクション。一番傷付くから」
変人だと思われたら嫌なので、直接脳内に語りかけられた事と、その人物がアッシュの上司で『魔王』だという事を掻い摘んで話した。
ハッキリ言って魔王との関係を聞いても全く信じて無かったアッシュだったが、俺が魔王についてやたら詳しいので半信半疑程度には信じてくれたみたいだ。
……取り敢えず弁明も済んだので、気を取り直してテレサ脳内通話と向き合う事にする。
「お・ま・た・せ!ちょっと目付きの悪いヤンキーが聞き分け悪くてさ…………あれ?テ、テレサ?」
『…………むぅ……』
反応があまり宜しくないテレサ。
どうやら放置された事に少しむくれている様だ。
『いいよ、どうせ僕はいつだって後回しなんだ。それに今回は城が壊れていたから、本気で心配したのに……』
──電話越しでも解るテレサの不機嫌さに、孝志は少し動揺する。
しかし、通話者になんの断りも無く通話を中断し、別の者と話をするのは非常識なので今回は……いや、今回『も』孝志が悪い──
やべぇな……怒らせちゃったみたいだ。
悪いのは変な目で観てきたアッシュだから、僕は何一つ悪くないよ……?
──それから孝志はどうしたものかと少し考え込むが、いつもの様に頭のおかしい解決策を思い付く。
……テレサは俺にぞっこんだし、口説き文句でも交えて謝れば機嫌直るんじゃないかな?
──と言う事なので取り敢えず、孝志は愛の言葉を囁く事にした。
「えっと……ごめんテレサ。放置しちゃって。それといつも可愛いねテレサは……それと……あと……好きだ」
うん、これだけ言えば機嫌は直っただろう。
絶対イチコロだと思うわ。
そして案の定、念話越しでテレサから黄色い悲鳴が湧き上がった。
『えっっ!?あっ……そんなこと言ったて、ぼ、僕は……孝志のことなんか…………うぅ……嘘でも嫌いだなんて言えないや……ずるいなぁ孝志は……へへ──うん!好きって言ってくれたお礼に許しちゃう!」
…………予想以上にイチコロなんだが……?
てかなんだこの子、毎回毎回いちいち可愛いリアクション取りやがって……!ズルイのはどっちだよ。
──それからテレサの機嫌は大変良くなったので、孝志はテレサにフェイルノートの事を話した。
テレサの部下で、十魔衆のアッシュに襲われた事も告げ口しようか迷ったが、なんかそれを言うと彼が酷い目に遭いそうだったからその件は伏せる。
……だが、それ以外にもテレサとこれからについてきめ細かく話をしたかった孝志は、城の外で直接彼女と会うことにした。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。
みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。
勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。
辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。
だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる