普通の勇者とハーレム勇者

リョウタ

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7章 普通の勇者とハーレム勇者

エピローグ 〜普通の勇者ではないのか?〜

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──今にして思うと伏線がいっぱい有った。アリアンさんが姉と言われても納得出来てしまう伏線が──


まず、俺に対しての扱いがおかしかった。
もちろん訓練は本当にマジで死ぬほどキツいし、俺に対する言動なんかも怖過ぎる。
しかし、橘みたいに嫌悪感を抱いてる感じもなく、本気で常に俺の事を心配してくれていた。

それって冷静に考えるとおかしくないか?
橘はユリウスさんを侮辱したので目を付けられて嫌われてしまったのに、それ以上にユリウスさんを侮り小馬鹿にしてる俺には優しいなんて……普通に考えて有り得ない。

確かにアリアンさんの前では猫を被ってきたし、周りにバレないようにして居たけど、そんなものアリアンさん程の人が気付かない筈がない。
あの人は脳筋に見えて頭が良い人だ……俺のその場凌ぎな言い訳なんて見抜いていただろう。
それでもずっと気に掛けてくれて居た。

それはきっと、俺に対して言いようのない何かを感じていたんだと思う。
実際に俺も、どれだけ厳しく躾けられてもアリアンさんを嫌いになった事がなかった。心ではどれだけ悪態吐いても、この世界で一番に尊敬して居たし、誰よりも誇れる人だと思っていた。


だからこれもおかしい。
厳しい先生とか大嫌いなのに、何故かアリアンさんからどれだけ酷い訓練を受けても嫌いにならなかった。恐怖心が増幅しては居たものの憎んだりする事は一切なかった。


それってつまりお互いに何かを感じ取って居たんだな。俺はもちろん、アリアンさんも血の繋がった関係だなんて知らない。
それでも尊重し合えたのは【姉弟】だったから……無意識に惹かれ合って居たのだろう。

でなければあそこ迄よくしてはくれない。おばあちゃんの城では添い寝までしてくれた。あの堅物でガードの硬そうなアリアンさんがそんな事する筈がない。今にして思い出すと本当にそうなんだよ。


──そして実はもう一人、アリアンさんに対しておかしい人物が存在していた。

それはアルマスだ。
アイツも何故かずっとアリアンさんの事を高く評価していたんだよ。
俺に対して何処までも甘い女なのに、厳しい訓練で俺を追い詰めるアリアンさんを一度も止めてはくれなかった。それ所かちゃんと指導してくれると感謝までして居たな。

これも普段のアルマスでは有り得ない話。俺を極限まで痛め付ける行為を、あのアルマスが容認する訳がないんだよマジで。

あの女……心の何処かでアリアンさんから松本家の遺伝子を感じ取って居たんだ。
だからラクスール王国の人間を毛嫌いしているのに、アリアンさんにだけは愛想が良かったんだな。


「くっそ!この世の全てが俺の敵だっ!」

孝志はベッドを離れ、部屋の窓から外の景色を眺めながら吐き捨てるように呟く。父もオーティスと話をしに出て行ったので、この部屋には孝志と護衛としてフェイルノートが残されて居た。

しばらく孝志が一人っきりになれるタイミングはないだろう。何者かに命を狙われている状況下で護衛を残さずに離れるのは愚の極み。
実はさっき目が覚めた時も、孝志が気が付かなかっただけでフェイルノートが近くで監視して居たのだ。



「のう孝志よ。黄昏ているところ悪いんじゃが、少しは大人しくしておれ。お主はまだ病人なのじゃぞ?」

「だってぇ……アリアンさんがお姉さんだなんて……受け入れ難い事実ですよ~……ぐずん」

「な、泣くほど嫌か……」

「俺もっと優しいお姉ちゃんが良かった。俺を何処までも甘やかしてお小遣いもくれて何をしても怒らないで、喧嘩が超強くていざと言う時に頼りになって、立ち振る舞いがお嬢様で語尾が『ですわ』で、胸が大きくて、俺以外の男が相手だと根暗な性格で、急にイケメンと付き合い出さないような姉が良かったんだよ~!!」

「いや図々しいにも程があるじゃろ!!」

フェイルノートは思った……何故こんな奴が穂花やアルマスといった優良株に好かれるのか理解出来ないと。確かに顔はフェイルノートの好みだが性格がやば過ぎる。兄であるアダムとは雲泥の差だ。

ただし、恋愛対象としては観れないだけで人間としては面白く嫌いではない。それがフェイルノートの孝志に対する評価だ。


「……ん?妙じゃぞ?」

「なんだよ?俺が落ち込んでんだから慰めろよ!」

「うざいのじゃ、少し黙って」

「あ、うん……ごめんね」

(外で何やら孝志の父親と誰かが口論をしておるのう。相手はオーティスや弟子ではないようじゃが?)

「あの……本当にごめんね……怒ってる?」

(この神殿は我とアホの孝志以外じゃと、家主のタカユキ、弟子の獣人族、後はオーティスしか居らん筈じゃ……という事は外から来た者と揉めておるのか?)

