ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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旅立ち~オードゥス出立まで

弓持ちの女性

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川から戻ると、丁度目が覚めたのだろう弓持ちの女性が起き上がった状態でボーッと辺りを見回している。


「おはよう!お嬢ちゃん。良く眠れたかい?」

「あ、おはようございます…昨日は色々とすいませんでした…」

「こちらもすいませんでした…スキルをもっと上達しておけば判断できたのに…」


父親曰く、感知系スキルを上達させれば相手の判別、感情等も分かるらしい。


焚き火に薪をくべ、火勢を上げる。ノアが腰のポーチから鉄串を数本取り出す。その際弓持ちの女性は「ひぃ」っと声を漏らす。

(そういえば昨日コレ喉に突き付けたんだっけ…)

等と考えながらも作業の手は止めない。先程捕った鹿肉を切り取り鉄串に刺し、焚き火から少し離して立てる。切り取る、刺す、立てる、時折ジョーがひっくり返す。


(肉焼きながら考える事じゃないけど今更ながら朝から肉って重くないかな…)


チラリと弓持ちの顔を見る、が杞憂だったらしい。


目をキラキラさせ口を半開きにして焼ける肉を凝視していた。
遠火で炙られ、滴る肉汁が垂れる度に目のキラキラが増している気がする…

肉の焼き加減を確認したが中まで火が通るのはもう少し掛かるだろう。


「焼けるまでもう少し掛かるのでそれまで自己紹介しませんか?昨日から冒険者始めましたノア、と言います。訳あって1人で旅してます。」


ノアの自己紹介を聞き、肉を眺めていた弓持ちがハッと意識を取り戻す。

「あ、私はクロラと言います。ホントであれば一昨年から冒険者になるつもりでしたが弟達の面倒が大変で…ちなみに一緒にいた2人は同じ村の者…でした。見栄っ張りで率先して前に出るけど録に仕事しないから邪魔で邪魔で…昨日解散出来て清々しました。」

(この話ぶりからしても彼等が村でどんな立ち位置にいるか察せられるな…)

チラリと肉の様子を確認しながら考える。

「あれ?そういえば1人でって…こちらの方は…パーティでは?」

「ん?ああ私は商人をやってるジョーだ。昨日たまたま狩りをしてたノア君を見掛けてね。皮とか素材を買い取らせて貰ってるんだ。そこの背負子にある素材は全部ノア君が捕った物だよ。」

ジョーさんが背後にある背負子を指差す。クロラさんがそれを見て「え」と呟く。


「あれ全部ですか!?」
「そ。あれ全部。狩りもそうだけど解体も丁寧だから買い取り価格は弾ませて貰ってる。」


(こういう話を聞いてると何かむず痒くなってくる…あとやっぱり買い取り金額色つけてくれてたんだな…)

肉に鉄串を刺し、透明な脂を確認。
会話を切り替える様に肉をクロラさんに差し出す。

「はい。肉焼けましたよ。」

「お先に頂いて良いんですか?」


「お腹空いてるんでしょう?構わず好きなだけどうぞ。」

何せ肉はまだまだある。

「好きなだけ…」

「ほら、コレ振ると良い。」

と肉に岩塩を振り掛けるジョーさん

「あ、ありがとうございます。で、では頂きまふもも!」

食い気味に食らい付くクロラさん。反応を見るに気に入ってくれたようだ。
さて、ジョーさんにも渡して自分も食べるか、と思った時ふとクロラさんの方を見ると

(あれ?もう3本目?)

「ふもも!」

1本目の時と変わらない早さで肉を食べ続けるクロラさん。ジョーさんと顔を見合わせる。

「これは焼きに徹しないとマズイぞ。」


暫くはジョーさんと2人で肉を切る、串に刺す、焼く作業が続いた。結局2人が肉を食べれる様になったのは11本目の肉を焼いた辺りからだった。


「ふももぉ!」(5本目)
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