根雪の証

宮内

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 一日一日を惜しんで過ごした冬は終わり、遂に女学校を卒業する日となった。
卒業式には父が来てくれた。
進学は叶わなかったが私は優等賞を頂けた。
かといってそれを父が褒めてくれることはなかった。
「半月後には祝言だ。しっかり準備するように。」
卒業式が大切だったのは私だけで、父にとってはやっと終わった通過点というところだろう。
 
寂しい気持ちになりながら友達に別れを告げて家に帰ると松岡様が来られていた。

父と話をした後、私が呼ばれた。
「雪乃さん。卒業おめでとう。」
「ありがとうございます。」
「これは祝いだ。」
小さな箱を差し出され受け取ると中には朱色の万年筆が入っていた。
「ありがとうございます。」
「その色が好きなんであろう?」
「はい。ありがとうございます大切にします。」
嬉しくて思わずじっと見つめていると
「あと半月で祝言だ。これからは本を読むより習字でも習う方が松岡家で役に立つぞ。これの字は文乃と違ってこまごましていて恰好がつかん。」
父が咳払いのあとそう言った。

昔から姉に比べてできないところを叱咤されるのはいつもの事だった。

頂いた箱をギュッと胸元に押し当てて
「大切にいたします。ありがとうございました。」
と松岡様にお礼をつげると彼は口元だけを少し緩めた。
その後すぐに松岡様は帰られ、私は頂いた万年筆が嬉しくて母が聞いてきた噂話を父が渋い顔で聞いていた事に全く気が付かなかった。
 
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