「何も言わないってことは怒ってる?そんな怒らないで仲良くしよう?フェイルノート……いやフェイちゃん!」

「あああッッ!!!もう煩いのじゃッッ!!!」

「……うざいって言った仕返しだよ」

「うぉ……器小さっ!」

「なに……?いま器が小さいって言った事も絶対に──」

「ああもう!分かったから!!外でお主の父親が誰かと揉めとるぞ!早く加勢に行かぬかっ!!」

「……なんだと!?だったら遊んでないで早く助けに行くぞ!!」

「………(殺してぇ~)」

フェイルノートは湧き上がる殺意の衝動を抑え、孝志と一緒に部屋の外へと向かった。

そして部屋を出て孝志は気が付く。
廊下には神々しい絵が所々に飾られており、感じが『教会』っぽくなっていると。


「そう言えば神殿とか言ってたな」

「声がするのはこっちじゃ、着いて来い」

「うん」

そして二人が辿り着いたのは、中央に祭壇の置かれた広い空間だった。それ以外は本棚くらいしか無く、広い割に質素な部屋だ。神殿というのだから、恐らくこの場所は祈りを捧げるのに使っているんだろう。

そんな祭壇を挟んで向かい合い、激しく言い争っているのは孝之……それともう一人が──


「え!?おばあちゃん!?」

そう……相手は祖母の弘子だったのである。
孝志はおばあちゃんが此処に居る事に驚いたが、それ以上に、祖母と父親の仲がめちゃくちゃ悪そうなのに驚きを隠せなかった。

故に二人を止める事を忘れてしまっていた。


「──だから!私の孫が大怪我をしたから助けて欲しいって言ってんのよっ!!」

「知るかっ!大怪我ならラクスール王国に行けば良いだろっ!?」

「王国には頼りたくないって知ってるでしょ!?聞き分けのないジジイよねほんとっ!!」

「やかましいわ!!この若作りババアがっ!!第一、なんで俺がどこの馬の骨とも知れないババアの孫を助けないといけねーんだよっ!!」

「馬のホネぇ!?馬のホネですってぇ!?もう一度言ってみなさい!!私の悪口なら良いけど、あの子を悪く言うんなら許さないわよっ!!」

「はん!クソ魔女がっ!いろいろ魔法の知識が豊富だから仲良くしてやったがもう此処までだっ!だいたいな、いつまで経っても名前すら教えてくれないような魔女と連む道理はねーんだよ!!」

「はんっ!あんたみたいな老ぼれに教える訳ないじゃない?外で女神様や十魔衆達が待ってるんだけど!?良いの!?襲わせるわよ!?」

「チッ!くそババアがっ!──おう良いだろう掛かって来いよっ!こっちには王国三大戦力のオーティスと、なんだか良く分からない吸血鬼の姉ちゃんが居るんだぞ!!」

「よしっ!良い度胸ね!大怪我しても知らない──え?オーティス!?オーティスですって!?」

「ん?なんじゃい?」

「オーティス……オーティスって、もしかして誰か怪我人を連れて来なかった!?」

「連れて来たがババアとは縁も所縁もない子だよ」

「いいから!何処に居るのその子は!?」

「ババアに教えるかよ!」

もうめちゃくちゃな言い合いである。
孝志も途中から我に返っていたが、口論を止めもせず楽しそうに二人のやり取りを聞いていた。


「おい、いつまで見学してるんじゃ?」

全く止める気配がないのでシビレを切らしたフェイルノートが孝志に声を掛ける。


「いや……だ、だって……ぷくく……あの二人、仮にも家族なのに、互いの正体も知らずに言い合いしてるのが面白くて……はははっ!」

「お主は性格悪いのう」

「黙れ、なんだか良く分からない吸血鬼の姉ちゃん」

「あーもうマジうざい!!そういう悪口は絶対に聞き逃さないのじゃな!!」



「──おっ!起きて来たか!」

「え……あ……!」

どうやら大きな声で話してた孝志とフェイルノートの声は、孝之と弘子の耳にも届いていたようだ。

二人はピタっと言い合いを止めて孝志の方を向く。
孝之は元気になった息子を観て嬉しそうに、そして弘子は孫の登場に驚き目を丸くしていた。


「ふっ、よう!」

しかし、孝志が元気よく手を振れば怒気や驚きの感情など瞬く間に忘れ、二人とも大急ぎで孝志の元へと駆け寄って行く。



「孝志っ!!」
「孝志ちゃん!!」


「二人ともさぁ?もっと仲良くしろよ!お父さん!おばあちゃん!」



「……え?」
「……え?」


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みんなの感想(295件)

ダンタリアン

アリアンさんがお姉ちゃんは孝志大混乱

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後藤 悠
2022.02.26 後藤 悠

まさかアリアンさんががが!

解除
後藤 悠
2021.09.17 後藤 悠

テレサ『また最近、ボクの出番がなくなったと思うのだけれども!!(ジトー)』

リョウタ
2021.09.22 リョウタ

久しぶりですっ!
感想ありがとうございます!

テレサは出て来る時はずっと出て来るので、少しお待ちを……

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1 / 5

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