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旅立ち~オードゥス出立まで
詰問されるノア
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数人の商人や露店主に囲まれ詰問されるノア。
手には鉄串が刺さった苦万蜂。
露店の店主に説明する為天幕に一度戻りライルから一匹持って来たのだが近くにいた商人達に見られてしまった。
「く、苦万蜂を一撃で!?君、名は何と言う!」
「素材の状態も申し分無い!在庫!在庫はまだあるのか!?」
「頼む!未解体で幾つか頂けないだろうか!?」
「2万!2万出そう!」
中心にいるノアはうんざり顔である。クロラは鉄壁の商人の壁に阻まれ止めに入れずにいる。
「はーい!そこまで!彼が困っているじゃないか!」
喧騒の中でも通る声で1人の男性が割って入る。
「あ、ジョーさん。」
ノアがジョーの名前を呼ぶと周囲の商人が色めき立つ。
「え!?ジョーってあの王都にあるコベルト商会のジョーさんですか?」
「ええ、よくご存じで。」
「という事は彼は専属の?」
「いえいえ。少しの間付き合いがあったので仲良くして貰ってるだけですよ。」
「そう言う事でしたか。迷惑をお掛けして申し訳ありませんでは我々は失礼致しましょう。」
「またの御利用をお待ちしております。」
先程まであれだけ騒がしく詰問されてたノアが解放される。
「た、助かりましたジョーさん。今までどちらに?」
「街で色々商談とか依頼とか請けててね、そしたらダンジョン内で異常が発生したって聞いて従業員を呼びに行ってたんだ。
商売の香りがしたからね。」
そんな会話をしていると先程ペアリングを買った露店の店主がやって来た。
「おぅい!お二人さんペアリング出来上がったよ。さっきはすまなかったな俺が発端で面倒事になった様で。しかもジョーさんの知り合いだったとは…」
「『苦万蜂の眼石』を使ったペアリングですか。腕輪の装飾も魔力の通りを阻害しないよう施されていて相変わらず仕事が丁寧ですねガリルさん。」
「いやぁ、こんなしがない露店商の名前を知ってるたぁ嬉しいねぇ。」
「あなたの作る品は完成後の品質が高いので付与術が掛け易いと王都でも人気でしてね、近々色んな所から引き抜きの者がやって来ると予想されます。
それに先んじてもし宜しければ私共と商談をと思いまして。」
一緒に旅をしていた時の印象とは全く違うジョーの立ち振舞いに呆然とするノアとクロラ。
「こんな爺の作る品で良ければこの話に乗らしていただきます。」
「ではこちらの方でお話を。」
そう言ってノアとクロラの方を向き軽く手を振って別の天幕に露店主と入って行く。
「ジョーさんって王都の商人さんだったんだね…(クロラ)」
「しかも商人達の反応からしてかなり有名みたいだね。(ノア)」
2人が感想を言い終わった所で露店主から渡されたペアリングに目をやる。
「とりあえず買った事ですし着けてみましょう。」
「う、うん。」
カチャ カチャリ
2人共左腕に装着し、少し腕を振り動きに阻害がないか確認をする。
金属の腕輪に銀の装飾が施されており、そこに琥珀色の『苦万蜂の眼石』がはめ込まれている。派手さは無いものの落ち着きのある色合いは大人しめの彼女によく合っている。
クロラは腕にはめたペアリングを眺めたり、チラチラとノアを見ては嬉しそうにしている。
その後も2人で露店をまわって色々なモノを見てまわる。
中でも目を引いたのは『<空間魔法>を付与された鞄』だ。
要はダンジョン入口で借りれる鞄である。王都では『アイテムボックス』と言われてるらしい。
露店に並ぶ『アイテムボックス』は10枠~最大100枠の物がある。
10枠は10万ガル、100枠は100万ガルで販売されている。
「わ~…100万ガルだって、凄いねノア君。ノア君?」
「うぬぬぬぬ…」
ノアは本気で悩んでいた。
今はまだ街で生活しているから良いが、今後1人で冒険していく上で『荷物』の問題はどうしても出てくる。
パーティであれば分散出来るから良いが1人だと全部持つ、当たり前の話だ。
現在露店の前にはノアの他にいかにも金を持ってそうな商人が1人、露店の従業員はその商人にピタリと付いている。
そりゃそうか、とノアが思っていると50代位の男性従業員が近付く。
「かなりお悩みの様ですね?」
「ええ…1人で旅する予定なので…出来れば入手したいですね…」
ノアの発言を聞き思案する男性。
「何かお持ちの素材、商品相当の物等があればご相談させて貰いますが。」
男性に言われてノアはハッとなる。
男性とクロラにその場に待って貰い天幕に向かう。
中に入るとエメラルダが状況を見にやって来ていた。
