ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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旅立ち~オードゥス出立まで

こりゃ戦争だわ

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「確かにこりゃ戦争だわ。」


現在ノア、ジェイルのパーティ、ルドルフパーティ、大剣持ちパーティの面々は街の門の外に建てられた天幕の裏にいる。
何故裏にいるのかと言うと表では200人以上に及ぶ大小問わず商人が犇めきあっていた。

「苦万蜂の翅、状態にもよるが3000出そう。」
「3500!3500でどうだ!」
「宝石商、彫金部門担当の者だが苦万蜂の眼の状態を確認したい。」
「おい!毒袋は丁重に扱えよ!」
「麻痺睡眠毒の検体あるかい?研究用に最低8は貰いたい。10万でどうだい?」


ちなみに裏では調査隊員達が腑分け作業に没頭している。何故かバラスとアルキラーも参加している。ベルドラッドは回復早々中層へ向かった。


「しかし飛ぶように売れていくな…」
「ねー。あれだけの数流石に売れ残ると思ったけど…」
「まさか脚が食用で売れるなんて…ホント用途は色々あるものね…クロラ、お腹空いてない?」
「な、何でその話から私に話を…?ああ、ポーラちゃん、天幕出てどこ行くの!?」

ジェイル、ロゼ、ポーラ、クロラの順に話すいつもの流れだ。
表は商人だけでなく商人に売り込む為に露店商が建ち並んだりと戦争兼お祭り状態となっていた。



「苦万蜂もあと240匹残ってるからまだまだ掛かりそうだな…」

今回ノアが討伐した苦万蜂の数は全部で302匹に上る。
天幕の裏手で腑分けが終わった所にライルが新たに苦万蜂を配ると言う作業が続く。

当初討伐数を聞いた隊員達は何かを覚悟した様な表情をした。
意味は直ぐに理解した。
1匹腑分けするのに最低でも1人10分は掛かる。隊員と職員合わせて20人程なので最低でも2時間以上掛かる。



頬杖をついてノアがぼやいていると大剣持ちのパーティが近付いて来た。

「ノア、と言ったな。昨日はすまなかった。」

そう言い謝罪する大剣持ちの男。

「ちょっと待って、待って。別に謝られる様な事されてないぞ?」

突然謝られた事に焦るノア。

「昨日あの苦万蜂の報告をギルドにした時俺が馬鹿にする様な発言をしただろう?
あの時は知らなかったがルドの命の恩人だと聞いてな、ずっと謝罪の機会を窺っていた。」

「その事か、気にしなくていいぞ?同じく勘違いしてたパーティ知ってるしね。」

そう言いニタリと笑いルドルフとミラの方を見る。2人共こちらからの目線を外す。

「それよりも2人の知り合いだった事に驚きだったぞ。」

「実は俺達同じ村の出でね、本当は4人でパーティなんだ。あの時は同じ組み合わせ同士でダンジョンに潜って剣の修練してたんだ。」


ルドルフが大剣持ちとの関係性を話す。

(へー、全員【剣士】のパーティとは珍しい。)

「俺はバルドロ、こっちは俺の彼女のガルベラと言う。武器は大剣だ。」


「うちの彼が失礼したね。今紹介にあったがあたしはガルベラ、ルドとミラにスキル教えてくれたんだってね、ありがとさん。さっきの闘い見せて貰ったが大分強いね。今度模擬戦でもやろーよ。」

「ええ、こちらこそよろしく。」

バルドロ、ガルベラと握手を交わす。

紹介も一段落したが未だに表も裏も戦争状態だ。

「ちょっと外出ていこうかな…ク、クロラさんもどうですか?」


「え!?…う、うん…行こ、かな…」

ノアの後をとてて、と追いかけ天幕を出るクロラ。
2人が表に出たのを確認し残った面々が話し出す。

「なぁ、あの2人って付き合ってんの?(ガルベラ)」
「昨日からだって。(ミラ)」
「初々しい感じが良いねぇ。昔のあたし達みたいじゃないか。(ガルベラ)」
「お、おいよせよ(バルドロ)」
「でも見てて飽きないんだよねー、応援したいけど茶化したい感じがドバドバ来るんだよね。(ロゼ)」
「最近クロラいじりの時イキイキしてるものな。(ジェイル)」
「でも憧れちゃうなー。あんな甘酸っぱい恋愛ジェイルもしてみたいと思わない?(ロゼ)」
「憧れはあるが相手がいないしな(ジェイル)」
「同じーく(ロゼ)」
「え、あんたらはそう言う仲じゃないのかい?(ガルベラ)」



