ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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旅立ち~オードゥス出立まで

全力疾走

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盛大な砂埃を上げ、全力疾走で1階への坂を下るノア。視界の先では先程下りていった3人パーティが見える。

急速に近付く自分に慌てているので 

「そのままで大丈夫です!」

と声を掛け<壁走り>を発動、そのままの速度で壁を走りパーティの頭上を飛び越える。

「う   そ     は       ゃ         」

神官(?)の声が流れていく。あっという間に1階に到達。依然速度は落とさない。
周囲には敵の反応は無し。

速度を保ったままで森に突入。<地図化>を発動し2階への入口の位置を確認。
<縦横無尽>を発動、小さな木を飛び越え、出っ張った枝は滑り込んで回避。

前方に4人のパーティを視界に捉える。
後ろの1人が急速に近付く自分を確認。

「うわ!モン…え!?人?」

残りの3人も自分に気付くが反応出来ずにいるので

ズドッ!

踏み込んで頭上の木の枝に飛び移り枝伝いに移動する。
下では凄まじい速度で樹上を移動するノアに驚きの声が上がっている。 
進行方向にパーティがいないのを確認して樹上から下りる。

(そろそろ池だな…試してみるか…)

そう考えて速度を保ったまま池の畔まで来ると

ズドン!

おもいっきり踏み込み池を飛び越える。滑空する時周囲を見ると2組のパーティが確認できた。皆ノアを呆然と見つめている。

(あ、少し足りないな…)

池まであと少しだが僅かに飛距離が足りなかった様だ。
<水面渡り>を発動し、水面を2歩程駆ける。


<水面渡り>…水面を1歩だけ歩ける(初期)。上達すると歩ける歩数が増える。


「何今の…」


遠くで困惑の声が聞こえるが急いでるので無視、無視。
2階への坂が見えたのでそのまま突入。
坂の下を見るとまたパーティが…バッツとガッツがいる。声を掛けるのも面倒なので<忍び足>と<壁走り>を発動し頭上を駆け抜ける。


「「え!?」」


さて、2階に着いたので3階への入り口の位置を確認。
前方にウルフが5頭いる。こちらにはまだ気付いて無いようなので<忍び足>と<木登り上手>を発動し早めに樹上に上がる。
どうやら所々に反応があるのでこのまま樹上を枝伝いに移動、もちろん気付かれない為に<忍び足>は発動しておく。

上手いこと3階への入口近くまで来れたが入口すぐ近くに猪が1頭いる様だ。
樹上から飛び上がった瞬間に矢筒から矢を1本取り出し猪の背後の草むらに投げる。

猪が音に反応している隙に着地し入口に入る。<忍び足>のお陰で気付かれていないようだ。

坂を下り3階に出る。4階への入口の位置を確認した所でいつもとの体調の違いに気付く。

(これだけ走ってるのに疲れない所か力が湧いてくる…さっき食べた『動く茸』のお陰かな。)

何て考えていると前方に2人パーティがいるのを確認したので邪魔にならない様にと樹上に登ろうとしたが何か様子がおかしい。


「ねぇ!大丈夫!?ねぇ!ねぇ!?」

女性の剣士と男の剣士の2人パーティの様だが男の方が膝をついて苦しんでいる様だ。

(あー2人の周りに蛇の反応があるな…しかも1匹はまだ生きてるが女性の方は気付いてないようだな。仕方ない…)


「ルド!大丈夫?ねぇったら!?」

シュドッ!

女性剣士の近くに矢が突き刺さる、女性剣士は慌てて戦闘態勢に入るがそこにノアが降り立つ。


「怪しい者じゃない、同じ冒険者だ。恐らく毒蛇に噛まれたんじゃないか?」

女性剣士は突然現れた自分に驚き声が出せない様だったが何とか頷いて応える。
ノアは男性剣士の方を確認し、意識はあるようだが苦しそうにしている。
ノアは腰のポーチを開け、毒消しを取り出す。
男性剣士に毒消しを見せ

「あなたは毒蛇に噛まれて毒状態に陥っています。自分が持ってるのは毒消しです。完全に治るかは分かりませんがそれでも良ければ口を開けて下さい。」

男性剣士は苦しそうに頷き口を開ける。ノアは毒消しを入れ、男性剣士がゆっくり嚥下するのを確認する。

飲み込んでから少しして男性剣士の顔色が良くなり呼吸も落ち着いて来た。ただまだ少しぐったりしている。

「このまま少し安静にしてれば毒状態は治るでしょう。」


「あ、ありがとうございます。」

ノアは腰のポーチを開け毒消しを2つと回復玉を1つ取り出す女性剣士に渡す。

「一応2人分の毒消しと回復玉…飴みたいに口の中に含んでいれば徐々に体力が回復していきますので彼の意識が戻ったらあげて下さい。」


と話していると男性剣士が目を覚ました。

「…す、まない…助か…た。」
「ル、ルド…あぁ、良かった。ありがとうございます。」


「目を覚ましましたか、さぁ先程の物を…」

言われて女性剣士が男性剣士の口に回復玉を入れると仄かに体が光る。回復効果がしっかり現れている様だ。

「もうちょっと待てば動ける様になるだろう。それまでは自分が周囲を見張っておくから安心してく…ったくこんな時に…」


ノアは自分達がいる位置の前方からウルフが2頭やってくるのを感知した。
女性剣士も視界にウルフを捉えた様なので戦闘態勢に入ろうとしたのをノアが制する。

背中の弓と矢筒から矢を取り出し直ぐに矢を番え<集中>を発動する。

ボッ!  ボッ!

矢が向かってくるウルフの頭部に突き刺さり倒れたウルフは起き上がってくる事は無かった。


呆然としている女性剣士にノアが話し掛ける。


「自分は少し急いでるのであのウルフの事は好きにして貰って構わない。彼も無事起きた様ですしね。」

女性剣士がノアに言われ背後を見ると男性剣士が立ち上がった所だった。


「ルド…良かった。あの、ありが…あれ?」


男性剣士の無事を確認しノアに再度礼を言おうと女性剣士が振り返った時にはもうそこにノアの姿はなかった。
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