精一杯のエゴイスト

宮内

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 最寄り駅に着いてうだるような蒸し暑さにぞっとして歩き出そうと改札を出ると、そこに昨夜見た優男を発見した。
「すごい偶然ですね。昨日はどうも。」
そんなふうに彼から声をかけてきた。
「昨日はごちそうさまでした。お仕事じゃないですよね?」
「休みです。俺、家こっちなんで。」
「そうなんですね。」
会話は止まり、私は会釈をしてその場を離れようとした。すると、
「昼ご飯食べた?」
突然腕を引かれるみたいに聞かれた。朝ごはんが遅かったので昼ごはんを食べるつもりはなかった。
「朝が遅かったのでお昼は、はい。」
笑顔でごまかした。彼もおそらくただの付き添い。私に気を使う必要は無い。昨日も乗り気ではなさそうだった。
 
 しかし昼間の日差しのもとで見ると昨日の二割増位でその男はかっこよく見えた。
背は高く小顔でさほど短くない黒髪はさらさらとながれ、おそらく二日酔いでは無いだろうが、それを差し引いても二日目の三十代にしては爽やかさ満載だった。
彼とは昨日あまり喋らなかったので何を話していいかわからない。
そして和泉がいない今、私がこの男に気を遣ってしゃべる必要はあるのだろうか。
この男も私と喋りたいのだろうか。なんで昼ご飯のことを聞いたのだろう。
そんなことを考えていると男はこちらの気持ちを見透かしたかのように誘った。
「よかったらランチどう。」
どう答えたらいいのだろう。
正直お腹はいっぱいだ。

でも、むげに断って和泉の印象悪くするのも嫌だ。
どうするべきか考えて考えるのをやめて
「私と食事に行きたいですか?」
はすっぱに聞いてしまった。
「行きたくなかったら誘いわないけど。」 
子供のような声が返ってきた。拗ねたようなその言方が可愛らしくて思わず笑ってしまった。
「何がおかしいの?」
さらに子供のように拗ねた彼は
「予定があったりしたなら断って。ごめん。突然。」
「予定は無いです。ただ、朝が遅かったのでお腹がいっぱいなので、気を使ってくださったのにごめんなさい。」
なんだか、偶然会って申し訳なかった。
「気を使っているわけじゃないから。 俺は単純に直江さんとご飯に行きたいなと思っただけ。」
なぜだろうと頭の中に疑問符が浮かぶ。
でも、そこまで言われて断るのが申し訳ない気分になり
「お茶だけになっちゃいますけど、いいですか。」
尋ねると
「じゃあ、そこのカフェに。」
そう言われ、私たちは駅の近くのカフェに入り向かい合って座った。

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