精一杯のエゴイスト

宮内

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 なぜ、彼がそんなことをしたのか聞きたかったけれど聞けず、私は握られた手が汗ばみそうでひどく緊張していた。
お互い何も話さず、彼はいつものように私を家の近くまで送ってくれた。

 いつもの分かれ道で立ち止まりお礼を言って離れようとすると彼は家まで送ると言った。

いつもは大丈夫と断っていたが、なんだか離れがたく送ってもらった。
でも、二人並んで歩いたが何も話さなかった。

ただ、分かれ道で離したはずの手を彼は再びとり家までの帰路をずっと手をつないで歩いた。
アパートの下まで来て再びお礼を言うと別れ際彼は何かを言おうとした。
私も本当はお茶でもと言いたい気分になったが結局言えず『お休みなさい』と別れた。


 部屋に入って繋いだ手を眺めながらドキドキし、まるで中学生みたいだなと恥ずかしくなった。
着替えをすまして、頬の熱さが冷めないうちにお礼のメッセージを送った。
すぐに彼からの返信がきて『おやすみなさい』までの何度かのやりとりをしてお風呂に入った。
その時の私は自分が和泉と同じことをしていることに全く気が付いていなかった。
ただ、お風呂の中で今日のキスのことを考えながら気が付くと唇に触れていた。


 どうしてあんなことしたのだろう。
いくら予防線を張ってみても彼が自分を嫌っていないことぐらいはわかる。

じゃあ、好きかと言われたらと途端に自信がない。
好きと嫌いの間には大きな壁がある。
大人の男女なわけで好きじゃなくても色々できる。
タイミング、雰囲気、欲望。
好きじゃなくてもできる理由を探す方がはるかに簡単だった。

 そして、ふと自問自答する。『自分はどうだったのか。』私は全然嫌じゃなかった。
彼にそうされて全く嫌ではなかったし、それどころか、彼がどうしてそんなことをしたのかばかりを考えた。

そして、気が付く。私は彼が好きなんだ。
だから彼が自分をどう思っているのか、なんでキスしたのかが気になって仕方ないのだ。
そのことに気が付いて私は、ブクブクと湯船に沈んでいった。
どうしよ。
まさか好きだなんて。
嬉しくもあり、でも不安で、どうしよう私。
その日は眠れなかった。

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