「え、いや…いや、私はジェイルとはそーゆー仲じゃ…ねぇ?(ロゼ)」
「ん?え、ああ…同郷ではあるがロゼの事をそう言う目で見た事は…無いこともない…かな…(ジェイル)」


「おやぁ?(ロゼ、ジェイル以外の一同)」



茶化しの新しい標的が決まった事など知らないノアとクロラは商人達の人混みの中にいた。

「いやー、人多いですね。たまに父さんと一緒に市場行ったりしましたがその時よりも混雑してますよ。」


「私もここまで賑わってる所来るのは初めてかも…きゃっ!」

クロラが近くにいた人と接触した様だ。
すかさず手を引き人通りの割と少ない外側に連れて行き、隣に並ぶ。

「これで大丈夫ですね。」
「ご、ごめんね。周り見てなかったね。」
「僕も浮かれてて周り見えてませんでした。」
「人多いからしょうがないよ。」
「あー、いやそう言う意味でなく…」
「え?あ…」

そんなやり取りをしていると近くの露店から声が掛かる。

「そこの仲睦まじいお二人さん!王都で流行ってるペアリングはいかが?」


呼ばれた仲睦まじい2人は呼び込んだ露店の店主の所に向かう。

「今日質の高い眼が買えたからね、先着3組までだけどお安く提供してる所なんだ。腕輪タイプなんだけどどうだい?」

「じゃあすいません1組下さい。」

「おう。あ、すまない1万6000ガルになるけど大丈夫かい?」

「ええ、構いませんよ。」
「ノ、ノア君大丈夫なの!?」
「今日食事に誘ったのは僕ですけど色々あって中止になっちゃいましたしこれ位させて下さい。」

「嬢ちゃん良い男捕まえたな。」

「…むしろ掴まれました。」

その後2人の腕の寸法を測る店主


「そういえば質の高い低いって何ですか?」

ノアが店主に質問する。

「まぁ冒険者にとっては稼ぎに繋がるから教えとくが分かりやすいのがまず傷の有無だな。
この素材、『苦万蜂の眼石』ってんだけどコイツが生きてるうちは眼が大分柔らかいんだ。
だからなるべく傷付けない様に討伐して貰いたいんだがコイツの毒が厄介でね。
皆そんな事お構い無しに矢射ったり、魔法で倒したりしてここまで綺麗な状態の物はまずお目にかかれない。」

店主が事細かに説明してくれる。クロラもしっかり耳を傾けて聞いている。

「次なんだが、これは少し難しくてね。
魔力が宿ってるかどうかなんだ。
眼とか体内等魔力が集中している所には魔力が宿りやすくてな、この『苦万蜂の眼石』も魔力が宿った『苦万蜂の魔眼石』になると更に金額が跳ね上がるんだが、倒し方を工夫しないとなかなか採れないんだ。」

「その方法というのは?」

「一言で言えば、見付けたら攻撃してくる前に一撃で仕留める、だな。
上位種や巨体なら魔力を体内に溜め込めるんだが苦万蜂みたく小さな個体だと戦ったりすると直ぐ体内の魔力まで使っちまうんだ。」


ノアとクロラがなるほどと頷く。

「だから苦万蜂の討伐自体は新人冒険者でも出来るんだが『苦万蜂の魔眼石』の採取依頼となると中級冒険者に依頼しないといけない。」

「へー、じゃあノア君がやったみたいに一撃で仕留めないとダメなんだね。」
「そう言う事になるね。」


2人の会話を聞いた店主はうんうん頷き


「ん?ちょっと待ってくれ。今何て言った?」
    
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