普通の勇者とハーレム勇者

リョウタ

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6章 勇者と、魔族と、王女様

世にも奇妙なハーレム

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ーーーーーーーーーーーーーー



──王国には危機が迫っている。

にも関わらず、孝志は相変わらず能天気だった。

しかも能天気なだけではない、非常に上機嫌だ。
何故ならアリアンがオーティスと話が有るらしく、昼食後の訓練が無しになったからである。
たったそれだけの事が孝志にとっては幸せな出来事なのだ。


……そしてフェイルノートとの一件と、今回のアリアンの件も併せて、孝志のオーティスへ対する評価はかなり高かったりする。
今、世界で一番尊敬している人物は誰かと聞かれたら、迷う事なく野球選手のイチローと答えるだろう。


そして今、孝志は目新しい城内を歩いていた。
軽い冒険気分で色んな部屋を見て行き、弘子でさえ掃除以外では入らない部屋なんかにも躊躇なく入ったりもした。

祖母の城とはいえ遠慮は微塵も無い。

この行動がアリアンやアッシュといった部外者なら、何か良からぬ事を企んでるんじゃないかと不審に思われるだろうが、この孝志に限ってそんな心配は皆無。

孝志が何をやろうと、この城の責任者達は決して怒ったりしないければ不審に感じたりもしない。

もう完全にフリーパスなのだ。
何気に甘やかされ生活はスタートしている。

孝志は既に好き放題やっても誰からも咎められない、ある意味チート状態にあるのだ。


──だが、とある部屋の前に差し掛かると、偶然にもその部屋の中から弘子が出て来るタイミングだった。

彼女とばったり出会した孝志は、さっき変な事を言ってしまった事のお詫びも含めて挨拶を交わそうとするが、孝志を見つけた弘子は問答無用で孫を今出てきた部屋の中へと引きずり込むのであった。



─────────


「──は~い、孝志ちゃん、あ~ん…………どう?まんじゅう美味しい?」

「……うん」

今、俺はソファーに寝転がりながらまんじゅうを食べている。おばあちゃん曰く、こだわり抜いた一品らしく大変美味い。

和菓子は普段食べない俺だが、それは和菓子が嫌いだから食べない訳ではなく、和菓子という食べ物を食べる機会があまり無いだけだ。
そもそも甘党な俺の舌が甘い和菓子を拒絶する筈もなく、今食べているまんじゅうはとても甘く、それでいて大変に美味しい。
あとしっとり。あとなめらか。あと美味い。

……フフ……俺の食レポは相変わらず完璧だな。


とにかく、今こうしてまんじゅうを食べている事にはなんの不満はなく、むしろ有難いんだけど……今の状況は大変辛い。

何故なら、今の俺はおばあちゃんに強引に膝枕させられながら食べさせて貰っている状況だからだ。
しかも寝ながら甘い物を食べている訳で、健康上、余り宜しくない。

それ以前に祖母の膝の上で頭を撫でられながらおやつとか、精神的にも全く宜しくない。
いくら見た目が若いと言っても、妹やお母さんにそっくりの相手なのだ……いやもうほんとキツイ。

しかも弘子は孝志の頭を抱え動けないようにしている。
故に、されるがままになっていた。


「……おばあちゃん、寝ながら食べると牛になるよ」

何とか当たり障りない言い方で状況を打破しようとする孝志。


「や~ね!そんなの迷信よ!」

しかし弘子には全く通用しない。
なので孝志は仕方なく本音をぶち撒ける事にした。


「…………だよね!── けど、そういう迷信っておばあちゃんみたいな年寄りが言い伝えてるんだけどな!……まぁそれはそうと、そろそろ離してくれない?」

「ううん、無理」

本音でぶつかっても弘子には全く通用しなかった。


「え?どうして?しかも何かおばあちゃんキャラ変わってない?そんなぐいぐい来る感じだっけ?」

俺は冷静に疑問を投げ掛ける。
しかし、おばあちゃんは完全に開き直っていた。


「いやね~?私の趣味バレちゃったし、もう我慢せずやりたいようにやろうと思ったの!ずっとこうしたかったんだから!」

くそっ、大元の原因は俺か!
気になって聞いたコスプレ趣味の件が完全に裏目に出ていやがる──!
こんな状況になるならあんなこと聞かなかったのに……でもあの時は気になって仕方なかったんだ。
部屋で水着とか正気の沙汰じゃないから、孫として恥ずかしいのも事実だし。
しかもそれがコスプレって……400越えたばばあが……


