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6章 勇者と、魔族と、王女様
みっちゃんの話①
しおりを挟む「──あ、あのぉ~……何を怒ってらっしゃるのでしょぉ~……?」
「話し掛けるな、この裏切り者がッ!」
「そんなご無体な…!と言うより私は主人を裏切るような事は絶対に致しません…!勘違いされてますよ!」
──ついさっきまで質問責めに遭ってた俺だったが、マリア王女の仲裁でようやく解放された。
明日から英雄的扱いを受けるのかと考えたらゾッとするから、今すぐにでもおばあちゃんの所に帰りたいけど、今日の御礼を兼ねた話があるようなので2~3日はラクスール王国に留まる事となった。
多分、ブローノ王子やユリウスさんと連絡が取れなくなったとか言ってたので、その辺も聞かれるんだろう。
強引に逃げようと思えば出来るけど、何だかんだでマリア王女には世話になったし、ユリウスさんの事も伝えておきたい。
本当ならユリウスさんの裏切りに関しては今すぐにでも言うべきだと思うが、それを貴族達の前で言うのはマズイと感じた……と言うよりあの人達は信用できない。だから言う時はマリア王女を含んだ少数の場合が良いだろう。
「──主人~……なんとか言って下さいよぉ~」
「……はぁ~」
アルベルトが味方になってくれたら、あの惨劇は回避できた可能性があったんだよな。
でも彼には普段から助けて貰ってるし、ぶっちゃけ俺自身もそんなに怒ってない。半分は冗談で言ってるだけだ。
……だからそろそろ許してやるか。
「─ぶふッ!あの時の孝志の顔、傑作だったよな……いやぁ観てて微笑ましいかったぜぇ?」
「……んだとぉ?」
今のは流石にプッツンきたぞ。
そう言えばアッシュって完全に裏切ったよなぁ?
「もうお前ら絶対に許さない!!」
「え!?『ら』って酷くないでしょうか!?」
「まぁまぁ、落ち着けって孝志……それに良く考えてみろって。あそこで自分の手柄にされる事を、魔王テレサは望んでねぇーと思うぞぉ?」
「ヤンキー風情が俺を嗜めんな」
「……おぉう?風情ってどう言う意味だコラ!」
「アルベルト、お前とアッシュ……どっちが強い?」
「はっ!魔神具さえ使われなければ、私の方に分があります……」
「よしっ!では松本孝志の名の下に命じる……アッシュを殺れ」
「イエスユアハイネス」
歩きながら少し距離を空けアッシュは身構える。もちろんアルベルトも。そしてアッシュは驚きの表情で孝志とアルベルトを交互に見比べた。
「いや待てマジなのか?!マジで戦うつもりか!?俺6連敗かぁ!?」
「……主人、本当に戦うのですか?」
「………え?二人ともマジなの?冗談だぜ?」
「わかりにくいわ!」
「分かりにくいですよ!」
「………ご、ごめん……そんな責めないでよ……」
まさか冗談が通じないなんて……やっぱり人間と魔族は分かり合えない運命なのね。
「──お~い!松本く~ん!」
「……ん?」
「いつの間に…!」
何処からか自分を呼ぶ声が聴こえてくるので、孝志が声のする方を向く……すると由梨が手招きしている姿を見つけた。距離的にもそれほど離れては居らず、しかも彼女は隠れることなく正面にいる。
それなのに三人とも全く気付かなかったようだ。
孝志はともかくとして、アルベルトやアッシュまで気が付かないのは如何なものか?
幾らなんでもコイツらふざけ過ぎである。
「……アレは中岸さん──ウゲェ……後ろには橘と奥本も居るじゃねぇーか……」
最悪だ……
でもさっき貴族達に囲まれてる時、橘なら嫌味ったらしく絡んで来ると思ってたんだけど、案外何もして来なかったよな?
アホの癖に中々気が利くじゃないの──明日血の雨でも降るんじゃなかろうか?
「……おっ、さっき一緒に戦ったねぇちゃんじゃねぇーか!元気そうだなぁ!」
確かに、怪我してたから心配だったけど、もう大丈夫そうで良かった。それに手を振ってるって事は俺に用が有るんだろうし、挨拶がてら行くとするか。
「………ん?」
由梨の下へ向かおうと足を進めた孝志だったが、ふとある事に気付きその足を止めた。そして恨めしそうにアッシュとアルベルトの方を振り返る。
「どうされました、主人?」
「……いや、向こうの橘は女二人と一緒なのに、俺はむさ苦しい男二人なんだなって」
「……男二人では不服ですか?」
「まぁな!」
孝志は勢いよく言い放つ。
だが、恋愛的な感情を持たない種族のアルベルトには孝志の気持ちが分からなかった。なので主人に不服な思いをさせてしまったと、自分の性別が男である事を申し訳なく思うのであった。
しかし、アッシュの方はすかさず反論した。
「いや、普段のお前も相当なもんだぞ?」
「まさかアルマスとおばあちゃんの事を言ってるのか?それは無しだからな身内だし」
「じゃあさっきの奴らはどうなんだ?」
「さっきの奴ら?……まさかメイドやエミリアちゃんの事か?──あの人達の場合は初対面だし、今はもう一緒に居ないからノーカンだろ」
「うわ、ずりぃ…!」
「では主人、アリアンはどうでしょう?」
「……お、おまえ恐ろしいこと言うな!!」
「え?す、すみません」
(何故怒ってるのだろうか……?──やはり主人は一筋縄とはいかないな。常人の私では、このお方の考えを理解するのはまだまだ難しいようだ……流石と言ったところか)
アリアンの名前を安易に出したアルベルトをもっと責めたい気持ちの孝志だが、これ以上待たせるのは彼女に申し訳ないと先を急ぐ事にした。
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