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7章 普通の勇者とハーレム勇者
孝志と穂花と、孝志的に邪魔なアンドロイド女
しおりを挟む──穂花ちゃん、ブローノ王子、ユリウスさんと再会した俺は、三人と離れてから合流するまでの間に起こった出来事をある程度話した。
アルマスとアレクセイさんについては転移した場所で助けてくれた冒険者だという設定にしている。
正直に話すにはあまりにも複雑な関係だからだ。
他にも見慣れない魔族と思しき人物が数人、物珍しそうに此方を見ていた。
その中にはおばあちゃんの城で襲い掛かってきたフェイルノートも混ざっており、それに気付いたアルマスとアレクセイさんは戦闘体勢を取る。
「クククッ!そう怯えずともよい。今更仕掛けようとは思わぬ。何故か其方に負けてからというもの、勇者を屠りたい衝動が消え去っておるのじゃ」
「………」
「………」
「うむぅ……解ってくれないのう~……む?お主は案外平気そうじゃのう……ほれっ、お主はからも言ってやってくれ」
「アルマス、アレクセイさん、多分大丈夫ですよ」
「うん解った」
「オーケーよ」
「おぉう……忠実過ぎてビックリなのじゃが?」
「俺の方が驚いてるわっ!」
「そ、そうであったか」
「というより気安く話し掛けるな」
「情緒不安定なのかい?」
冷静に考えたら殺されそうになったんだよ。仲良くなんて出来るかボケ。
まぁ、のじゃ女は置いといて……
おばあちゃんやテレサについても今は秘密だ。いずれは話して置きたいが、今は二人とも近くに居ない。
また一緒に行動出来るようになってから話したいと俺は思っている。
ブローノの王子はこの世界で数少ないまともな人だし、信用している。穂花ちゃんに至っては言うこともなく、向こうの世界にいる時から優しく真面目な子。だから出来るだけ誠実に接したい。
ユリウスさんが裏切ったことは穂花ちゃんとブローノ王子も知っていたらしい。
ただ、城で俺に襲い掛かった事は知らなかったみたいで、それを話すと穂花ちゃんは鬼の形相でユリウスさんを睨み付けていた。
友達の兄というだけで懐いてくれるし、ユリウスさんの裏切りに対して此処まで怒ってくれるなんて……
相変わらず天使だな穂花ちゃんは……傷心しきった俺の心を癒しておくれ。
因みにだが、ユリウスさんはアルマスとアレクセイさんの正体が冒険者じゃないと知っていた筈。でも特に口を挟んで来なかった。
気になって奴を見ると、親指を立てて『内緒にしてやるよ』と呟いていた。
そのドヤ顔がムカついたので『裏切り者の分際で調子に乗るな』と口パクで返したら凄く落ち込んでいた。
もしかしてメンタル豆腐なの?
…………
…………
とまぁこんな感じで、無事ユリウスさんと合流出来た訳だが……とりあえず、当初の……ほんっっっとうに当初の目的だった獣人国へと今は向かっている。
まずは目先の争い事を解決しなくては……あまりにラクスール王国からの謝罪が遅い為、獣人国の雰囲気が穏やかではないらしい。
俺はずっと右腕に引っ付いていた穂花ちゃんと、左腕に引っ付いていたもう一匹(アルマス)と一旦離れ、近くの川で顔を洗っている。
穂花ちゃん……よっぽど不安だったんだな……それもそうだ、彼女はまだ中学生なのだから。
俺の右腕なんかで良ければ好きなだけ貸してあげよう。ただし、左腕に引っ付いてたもう一匹(アルマス)は後で必ず締める。
──顔を洗い終えラクスール王国のことを考えた。
マリア王女に手紙はちゃんと届いてるだろうか?
俺の目的とか書いてあるけど……もしあの手紙が公になれば、俺の正気を疑われるかも……なに一つ証拠が無いからなぁ……後はふざけたこと書き過ぎたのも不味かったか?
だが書いてしまったモノは仕方ない。
失った過去はどうやっても取り返せないんだからな。
ただ、それとは別に気になる事もある。
「さっきはスルーしたんだけど……あのフェイルノート、なんで此処に居るの?──そういやユリウスさんが連れて行ってたし……そりゃ居るよな」
でも敵意はなさそうだ。
アルマスとアレクセイさんは今でも警戒しているけど、俺には敵意を感じない。
それが解るのは、フェイルノートがアダムの妹だからだろう。初めて見た時から妙に親近感が湧いていたのも、俺の中のアダムが反応していたんだ、アイツきっしょ。
でも、お兄ちゃんそっくりな俺に攻撃を仕掛けて来るのは酷いと思うぞ?兄妹仲悪いのか……?