「あの、エメラルダさん。僕が討伐した鎧蜂って一応僕の自由に使っても良いんですよね?」
「え?ええ、ノア様の所有物ですから…何かにお使いになられるのですか?」
「そこの露店で売っていたアイテムボックスがどうしても欲しいので交渉材料に使おうかと…」
「勿論構いません。一応念の為私と…そこの隊員の方、一緒に来て貰って良いですか?」
エメラルダから声を掛けられた隊員と同行し露店まで向かう。
「クロラさん、店員さん。すいませんお待たせして。」
「いえいえ、構いませんよ…おや?エメラルダギルド長殿と王都調査隊員の方が一緒とは一体…」
「あらバラガスさんじゃないですか、お久しぶりです。
こちらのノア様がアイテムボックスを買う、と仰られたので念の為に着いてきたんですよ。」
「なるほど、よく粗悪な品を騙されて買う、なんて事ありますからね。」
「ノア様、こちらの方はこの街のダンジョンにアイテムボックスを提供して下さったバラガスさんです。」
「新人冒険者のノアです。いつもアイテムボックスにはお世話になっています。」
「これはご丁寧に、それで何か素材をお持ちになられたのでしょうか?」
「はい、正直言うと自分では価値がイマイチ分からないのですが…」
そう言いながら鞄からぼこぼこに殴打された鎧蜂を取り出す。
「よっ!鎧蜂!?」
バラガスは取り出されたモノを見て思わず目玉をひん剥く。
周囲にいた商人もノアが取り出した鎧蜂に騒然となる。
「鎧蜂だと!?」
「美しい…」
「見、見えない…退いてくれ!」
「何だあの殴打痕は?」
等色々言っている。バラガスも言葉を失っていた。
「すいません、ぼこぼこで見た目は悪いですけどこちらはどうでしょうか?」
そう言ってバラガスにずいっと1匹まるごと渡そうとするが
「1匹まるごと!?いやいや!いやいやいやいや!これではこちらが貰い過ぎです…腹部の甲殻を貰えれば十分です。」
バラガスの反応を見て困惑するノアに隊員が説明する。
「鎧蜂の甲殻はね金属重鎧に匹敵する防御性能を持ってるんだ。
それに腹部の曲線を生かした装備を作るとモンスターの攻撃や魔法を受け流す確率が上がるし、自動的に<威力軽減>が付いたりする。
中級~上級冒険者なら大金払っても欲しがるよ。」
隊員からの説明を「ほへ~」とした顔で聞くノアとクロラ。隊員が説明している間もバラガスは目をキラキラさせて鎧蜂を観察している。
「…と言う事ですがバラガスさん。」
「え?あ!はい、何でしょう。」
「こちらの素材を交渉材料としてお願いしても良いでしょうか?」
「むしろこちらの方からお願いします。」
手には鉄串が刺さった苦万蜂。
露店の店主に説明する為天幕に一度戻りライルから一匹持って来たのだが近くにいた商人達に見られてしまった。
「く、苦万蜂を一撃で!?君、名は何と言う!」
「素材の状態も申し分無い!在庫!在庫はまだあるのか!?」
「頼む!未解体で幾つか頂けないだろうか!?」
「2万!2万出そう!」
中心にいるノアはうんざり顔である。クロラは鉄壁の商人の壁に阻まれ止めに入れずにいる。
「はーい!そこまで!彼が困っているじゃないか!」
喧騒の中でも通る声で1人の男性が割って入る。
「あ、ジョーさん。」
ノアがジョーの名前を呼ぶと周囲の商人が色めき立つ。
「え!?ジョーってあの王都にあるコベルト商会のジョーさんですか?」
「ええ、よくご存じで。」
「という事は彼は専属の?」
「いえいえ。少しの間付き合いがあったので仲良くして貰ってるだけですよ。」
「そう言う事でしたか。迷惑をお掛けして申し訳ありませんでは我々は失礼致しましょう。」
「またの御利用をお待ちしております。」
先程まであれだけ騒がしく詰問されてたノアが解放される。
「た、助かりましたジョーさん。今までどちらに?」
「街で色々商談とか依頼とか請けててね、そしたらダンジョン内で異常が発生したって聞いて従業員を呼びに行ってたんだ。
商売の香りがしたからね。」
そんな会話をしていると先程ペアリングを買った露店の店主がやって来た。
「おぅい!お二人さんペアリング出来上がったよ。さっきはすまなかったな俺が発端で面倒事になった様で。しかもジョーさんの知り合いだったとは…」
「『苦万蜂の眼石』を使ったペアリングですか。腕輪の装飾も魔力の通りを阻害しないよう施されていて相変わらず仕事が丁寧ですねガリルさん。」
「いやぁ、こんなしがない露店商の名前を知ってるたぁ嬉しいねぇ。」
「あなたの作る品は完成後の品質が高いので付与術が掛け易いと王都でも人気でしてね、近々色んな所から引き抜きの者がやって来ると予想されます。
それに先んじてもし宜しければ私共と商談をと思いまして。」
一緒に旅をしていた時の印象とは全く違うジョーの立ち振舞いに呆然とするノアとクロラ。
