神秘と悪霊の魔"京"へようこそ!:鬼娘と契約して巫女になった俺が、悪霊退治の英雄(ヒロイン)になる!

戸﨑享

文字の大きさ
1 / 23
はじまり「鬼娘との出会いと巫女契約」

第1話 俺は鬼の彼女に心を奪われた

しおりを挟む
「助けて……!」

 誰かに向けた訳ではないだろう声を真に受けた馬鹿がこの俺だ。頭に紫の角が生えているのを見れば、子供でも彼女が何者なのか分かるだろうってのに。

 それを聞き入れ、彼女を殺そうとした厳つい軍の男に椅子を投げて妨害。その子の手を握って店を走って出ていってしまった。

 これは治安維持を妨害する明確な犯罪だ。体が勝手に動いてしまったなど、そんな言い訳通じない悪なる行為だった。

 姉貴と違ってよわよわな俺が、まるで映画のヒーローみたいに彼女を連れて逃げられる、……はずないとは分かってた。それでも俺はこうすると選んだのだ。

 その日、夜の京都は月が出ていなかった。そういう日は怪異が多く湧く。鬼がいるのもなんら不思議じゃないのだろう。

 街を覆う結界のせいで人間の目でもはっきりと視界がひらけていて、暗がりで身を隠すことすらも許されない。

 俺は彼女の手を引きただひたすらに走った。走って、息が切れて苦しくてもとにかく遠くへと走――。

 目の前。俺に簡単に追いついた軍服の男は刀を手に、俺に一言告げる。

「鬼を見てなお自ら首を突っ込むとは。気が狂った一般人もいたもんだな」

 だって『助けて』って言われたら助けるもんだろう。危険があっても困っている人に手を貸すべきだ。そんなの善い人間として常識だ。

 それと。実はとっさに体が動いたのはもう1つ理由があった。それはとても恥ずかしい理由かもだけど。

 あいつは少し遠くで刀を振ったのに、俺のことを綺麗に斬った。一瞬だけものすごく痛くて、その後、何も感じなくなってだんだんと眠くなって。

 仰向けに倒れて目を閉じる直前に見たのは、見間違いじゃなかった角。少し目を動かせば彼女が上からのぞき込むところが見えた。

「ありがとう、こんな私のために。……あなたを選びます。体、お借りしますね」

 何を言いたかったのかは分からなかった。

 ただ。彼女は鬼だと思うけど、それでも風で波打る清流のような美しい髪、曇りない眼差し、そこから伝わってくる生きることへの執念が見え、決して悪なる存在ではない、と、俺の心が訴える。

 『助けなければ一生後悔する』という思考が沸き上がってきたのは間違いない。

 彼女は俺の胸に手を当ててゆっくと熱を持つ何かを入れていく。その時確信したのだ。俺はこの鬼の少女を見た時、彼女に心を奪われてしまったのだと。





 死ぬ直前には走馬灯というものが見えるらしいが、俺が思い出していたのは胸糞悪い記憶ばかりだった。

 どうして死ぬ直前になってまでこんなことを

 反逆軍見習いの入隊試験を受けた時の話だったか。1つしか歳が違わないくらいの奴に侮辱された。
『夢見てんじゃねえよ。クソ雑魚。見てて苛々すんだよ』
『口悪い。まあ君も認めるべきだ。君の夢は叶わない。あ、そうだ。事務作業員なら大歓迎だよ。君は戦闘員よりもそっちの方がはるかに世のため人のためになるさ』

 ああ、こっちは高等学校の面接でだっけか?
『君は……だめだな。入学は認められない』
『なんでって言われても。だって君は入ってもすぐ死ぬよ。そう分かってて入れたくはないかな。君は人間失格の狂人だ。見て一目で分かる。己を捨てた方が幸せだ』

