精一杯のエゴイスト

宮内

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 食事の間に彼はしばらく忙しくなると話した。
出張が続いているらしく当分映画も観に行けない事を教えてくれた。
帰ってきたらまた映画を観に行こう。
そう彼は言い残して私たちは別れた。

家に帰って私は何も手に取ることができず、ゆっくりお風呂に入った後ぼんやり昨夜のことを思い出していた。好きな人に抱きしめられて『かわいい』と言われて幸せな気分でいっぱいだった。
でも、一度も彼が私のことを「好き」と言わなかったこと。
ただ、『かわいい』『きれい』と褒めてくれたことを思い出し、なんだかモヤモヤした気持ちが残った。
彼は私のことをどう思っているのだろう。
それは、ささくれのように私の心を侵食し、そのひっかかりは気づかぬうちにムクムクと大きく私の心を覆っていた。
でも昨日の夜のことを思い出すと彼の全ては私に優しくやっぱり幸せな気分の方が勝った。
そしてにやけている自分が恥ずかしかった。
 
 忙しいと言っていた通り彼に会えることはなく、連絡をしてみたかったが、これまで以上に自分からは行動できず、彼から来る連絡に返信する毎日。

でも、彼は連絡を頻繁にくれた。
そのことがただ嬉しくて、不安は消えないものの落ち込むばかりの日々でもなかった。

私は次に会える日には二人の関係をはっきりする勇気が欲しいと自分に自信をつけるべくダイエットや肌の手入れ体の手入れに勤しんだ。

 その頃から会社で雰囲気が変わったと言われることが増えて、自分の単純さがおかしくて笑った。

それまで声をかけられなかったような社内の人や取引先の人にまでこれまでの世間話の延長とは思えぬ誘いを受けることも明らかに増えた。

これは自分で思っているよりずっと浮かれているのかもしれないと気を引き締めようとしたけど、三島さんからの連絡がくればつい笑顔になっている自分がいた。

自分の気持ちは色んな予防線を張ってみたところで隠し切れぬほど明らかで、私は彼が好き。

認めてしまえば早く彼に会いたいような、踏み出せる勇気があと少しほしいような、あのお風呂での不安は影を潜め彼にただ会いたくて、どうしようもないほどの恋心はすっかり心や私の生活のほとんどを占領していた。

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