普通の勇者とハーレム勇者

リョウタ

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7章 普通の勇者とハーレム勇者

復活する主人公

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──真っ白な異空間。
辺りに何も存在しない殺風景な場所で【同じ顔】の二人が言い合いをしていた。

孝志とアダムの二人である。
言い合いと言うよりかはアダムが一方的に喋り、孝志がそれを軽く遇らっているようだ。


「──そろそろ入れ替わってくれるかな?」

「ごめん、まだ無理」

「もうとっくに蘇生は完了している」

「いや気分悪くて──うげぇ」

「気分の悪さもない筈だ。だって完璧な状態で蘇生したのだからね──エチケット袋を用意しようか?」

「ちょっと殺された所為でメンタルやられて──それは要らない」

「そうなヤワじゃないだろう?」

「実は気が弱いんねん、僕」

明らか嘘だとアダムは思った。
数々の強者と対面しても微動だにしなかった男が死んだ位でメンタルを喪失する訳がない。
もちろんアリアンが相手の時を除く。

アダムは受け取って貰えなかったエチケット袋を仕舞い込み更に話を続ける。


「……君はいったい何がしたいのだ?」

胸を貫かれ死んだ孝志が避難している精神空間。
老賢者に復活させて貰った孝志の魂は既に蘇っており、いつでも此処から出られる──要は肉体に戻れる状態だ。

しかし、それを孝志は拒んでいる。
その理由がアダムには分からなかった……だって聞いても答えないのだから。

(生き返ることにデメリットなどない筈だが)


真正面からの説得は変人の孝志相手では無駄だとアダム諦め、今度は違う路線で攻める事にした。


「………特別ゲストも待っているぞ」

「有名人?」

「ふっ、さぁどうかな?」

「えっ!?もしかしてイ◯ローとか!?」

「君好きだよね……ただ、それは生き返ってからのお楽しみだよ」

「上手いなぁ~、俺を乗せるのが本当に上手いじゃねーか。もう気になって仕方ないんだけど?」

「じゃあ生き返るかい?」

「う~ん」


孝志は俯き何やら考える仕草を取った。
その間わずか数秒足らず……しかし、顔を上げた孝志は──


「そろそろ良いかな?」

今度は呆気なく了承する。今までのゴネは何だったと言いたくなるほど実に呆気ない心変わりだ。


「はぁ~、全く……どうして生き返らせる説得に苦戦しなくてはならないんだ」

アダムはやれやれと首を振りながら孝志の魂を肉体へ戻す準備に取り掛かる。準備と言ってもそれほど大掛かりなモノではないが……ただ魔法を唱えるだけだ。


「それじゃ……動かないでくれよ?動くと失敗してしまうからね?」

「ガッテン招致ッ!」

「………?」


──ヤケに陽気だな?
僕を嫌ってる筈なのにいったい何を企んでいるんだ?
というより孝志はどうやって生き返ったのか、そういった類いのことを一切聞いて来なかった。

普通は一番気になる筈なんだけどね?
助からなくても別に良いと思ってたんだろうか?

だとしたらもう少し生に固執して欲しいモノだ。



「どうした?早く生き返らせてくれる?」

「あぁ……分かった」

どの道、何か企んでた所で精神世界ではどうする事も出来まい。少し疑問も残るが、大人しく言うことを聞いてくれる内に生き返らせよう。
孝志はヘソを曲げると面倒くさいからね。


「では行くぞ?──『ソウルヒーリング』」

「じゃあね!」

そして孝志の姿は精神世界から消え、異空間にはアダムの精神のみが残される。

しかし、消えただけで干渉はこれまで通り可能。
孝志が精神を大きく消耗したり、今回のように死んだりすればアダムから働き掛けて入れ替われるのだ。


「とりあえず、ずっと放置してた魔王テレサの様子でも観に──え?どういうことだ?繋げられない」

テレサに自身の眼を同期させようとしたが、意図しない結果となりアダムの動きが止まる。
更にもう一度試すが無駄だった。


「彼女から遮断したのか──いや、彼女が孝志を手放すとは考えられない。彼女の唯一の拠り所なのだからね」


となるとつまり──


「孝志か」

犯人は直ぐに思い当たった。


「だから僕が相手なのに上機嫌だった訳か。僕を出し抜いたから優越感に浸っていたんだな」

三度目も試すがやはり無為に終わる。
仕方ないと諦め今度は孝志の眼に繋げようとするが──


「なんだと?コッチもダメなのか?──というより外の映像を観れなくなってる?」

もう疑いようがない、これも孝志の仕業だ。

しかし、一体どうやって?
魔法の知識がない孝志にこんな真似が出来るとは思えない。

何かあるな……孝志が蘇生するまでの間、確かに俺は孝志から目を離した。
疲弊していたのもあって大丈夫と思ってたけど、アレは演技だった訳か──完全に騙された。


「死んでもタダでは転ばないか──いや流石と言うべきか。僕を対策するのに自分の『死』すら利用するなんてね。此処まで来るとその抜け目なさに敬意を評すよ──でも一応は命の恩人だし、少しくらいは敬って欲しものだ」