「──ねぇねぇ孝志ちゃん!そんな事よりほっぺに頬ずりしても良いかしら?」

「え?やだよ?」

「いや、やっちゃう!───すりすり~♫」

「お、おふ……」

孝志は思いっきり頬ずりされてしまった。
もちろん、物心ついてから今までの人生でこんな事をされた経験など無い。孝志にとって初体験だ。
まさかその相手が祖母になるとは夢にも思わなかった事だろう。

しかもこちらの話が通用しない。
孝志の心情は軽い性犯罪を受けているような気分だ。


「──あぁ~ん!もう若い子の肌って超スベスベ~!」

「…………………………」


孝志が死んだ目をしながら耐えていると、ドアを何者かが勢いよく蹴り破り、部屋の中へと入って来た。

その人物の正体はアルマスで、彼女は憎悪を剥き出しにしながら、ズカズカと足音をたてて孝志と弘子に近付いて行く。

そしてカチ割る程の強さで弘子の頭に拳骨を落とした。


「ぐべぇ……!!いっだぁぁいいッッ!!何すんのよ!?痛いじゃないのよ!!?」

弘子は頭部の激しい痛みに、孝志を拘束していた腕を解いて頭を抑えた。
その隙を観て孝志は直ぐに起上がる。


「あっ!孝志ちゃん!」

「よくも好き放題やってくれたな、ばばぁ……」

ムクリと起き上がった孝志は、弘子を睨み付けた。


「……え?孝志ちゃん?どうして睨むの?……それにばばぁって……あんまりよ」

弘子は涙目で情に訴えるが、さっきまでの弘子の様に孝志には全く通じなかった。
彼は蔑んだ目で祖母を睨み付けている。

視線に耐え切れなくなった弘子が目を逸らしたところで、アルマスに助けてくれた礼を言う為、孝志はソファーから立ち上がろうとした。


「──助かったわ……なかなか離してくれなくて…………ん?」


だがアルマスは、孝志がソファーから立ち上がるよりも早く孝志の隣へと座った。
そしてあろう事か、孝志の頭を掴み、今度はその頭を自分の膝の上に乗せるのであった。


「──マスター、ごめんね?弘子の膝の上とか嫌だったでしょ?キツかったでしょ?──さ、こうして私の膝の上で休みなさい……」

「………………」


そう言いながら、アルマスは膝の上に乗った孝志の頭を撫で始める。

完璧なデジャブだった。
今度はアルマスが、弘子がやった事と同じことを孝志へ対して行う。


「ちょっと!アルマス何やってんのよ!」

今度は弘子が黙っていなかった。
頭部の痛みの癒えた弘子は、アルマスの膝の上に乗った孝志の頭を優しく抱き上げ、それを自分の膝の上へ乗せた。


「──孝志ちゃ~ん!ごめんね?あの女、根性悪いからね?おばあちゃんの膝の上でゆっくりしようね?……どら焼き食べる?」

「…………………………あ、どら焼きは食べる」

「はい…………あ~ん…………美味しい?」

「うん」

弘子が口元へ運んでくれたどら焼きを食す。

そして、それを観たアルマスが今度は黙って居なかった。


「ちょっと、いい加減にしなさい弘子!!マスターにそんな事するのは本当に辞めなさい!!マスターを甘やかして良いのは私だけなんですよ!!?」

再び孝志の頭を抱き、自分の膝に乗せるアルマス。


「──あっ、ちょっとアルマス!何してるのよ!孝志ちゃんは──」

今度は弘子が──


「何やってるのよ!マスターは私がっ!!」

今度はアルマスが──


「何やってるのよ!私がっ──」

今度は弘子が──


「いやいや、マスターは私g──」

アルマス──


「いや、わたs──」

弘子──



──こんなやり取りが、実に数十回以上も繰り返されるのであった。







「……………………地獄」


孝志はボソッと呟いた。






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