「別にどうでも良いけ……あ、やべタオルを忘れてしまった……仕方ないから服に拭くか」
俺は呟いた通りに行動しようとした──
──すると、いつの間にか穂花ちゃんが近くに来ていたらしく、水浸しになった俺の顔を覗き込んだ。そして、徐に自分が身につけている服を体ごと差し出して来た。
「孝志さん!タオルがありませんね!?これで拭いて下さい!!」
「え……穂花ちゃんの着ている服で?」
「はい!!」
いや、それは流石に……それに穂花ちゃんが着てる服を使うってことは、穂花ちゃんの胸部に自らの顔を押し付けるという事だ。
側からみたらただの変態ですやん。後輩美少女の胸に自分の顔を押し付けて皮膚の水分を落とすとか……この世界で一番ヤバい奴になっちゃうじゃん。想像しただけでヤバッ。
「………う~ん」
「孝志さん?」
穂花ちゃんは真っ直ぐな女の子だ。
アルマスと違い、この行為に邪さなんてカケラも無いと間違いなく言える。
その優しさには感動するが流石にこれは断らないと。
「穂花ちゃんはやっぱり優しいなぁ~……でもそれは悪いから辞めとくよ。気を遣ってくれてありがとう」
孝志がそういうと穂花は残念そうに俯いた。
「そんな……貴重な孝志さん養分が……」
「ん?養分?」
養分の意味はわからないが、穂花ちゃん可愛いし、細かい事は気にしないでおこう。
向こうの世界から穂花ちゃんを知っている。
実はお淑やかな女性が好みなのだが、穂花ちゃんは正しくそれにバッチリと当て嵌まる女の子。
俺の苦手な騒がしさがなく、挨拶も毎日丁寧に交わしてくれるのだ。話した事が殆ど無かった割に毎日出会して居たのは少し奇跡的な偶然だけど、穂花ちゃんとの間に何か惹かれ合うモノがあるのかも知れない。
テレサとはまた違った可愛さ。
どちらの方がより可愛いとか、そんな失礼で屑みたいなことをわざわざ考える必要はない。どちらも死ぬほど可愛いんだからな。
みてくれだけのアルマスとは訳が違う。
見た目だけじゃなく性格も可愛い……穂花ちゃんに至ってはストーカーとかドン引くような行為は絶対にしないだろうしなっ!
「マスター、少し良いかしら?」
急にアルマスから声を掛けられてしまった。
俺は彼女からの問い掛けに応える。
「どうした、みてくれ女」
「話し掛けただけなのに酷過ぎる……ねぇどうしてそんな酷いこと言うの……?」
急に話し掛けられたから驚いた……とはいえ言い過ぎたかも。泣きそうになってるし、アルマスが喜びそうな御世辞でも振る舞うとするか。
「すまん言い過ぎた可愛いアルマス」
「ああん!可愛いだなんてそんな本当の事を!!」
「ちっ、くそウゼェなこの女」
「…………」
悪態付く孝志と黙って見守る穂花。
しかし、穂花の表情はとてつもなく険しい。
それもその筈、孝志と離れ離れになってしまう直前まで孝志の周囲に女の影など全く無かったのだ。
あえて言うならマリアやダイアナくらいのモノ。
それなのに突如として現れたのがアルティメット・マスターズ・スペシャルという、明らかに完全に間違いなく孝志に好意を寄せている現実離れした美女。
穂花のアルマスへ対する警戒心は計り知れない。しかも孝志がその女性を可愛いと褒めており、そのやり取りが穂花の焦りを増幅させた。
それに加えてまだテレサも居る……彼女の存在まで知ったら穂花は発狂死してしまいそうだ。
「それでどうしたんだアルマス」
「タオルないでしょ?……顔についた水分を私が舐め取ってあげるわ」
「お前に舐められたから顔を洗ってるんだよ!!それなのに舐められたら、また顔を洗わなくちゃダメじゃねーかよ!!」
「………え?そしたらエンドレスに顔を舐め続けられる……?」
「……お前、最近ちょっと下品じゃね?」
「うふふ……私、もう自分の気持ちに正直になるって決めてるから」
「自分の気持ちに正直になったら顔を舐めるの?」
「うん!夢だったの!」
「そうか……夢だったらしょうがない──とはならない。二度と舐めないでくれ」
「え……じゃあこれからは何を生き甲斐に生きれば良いの……?」
「逆に今まで何を生き甲斐に生きてたの?」
「人間観察……対象は、た・か・しっ!ふふっ」
「………………」
「………言いたい事があるならどうぞ」
「言っても無駄なんでイイっす」
「それと、お前って言わないで」
「ごめんっす、うっす」
──めちゃくちゃ仲良いじゃないですかっ!!
焦らず時間を掛けてから、そのうち孝志さんと結婚するつもりだったけど、あのアルマスっていう人……ヤバすぎる……!!
向こうの世界でも、この世界でも、これまで色んなライバルが居たっ!!
でもあの女の人は明らかに次元が違うっ!!ちょっとでも油断したら孝志さんを持って行かれちゃうっ!!
顔中を舐め回すって幾ら何でもズルいズルいズル過ぎるっ!!羨まし過ぎるっ!!幸せそう過ぎるっ!!
私はお触りまでで我慢してたのにっ、まさかそれ以上が許されたなんて……幾ら払ったのあの人!?
……穂花は顎へ手を当てながら考え耽る。
その仕草や表情は真剣そのもので、例え超一流大学を受ける受験生でも此処までの真剣さは醸し出せないだろう。
──そろそろ本気で取りに行った方が良いのかな?
…………
……う、うんっ、そうしようっ!
が、頑張らないと……!!今までみたいに逃げてたらきっと孝志さんに振り向いて貰えない……!!
それに気の所為かも知れないけど、あの女の人さっき横目に私のことを嘲笑ってたよ!!
(※アルマスは本当にやってました※)
穂花は決心した。
片唾を呑み、まだ言い争ってる孝志の元へ恐る恐る近付いた。そして拳を握り締めながら徐に口を開いた。
「わ、わわ、私もっ、お顔を、な、なめ、舐めていいですか!?」
「穂花ちゃんってば変な冗談言っちゃって!!ははは!!──でもアルマスは悪い見本だから真似しちゃダメだよ?」
孝志は諭すように穂花の頭を優しく撫でた。
──全然相手にして貰えないっ!?
穂花はショックを受けた。
全く性的に見て貰えないからだ。
本気で取りに行ったのにそれを冗談だと思われてしまい、孝志を味わうどころかホッコリした気分を逆に味合わせてしまった。
一方でアルマスも地味にダメージを受ける。
(私とストーカー女とで態度が違い過ぎるっ!どうしてっ!?)
──こうして、アルマスVS穂花の第一ラウンドは引き分けで幕を閉じるのであった。
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