誰も居ない空間でアダムは独り言を発する。外へ干渉出来ないと言うことは、この空間に閉じ込められたという事になる。


「分かっているのか?僕を閉じ込めるという事は僕の助けを借りれないんだぞ?だから全知全能も使えない。それでどうやって生き残るつもりだ?」

殺された時も魂が消える直前にアダムが助け出した。
しかし、こうやって隔離されると対処が出来なくなってしまう。



──アダムはそれだけが気掛かりだった。



♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


………………


………………


………んん~?


目を覚ますと、真っ先に豪華なシャンデリアが目に付いた。そして自分の体躯の三倍以上あるベッドの上に寝かされている。
ラクスールの王宮で使わせて貰った客室と比べてもだいぶ広い部屋だ。向こうも大概だったがこの部屋はそれ以上ある。

ベッドはその中央にポツンと仕切りもなく置かれており、目覚めてそうそう虚無感が半端なかった。
まるで広大な砂漠に一人で取り残された気分だ。


「…………」

貫かれた胸の方に手をやると、そこには傷口すら残って居なかった。本当に綺麗な状態で完治している。
加えて寝起きの脱力感こそあれど痛みも感じない。


「………あ」

俺は目の前の机に花瓶と一緒に並べて置かれてある、ブローノ王子に貰った大切な道具袋へ手を伸ばした。
これこそ俺の生命線……もうコレが手元にないと落ち着かない体なんだよな。


「……えぇ……ポーション無くなってるやん」

誰が使ったんだよ100個近く有っただろ……あらぁ~高級なヤツまで使われてるし。
あ、でもケチャップは無事だから良いや。



「あ、あ、あーあー」

よしっ、声は普通に出せる。
今はとりあえず誰か呼ぼう。こんな広い空間で独りぼっちは寂しい。


「おはようッッッ!!!!誰か居ないのッッ!!?寂しいんだけどねぇっ!!」


──孝志は声を張り上げる。
とても病み上がりとは思えない。

孝志が声を上げた後、出入り口の向こう側がドタバタと慌ただしくなり出した。

しかしそれも束の間。
勢いよく扉が開かれ、見知らぬ老人とオーティスが部屋の中へと入って来る。
孝志が生き返りオーティスは嬉しそうにしてたが、それ以上に見知らぬ老人の方が嬉しそうに笑っている。

そして孝志は直感的に察する、自分を助けてくれたのがこの老人であると──故に猫被りモードへ移行した。



「貴方が私を助けてくれたんですね?ありがとうございます」

「はははっ!久しぶりだな孝志っ!!」

「おい、初対面のジジイに呼び捨てにされるほど安くねーぞ?」

「変なところでキレるのも相変わらずだぜっ!」

「はぁ?」

なんだこのボケ老人は?
まるで知り合いみたいに語るじゃねーか。こんなジジイ知らな………え?


──容赦なく老人を罵ろうとていた口が止まる。
見覚えがない……その筈だったのに──その喋り方、佇まい、外観的特徴、それらが孝志の良く知る人物と完全に一致していた。

心当たりの人物と比べると年齢は大きくかけ離れてはいるが、見れば見るほどその人物だと確証が持てた。

ただ、孝志の思い当たった人物は既に死去している。


「………」

しかし、此処は異世界で普通とは違う……もしかしたら奇跡もあり得るかも知れない。


「あ、あの……」

こんな事を聞いて違っていたら変に思われるだろう。それでも孝志はそれを確認せずに居られなかった。


少し息を吸い込み………そして──




「──父さん?」

「………!」

オーティスが耳を疑うような台詞を口にした。
その問い掛けに対して、老賢者・松本孝之は笑顔で返答した。


「……ああ、久しぶりだな。死んだ筈だが、なんか違う世界で生き返っちまったぜ?」

「…………」

「…………なんだぁ?感動して声も出せねーのか?」

「いやもう完全にジジイじゃねーか」

「おい!父親と分かって第一声がそれかよっ!」



──しかし、相変わらずな孝志であった。





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