 いくら不合格だからって、そんなに言わなくてもいいじゃないか。

 俺には夢がある。諦めてなんていられるか! 必ずそれにふさわしい力を手に入れるんだ。

 俺はそう生きると決めたんだ。





 いつの間にか、まるで水面に浮かんでいるかのような感覚を得ていた。その一方で、目で見ていたのは感覚とは明らかに違った不思議な光景。

 生まれてこのかた、竹刀しか振ったことがないはずの俺が、真剣を華麗に扱っていた。

 軍の男を負傷させて撤退させて、ボロボロの社へと逃げ込んで、横になった。

 直後、視界が暗転する、他人に憑依しているみたいな不思議な夢だった気がする。

 急に体に力が入るようになって、睡眠から目覚める時と同じ感触を得た。

 体に痛みはない。なぜか胸が少しいつもより重い。

 目を開けてすぐに周りを見渡すと小学校の頃教科書で見た、倭の文化遺産である古民家の内装によく似ている。

 俺の頭が、弾力のある、枕とは違った何かを下敷きにしていた。

「あ……起きました?」

 なぜ、君はいつも俺を見下ろすのだろう。でも、鬼の彼女がいた。

「ゆっくり体を起こしてください。契約があるから、生命維持には問題ないと思いますが」

 生命維持と聞いて、目を閉じる前のことを鮮明に思い出す。完全に死んだと思ったのだが。

「ん、ああ、とりあえず、あれ――」

 声がおかしい。普段から声は高めだと言われるけどさすがに高すぎる気がする。胸の辺りが少し重く、体が前に引っ張られそうだ。

 しかし、それよりも。

「俺……寝ちゃってたのか?」

「はい。とても可愛らしい寝顔で、つい頂きたくなりそうなほど」

「ははは、怖い冗談言うんだね……君」

 ようやく落ち着いて彼女の姿を見ることができた気がする。

 やはり彼女は鬼だ。

 紫の角が頭から2本生えている。あながち血を頂くというのは嘘ではないかもしれない。冷や汗が背中を伝う。

 ただ一方で分かることは、自分より年下の15歳くらいの女の子だということ。

 人の顔はアシンメトリーだとよく言われるが、この子はシンメトリーにほぼ近い形で整っている。

 背も同年代の中では大きいとは言えない俺より小さく、幼さが半分残っていて美しいと可愛らしいの中間と言うべきか。くそ、女の子と付き合ったこともない俺は、的を射た言い方が分からない。

 ロングの髪を後ろ2つ結びにしている。黒紫の色は初めて見たが綺麗だなぁ。

 ともかくこんな美少女と今建物で2人、何も起こらないはずがなく。

 ところで今、彼女が立って、姿見の近くにおいてあった棚から手鏡を持ってきたんだけど、なんでだ?

「あなた、今の自分の姿、どうなってるか分かります?」

「いや……?」

「巻き込んでしまったあなたの命を救う為とは言え……ごめんなさい。私は、貴方を利用しました」

「そんなこと。助けてって言ってたじゃん」

「相手は剣を持った危ない人だったんですよ。いかに諸人を守る組織とはいえ、実際に凶器を振り回す人を相手に喧嘩を売るなんて。しかもそんなに強くないし」

「わ、悪かったな!」

 俺が弱いのは重々承知だ。でもしょうがないだろ。才能がないらしいって何度言われたことか。

 鏡に綺麗なショートヘアの金髪女子。瞳が黒。なんだ、まるで姉貴みたいな女の子がいるな。

 ――アレ? コレ、鏡ダヨネ?

「うわ……うわ!」

 たまに異性に変身するような創作物語を見た時は、良く胸のふくらみを確認する男がいて下衆だなと思ったが、実際なって見ると触って確かめるもんだな。

「ってそうじゃない! なんじゃこりゃ! これ、俺?」

 なんとも言えない顔で、彼女は頷いた。マジか。マジなのか。

「あんた、何をしたんだ」

「呪術による契約を交わしたのです。私はあなたの心臓を食べました」

「え……? じゃあここは天国」

「落ち着いてください。貴方の心臓を食べて大きな命のつながりを得た。霊体である私はあなたに憑依して体を修復し、今、失った心臓と体を私の呪術で補っています」

 え、いま俺、本当に心を奪われてるってことか!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

処理中です...