「こんな爺の作る品で良ければこの話に乗らしていただきます。」
「ではこちらの方でお話を。」
そう言ってノアとクロラの方を向き軽く手を振って別の天幕に露店主と入って行く。
「ジョーさんって王都の商人さんだったんだね…(クロラ)」
「しかも商人達の反応からしてかなり有名みたいだね。(ノア)」
2人が感想を言い終わった所で露店主から渡されたペアリングに目をやる。
「とりあえず買った事ですし着けてみましょう。」
「う、うん。」
カチャ カチャリ
2人共左腕に装着し、少し腕を振り動きに阻害がないか確認をする。
金属の腕輪に銀の装飾が施されており、そこに琥珀色の『苦万蜂の眼石』がはめ込まれている。派手さは無いものの落ち着きのある色合いは大人しめの彼女によく合っている。
クロラは腕にはめたペアリングを眺めたり、チラチラとノアを見ては嬉しそうにしている。
その後も2人で露店をまわって色々なモノを見てまわる。
中でも目を引いたのは『<空間魔法>を付与された鞄』だ。
要はダンジョン入口で借りれる鞄である。王都では『アイテムボックス』と言われてるらしい。
露店に並ぶ『アイテムボックス』は10枠~最大100枠の物がある。
10枠は10万ガル、100枠は100万ガルで販売されている。
「わ~…100万ガルだって、凄いねノア君。ノア君?」
「うぬぬぬぬ…」
ノアは本気で悩んでいた。
今はまだ街で生活しているから良いが、今後1人で冒険していく上で『荷物』の問題はどうしても出てくる。
パーティであれば分散出来るから良いが1人だと全部持つ、当たり前の話だ。
現在露店の前にはノアの他にいかにも金を持ってそうな商人が1人、露店の従業員はその商人にピタリと付いている。
そりゃそうか、とノアが思っていると50代位の男性従業員が近付く。
「かなりお悩みの様ですね?」
「ええ…1人で旅する予定なので…出来れば入手したいですね…」
ノアの発言を聞き思案する男性。
「何かお持ちの素材、商品相当の物等があればご相談させて貰いますが。」
男性に言われてノアはハッとなる。
男性とクロラにその場に待って貰い天幕に向かう。
中に入るとエメラルダが状況を見にやって来ていた。
「あの、エメラルダさん。僕が討伐した鎧蜂って一応僕の自由に使っても良いんですよね?」
「え?ええ、ノア様の所有物ですから…何かにお使いになられるのですか?」
「そこの露店で売っていたアイテムボックスがどうしても欲しいので交渉材料に使おうかと…」
「勿論構いません。一応念の為私と…そこの隊員の方、一緒に来て貰って良いですか?」
エメラルダから声を掛けられた隊員と同行し露店まで向かう。
「クロラさん、店員さん。すいませんお待たせして。」
「いえいえ、構いませんよ…おや?エメラルダギルド長殿と王都調査隊員の方が一緒とは一体…」
「あらバラガスさんじゃないですか、お久しぶりです。
こちらのノア様がアイテムボックスを買う、と仰られたので念の為に着いてきたんですよ。」
「なるほど、よく粗悪な品を騙されて買う、なんて事ありますからね。」
「ノア様、こちらの方はこの街のダンジョンにアイテムボックスを提供して下さったバラガスさんです。」
「新人冒険者のノアです。いつもアイテムボックスにはお世話になっています。」
「これはご丁寧に、それで何か素材をお持ちになられたのでしょうか?」
「はい、正直言うと自分では価値がイマイチ分からないのですが…」
そう言いながら鞄からぼこぼこに殴打された鎧蜂を取り出す。
「よっ!鎧蜂!?」
バラガスは取り出されたモノを見て思わず目玉をひん剥く。
周囲にいた商人もノアが取り出した鎧蜂に騒然となる。
「鎧蜂だと!?」
「美しい…」
「見、見えない…退いてくれ!」
「何だあの殴打痕は?」
等色々言っている。バラガスも言葉を失っていた。
「すいません、ぼこぼこで見た目は悪いですけどこちらはどうでしょうか?」
そう言ってバラガスにずいっと1匹まるごと渡そうとするが
「1匹まるごと!?いやいや!いやいやいやいや!これではこちらが貰い過ぎです…腹部の甲殻を貰えれば十分です。」
バラガスの反応を見て困惑するノアに隊員が説明する。
「鎧蜂の甲殻はね金属重鎧に匹敵する防御性能を持ってるんだ。
それに腹部の曲線を生かした装備を作るとモンスターの攻撃や魔法を受け流す確率が上がるし、自動的に<威力軽減>が付いたりする。
中級~上級冒険者なら大金払っても欲しがるよ。」
隊員からの説明を「ほへ~」とした顔で聞くノアとクロラ。隊員が説明している間もバラガスは目をキラキラさせて鎧蜂を観察している。
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