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リーベ台頭 編

第164話 内戦の終息

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 ロイ達の活躍により、逆賊マグナート・ヘルブリス執政官は聖女の間で倒れた。

 残された闇の子供たちは全て倒され、聖都は平和を取り戻した。真偽は不明だが、民には”魔族と執政官が入れ替わっており、人質となった聖女を救うために騎士団が戦った”そういう風に御触れを出した。

 聖女が汚され、ヘルブリス執政官が王権を簒奪さんだつしていた等とは伝えられなかった。

 ロイが聖女の間へと足を運ぶと、女神フォルトゥナの像に祈りを捧げる聖女の姿があった。

「何を祈ってるんだ?」

「ロイ様ですか。ヘルブリス執政官について祈っておりました」

「なぜだ? アイツはアンタを──」

「わかっています。個人として思うところはありますが、彼の罪は死をもって償われました。これ以上を恨むのなら、女神フォルトゥナよりお叱りを受けるかと存じます」

 実に敬虔な信徒、まさに聖女に相応しい信仰だが女神が叱りに来るとは思えない。古の大戦以降、女神は託宣の場に現れなくなったみたいだからな。

「俺なら、ヘルブリス家の位を剥奪させてその一族全てを平民に叩き落すけどな」

「ふふ、ロイ様は甘いのやら、厳しいのやら……」

 祈りを終えたフィリアはロイに向き直ると、貴族然とした一礼を行った。

「それで、ロイ様自らここへ御出でになるということは、何か大事な御用でもああるのですか?」

「あれから3日経った。そろそろヘルブリスの調査結果が出ると思ってな」

「はい、死体を魔術にて調査させました。その結果、あのヘルブリスは元から魔族だったことが判明いたしました。最近は私の時のように、人間に魔族を産ませたり人間を魔族へ変えたりする所業が流行っていますが、彼は元より魔族だったとのこと」

「だが奴はこの国でポーンの位に就いていたはず、魔族の寿命は長くとも人間の倍程度、1からポーンに至るのは難しいはずだぞ?」

「変幻なる魔術にて姿を変え、ヘルブリス家に婿入りを果たしたのでしょう。元々のヘルブリス家は穏健な家系でしたので」

「信頼を1から勝ち取ってヘルブリス家に入り込んだわけか、それはそれでかなり辛抱強いやり方だ。それはそうと、だいぶ顔色が良くなったな」

 そう言って、ロイは聖女のフードは取った。強がりではなく、本当に顔色はよくなっている。栗色の髪は艶が出ていて、唇の血色も桃色で活力を取り戻しつつある。うちの女性陣にも引けを取らない美しい女性だ。

「週一のあれが無いだけで精神的にも解放されました。ロイ様、グランツと私の心を救っていただき、感謝しております」

「それは良かった。あ、そういえば後任の執政官は決まったのか?」

「後任はイザベラ・ベルモンドが選出されました。前に執政官を務めていたので適任かと思います」

「そうか、アンタはこの国の王といっても過言じゃないんだ。イザベラにも目を光らせるんだぞ?」

「ふふ、ご忠告感謝します。どちらかといえば、私が怒られてばかりですがね」

「さて、俺達の本来の任務を果たすとするか」

「……?」

 ロイは懐からフレミーが書いた親書を取り出し、聖女へ手渡した。その場で封を開けて中身を確認すると、聖女は次第に険しい顔になっていった。

「レグゼリア王国がグランツ方面の街や要塞に向けて、物資を運びこんでいる。それに伴って帝国で産出された鉄鉱石を大量に買い占めている。故に聖王国グランツは有事に備えて警戒されたし……そう書かれてます」

「おいおい、親書の内容を俺に聞かせて良かったのか?」

「構いません、あなたは我が国を救ってくださった恩人、この程度のことは問題にもなりません。それに、端の方にロイ様に見せても構わないと書かれてますから」

 そう言って聖女は俺に親書を見せてくる。確かに書かれているな、しかも鉄鉱石の売買金額やそれを運ぶ輸送費も事細かに書かれている。

 フレミーって……ちょっと神経質過ぎないか?

「てか、追加の指示まで書いてあるな……青の節が終わるまでグランツに留まってくれ、だと? 人使い荒くないか?」

「ロイ様、私からもお願いします。あなた様がいれば、たとえ戦争になったとしても乗り切れるような気がするのです」

 聖女が上気した顔で見上げてくる。その上目遣い……断りにくいじゃないか。まぁ、断る理由もないけどな。

 留まることを伝えると、聖女フィリアは少女みたいに喜んでいた。


Tips

フィリア・人物

片田舎に住んでいたが、ジョブが聖女となったことで聖王国に呼び出されて親子共々グランツへと渡った。
聖女として世界各国を訪問し、怪我人や呪いに苦しむ人々に奇跡を分け与えている。
死んでさえいなければ、即座に全快させる能力を持っている。

尚、貴族ではないため家名を有してはいないが、他国でいう王に当たる権力を持っている。
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