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7章 普通の勇者とハーレム勇者
生き返れる男
しおりを挟む目を覚まし、突如として起き上がった松本孝志。
どれだけ魔法を掛けても決して目を覚まさなかった男のいきなりの蘇生に、その場に居た四人が沸き上がる。
その反応を見て孝志は溜息を吐く。
「君たちとりあえず静かにしてくれ」
「どういう魔法か分からぬが無事で良かった……取り敢えずアルマス達に──」
直ぐにアルマスや穂花に知らせようと動くオーティス……しかし、テントへ向かおうとする彼をアレクセイが手で制止した。
「待ちなさいオーティス」
「ん?アレクセイ殿?」
四人の中でいち早く冷静さを取り戻したのはやはりアレクセイである。
まず孝志が生き返った事に彼はある事を疑っていた。
疑いとは死した者の肉体に別人格が宿ること……実際に魔族の中にはそう言った類の魔法の使い手が数多く存在する。
またそうやって乗り移った人格こそ、乗り移った相手を殺した張本人であるケースが殆どなのである。
「…………なるほどね」
そしてアレクセイの推察は半分当たっていた。
孝志を殺したというポイントは違えど、孝志に別の人格が乗り移ってるのに関しては大正解なのだ。
それにアレクセイはアダムという男の存在を知っている。また、彼なら孝志を手に掛けないとも言い切れず、それをアレクセイは疑う。
もしそうなら孝志は既に死んでおり、肉体は完全にアダムに乗っ取られた事になる。
それならば結局は死んだのと変わりないのだ。
「…………アダム。貴方が殺して孝志ちゃんを奪ったのかしら?」
「──ッ!?」
怒気を含んだアレクセイの物言い……それに驚きを表したのはフェイルノートだった。彼女にとっては実の兄となる人物に他ならない。
(アダム……?孝志がさっき言うとった、兄様が自身に宿ってることを──つまりアレは兄様なのか?)
フェイルノートは四人から距離を取り、顎に手を当てながら一人で考え込む。
(じゃが、もし孝志を殺したのが兄様なら……?)
そう考えるとフェイルノートは複雑な心境となる。
そんな妹の心情を察したのか、アダムはハッキリと疑惑を否定する。
「よしてくれ、僕は純粋に助けようとしているだけだ。だからアレクセイは殺気を抑えてくれ──もちろんユリウスもね?」
「お前に呼び捨てにされる覚えはない」
そう言ってユリウスはとりあえず剣を納める。
孝志が別人だと気づいた瞬間に抜いてたらしい。
此処にいる者で孝志を心配しない者は居ない。アルマスや穂花が異常なだけでユリウスも孝志を殺した者に対して怒り心頭なのである。
「それは失礼した」
ユリウスからの指摘に対して、アダムは孝志らしからぬ仕草でユリウスに頭を下げた。
「……それと一応は言っておく、アルマス達に気付かれないようにしてくれよ?──アリアンもそうだが彼女達に気付かれたら殺されてしまいそうだ」
「「「「………まぁそうだな」」」」
コレにはその場の全員が頷いた。
もし別人格が孝志の身体に乗り移ってると知った場合、どうなるか解らない。
それとアルマス、穂花、或いはアリアンも【アダム状態】で目を覚ました孝志を観れば、一瞬で違う存在だと気付く筈だ。
兎に角、アルマスと穂花の孝志へ対する愛情はあまりにも深過ぎる。それ故に、死んだ孝志に別の人格が宿ってるなど許す筈がない。
それとアリアンにも案外その節がある……だからアダムもその狂人がウロチョロしてる内は黙って動かなかった訳なのだ。
「君たち四人が集まってくれたのは丁度良かった。ユリウにオーティス……君達とは特に話をしたかった。そしてアレクセイも際どいが頼りになる──」
アダムは顎に手を当てて居るフェイルノートへと視線を向けた。
「──それにフェイルノート……久しぶりだね」
「……はい、兄様」
兄妹として数百年振りの再会となるのだった。
────────
「ところでアダム殿……何か方法があるのか?」
オーティスとフェイルノートだけが此処に残り、アレクセイとユリウスはテントに戻った。
どうやらアルマス達が心配だったらしい。
それに、孝志が蘇る可能性が生まれた以上、一番に心配すべきはアルマスと穂花の二人だ。
だからユリウスとアレクセイがそれぞれ念入りにアルマスと穂花が変な真似を起こさないのか見張る事にした。
アダムについては四人とも非常に迷ったが、最終的に話さない事にした。
その理由としては、変に期待を持たせてしまい、もし生き返れなかったとなった場合……再び彼女達を絶望に叩き落とす事となる。
だから生き返るのが確定してから話すつもりだ。
その代わりしっかりと見張るのが条件。
「……それについてはオーティスにこそ聞きたい」
「む?」
意外にも他人頼りのアダム。
いきなり自分が頼られる展開に、大物感を出す割には案外使えないと思ったが、それは口に出さずアダムの話に耳を傾ける。
「この世界に居るのだろう?蘇生を可能にする老賢者が」
「……確かに居るには居る──だがしかし、かの者が我らに手を貸すとは到底思えん……何故ならば人間を嫌っているからな」
「……ふ、大きな勘違いだオーティス」
「勘違い?」
「彼は人間が嫌いなんじゃなく【この世界の人間】が嫌いなんだよ」
「この世界?……彼は異世界人なのか?といよりも、汝はその老賢者を知っているのか?」
「そうだとも、彼は異世界人だ。それに彼については良く知っている……少なくとも君よりはね」
(いちいちマウント取ってくるな、此奴)
オーティスは、アレクセイやフェイルノートと違い、アダムについては良く知らない。ただ、こういう調子に乗る所はそっくりだと思った。
「知り合いなのであるか?」
「……僕は知らない」
「なんなのだ其方は!?」
温厚なオーティスを怒らせるアダム。
兄様は相変わらずだと、フェイルノートは微笑みながら静観していた。
フェイルノートが相変わらずと考える通り、アダムは昔から他人を怒らせるプロなのだ。
「しかし、孝志を観れば必ず助ける筈だよ」
「……何故、孝志ならば助けると言い切れる……知らないんだろう?」
「──まぁ色々あってね。ただ、彼ならば孝志を助けると解りつつも、僕はその老人の居場所が分からない。だからこうして君に尋ねて居るのだよ」
「……相手が孝志だったら……助ける老賢者」
「魔法に精通してる君なら知ってると思うんだが?案内してくれないだろうか?」
「………わかった」
オーティスは信じられないと言った表情でアダムを見た。
確かにオーティスは居場所は知っているし、ラクスール王国の三大戦力という立場を利用すれば会う事も出来なくはない。
それに彼なら死んだ孝志を生き返らせる事も可能だろう。
だが相当気難しい老人……素直に頼みを聞いてくれるとは思えなかった。
「獣人国へ行けば……彼に会えるであろう」
「うむ……目標は変わらないんだね」
予定通り獣人国へ向かう事にした。
ただし、向かうのはアダム、オーティス、フェイルノートの三人だけで、ユリウスとアレクセイは引き続きアルマス達の監視を行う。
幸い、彼女達は孝志の『死』に向かい合う勇気がない。心が落ち着くまでは近寄ってこない筈なので、孝志が居なくなっても少しの間なら気が付かない筈だ。
──オーティス達は急いでその老人の元へと向かうことにした。
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