ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
6 / 1,117
旅立ち~オードゥス出立まで

冒険者生活初日の夜

しおりを挟む
冒険者生活初日の夜。昨日まで両親とテーブルを囲んで仲良く温かい夕食を食べていた頃だ。

普通の冒険者パーティであっても全方位真っ暗な森の中、どこからモンスターや野盗が出てくるか分からない所で食事、ましてや睡眠を取ろうとしても緊張状態が続く為とてもじゃないが気が休むことは無い。


そんな森の中でノアとジョーはというと

「「うんめぇ。」」

昼に捕った鹿肉の残りを炙って2人で食べていた。


あのパーティから別れて暫くした後薄暗くなって来た為、近くの林で野営をする事にした。
肉と鉄串の提供はノアが。
着火源の提供はジョーが行った。


ノアが焼いた肉をそのまま食べようとしたのでジョーが何かに気付き質問してきた。

「もしかして<サバイバル飯>持ってないかい?」


<サバイバル飯>…多少味付けが足りなくても割と美味しく食事が出来るスキル。


ノアは父親との訓練の時からスキルを発動していた為味付け自体をすっかり忘れていた。


反応を見て図星と判断したジョーが腰のポーチを空け、更に袋を取り中から岩塩を取り出す。

「これ持っとくだけでも劇的に食事の質が上がるぞ?」

手渡された岩塩を焼いた肉の上にかざし、別の鉄串で軽く削り、振り掛ける。
ジョーさんに岩塩を返し、肉を口に運ぶ。それを確認しジョーさんも口に運ぶ。


「「うんめぇ。」」

そして冒頭に戻る。


「何か家で使う塩と違いますね。塩っ気あまり無いと言うか…」

「お、分かるか?その土地その土地で結構味や色が変わるもんだよ?色々国を回るなら試してみると良い。」


その後はお互い無言で食べ続けた。鹿肉は脂身が少ないのでもたれないから割と好きだったりする。余裕があればまた捕ろう。


食事が終わり一息ついた所で
「一応スキル使ってますんで寝てても大丈夫ですよ。」

「…あまり詮索つもりは無いけど一体いくつスキル持ってるんだ…」

(普通の冒険者がどれ位持ってるか知らないが自分の適正は特殊なのでなるべく取っただけなんだけどね…) 


「まぁでもお言葉に甘えさせて貰うよ。」


ジョーさんは近くの木に背中を預けて腕組みをして座り、ノアも胡座をかいた姿勢で腕組みをし前傾になった所で2人共動きを止める。


「ノア君。」
「1人ですね。」


遠目からは2人が寝てると思わせる為動きを止め、目を瞑ったまま小声で話す。

「大体ここから後ろに30歩位の所です。」
ノアは腕組みをした体勢のまま懐から鉄串を持つ。かいていた胡座を解き、右足を近くの岩に掛ける。

「10歩位まで来たら仕掛けよう。それまでは様子見だ。」
ジョーは腕組みをした状態で懐から鎌の様なナイフを出し、手の中に隠し持つ。


ゆっくりではあるが真っ直ぐこちらに向かってくる。微かに落ち葉を踏む音が聞こえる。


2~3歩歩いては止まりこちらを観察している。
完全に寝ているかどうか見ているのだろう。

後2歩


後1歩


ここだ。

「あの…」

あちらが何かを話し掛けるのと2人が跳ね起きるのは同時だった。

ノアは掛けていた足に力を入れ岩を押す。足を捻って直ぐ様後ろに方向を変え、かなり前傾姿勢な状態で相手まで駆け出す。

ジョーは背中を預けていた木の幹に手を掛け引っ張り上げる様に体を起こす。距離で言えばノアの方が相手に近いので直ぐ援護に向かえる様にノアの後方数歩分後ろに追随する。

相手は2人が跳ね起きたことに対応できず完全に動きが止まっていた。

手に何も持っていないことを確認したノアは持っていた鉄串の先端を相手の喉元に突き付け、近くの木に押し当てて動きを封じる。


「誰だ。」

冷めた声で相手に問いかける。が


「…あ、怪しい者じゃ、ありません…」


先程の3人パーティの弓持ち女性が完全に怯えた顔で返答してきた。
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった

海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。 ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。 そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。 主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。 ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。 それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。 ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...