精一杯のエゴイスト

宮内

文字の大きさ
53 / 63

53

 かろうじて社会人としての責任は果たし帰りの駅のコインロッカーで荷物をとって家に帰る。
夜には三島さんと和泉から電話が来た。
三島さんは週末に会おうと言う話だった。

和泉は日曜日の事をしっかり聞かれた。
ことの成り行きを説明すると嬉しそうに
「よかったね。」
と和泉は笑った。

「ごめんね。急にいけなくなっちゃって。昨日で決めるって言っていたのに、本当にごめん。」
自分のことばかりで和泉に誘われていた岡山さんとの関係を見極めると言うことをが気になり謝る。

「大丈夫だよ。岡山さんともその話で盛り上がったし、二人の話のついでに、私聞いちゃったの。岡山さんは私をどう思ってるんですかって。」
「そしたらなんて?」
「かわいいと思ってる。だって。」
「で。」
「それだけ。」
和泉は力なく笑う。

「だからわかっちゃった。もう先がないんだって。私諦めるわ。岡山さんの事は素敵な人だと思うけど、もうかれこれ半年もご飯だけだし、聞いてもそんな答えしか返ってこないんだから、きっと見込み無いから。私たちも、もう三十二じゃん。そろそろいろんなこと考えないと。何を手に入れるために努力するか考えないといけないと思って。私、結婚したいし、子供は欲しいんだよね。だとしたら、そんな悠長にやってられない。子供は欲しいけど結婚相手をすぐに見分けられるほどの眼力もないから。ちゃんと時間をかけて付き合ってから結婚したいし。だからもう不毛な思いに時間を割くのはやめて諦めるよ。」

「和泉それでいいの?ごめん。昨日行けなくて。本当にごめん。」

「うん。大丈夫。佐和がいたって答えは同じだったはずだから。むしろ甘えないで自分で答えを出せたから今はスッキリしてる。また頑張るよ。」
私は何とも言えなくなって黙ってしまう。

「佐和はちゃんと思った人に思われたんだから大事にしなよ。疑心暗鬼になって自分卑下して諦めるって佐和の悪い癖だよ。三島さんそれだけきちんと好きって言ってくれたのだからもっと自信持ってがんばりな。自分は彼女なんだって。そんなふうになれるチャンスなんてたくさんない事私をみたらわかるでしょ。誰にでも訪れるチャンスじゃないかもしれないからね。」
しばらく何とも言えない雰囲気の会話を繰り返し私たちは電話を切った。

自分は幸せいっぱいで甘い時を過ごしたが和泉は道を決める選択をしたのだ。 

その時に『絶対来てと』言われていたのに行けなかった、自分を優先してしまったことにひどく罪悪感を覚えた。

でも、だからといって自分にできる事はない。
また、少し時間をおいて食事にでも誘ってみようと思いながら岡山さんを見つめる和泉のやわらかい笑顔が思い出されて苦いものがこみ上げた。

あなたにおすすめの小説

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

課長と私のほのぼの婚

藤谷 郁
恋愛
冬美が結婚したのは十も離れた年上男性。 舘林陽一35歳。 仕事はできるが、ちょっと変わった人と噂される彼は他部署の課長さん。 ひょんなことから交際が始まり、5か月後の秋、気がつけば夫婦になっていた。 ※他サイトにも投稿。 ※一部写真は写真ACさまよりお借りしています。

彼の過ちと彼女の選択

浅海 景
恋愛
伯爵令嬢として育てられていたアンナだが、両親の死によって伯爵家を継いだ伯父家族に虐げられる日々を送っていた。義兄となったクロードはかつて優しい従兄だったが、アンナに対して冷淡な態度を取るようになる。 そんな中16歳の誕生日を迎えたアンナには縁談の話が持ち上がると、クロードは突然アンナとの婚約を宣言する。何を考えているか分からないクロードの言動に不安を募らせるアンナは、クロードのある一言をきっかけにパニックに陥りベランダから転落。 一方、トラックに衝突したはずの杏奈が目を覚ますと見知らぬ男性が傍にいた。同じ名前の少女と中身が入れ替わってしまったと悟る。正直に話せば追い出されるか病院行きだと考えた杏奈は記憶喪失の振りをするが……。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

愛を知った私は、もう二度と跪きません

阿里
恋愛
泥だらけのドレス、冷え切った食事、終わりのない書類仕事。 家族のために尽くしてきたエカテリーナに返されたのは、あまりにも残酷な追放宣告だった。 「呪われた男にでも喰われてこい」 そう笑って送り出した彼らは知らなかった。辺境伯ゼノスが、誰よりも強く、美しく、そして執着心が強い男だということを。 彼の手によって「価値ある女」へと生まれ変わったエカテリーナ。 その輝きに目が眩み、後悔して這いつくばる元家族たち。 「エカテリーナ様、どうかお助けを!」 かつて私を虐げた人たちの悲鳴を聞きながら、私は最愛の夫の腕の中で、静かに微笑む。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

触れられないはずの私が、ただ一人の彼にだけ心も体も許してしまいました

由香
恋愛
男性に触れられると体調を崩す令嬢リリア。 そんな彼女にとって唯一“触れられる”存在は――幼なじみの公爵令息レオンだけだった。 手を取られ、抱き寄せられ、当たり前のように触れられる日々。 それがどれほど特別なことなのか、彼女はまだ知らない。 やがて政略結婚の話が持ち上がり、“触れられない相手との結婚”か、“彼に触れられる人生”かを選ぶことに。 「お前に触れていいのは俺だけだ」 逃げ場のない独占と、甘すぎる溺愛。 これは、触れられないはずの少女が、ただ一人にだけすべてを許していく物語。

綺麗な彼女

詩織
恋愛
憧れの人はモデルの彼女がいる。ずっと片思いなのが辛すぎて・・・