ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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旅立ち~オードゥス出立まで

咆哮搏撃

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バトルベアは咆哮搏撃し、目の前にいるノアに強烈な振り下ろしを繰り出す。


グォオオオアアア!           ズズン!


【鎧袖一贖】を発動したノアはそれを全て腕で受け止める。
あまりの威力に足元の石畳が陥没する。

 「はっはー!良い威力だ、こちらからも行くぞ!」

バトルベアらの腕を弾き、更に石畳を陥没させる程の威力で踏み込みんで目の前のバトルベアの顔面をぶん殴る。 


ゴギン!            ズズゥン!


鼻先を砕く様な感覚が手に伝わり、そのままバトルベアは後ろに倒れる。

右側にいたバトルベアがノアの着地を狙い大木の様な右腕を振り下ろしてきた。
ノアはこれを僅かに体をずらして避ける。

腕が激突すると石畳が大きく抉れ、飛び散った石片が弾丸の様だ。

「威力はあるが隙がでかいよ、っと!」

突き刺さった右腕の関節部を目掛け強烈な蹴りを蹴りを繰り出す。


ボギン!               グゴァオオオアアアッ!


肘が折れ、自重を支えられなくなったバトルベアは倒れ込む。
その際に頭が下がったのでついでに顎をぶん殴ると骨が砕ける感覚があった。

背後から殺気を感じたのでしゃがむと頭上を凄まじい速さで腕が通過する。
しゃがんだ状態で反転しバトルベアの側面に向かって飛び込み、強烈な脚払いを繰り出す。
仰向けで倒れ、がら空きになったバトルベアの喉に<渾身>を乗せた拳を打ち込む。

少し離れた所からでも「グシャッ」という音が聞こえ、バトルベアがのたうち回る。


初めに殴り倒したバトルベアが起き上がり、突進を仕掛けてくる。

ノアは真正面で迎え撃ち、僅かに後退した後完全に動きを止める。
直ぐに噛みつきを仕掛けてきたがそれよりも早くノアが鼻先に肘を打ち込む。
怯んだ所に<渾身>を乗せ、右に3発、左に2発打ち込む。


ゴキッ!ボキッ!ビギッ!  バキッ!ボキッ!


殴る度に顔面の骨を砕く音が響く、最後の一撃でバトルベアの口がだらりと開く、顎の骨を砕いた様だ。

  
首に跨がり、開いた下顎を掴んで捻る、バトルベアが抵抗するよりも早く、瞬間的に<渾身>を発動して一気に首をへし折る。


ボギン!           ズズゥン!


「うぉぉ…もう1体倒しやがった…」

隊員の誰かがそう呟くが、とりあえず無視する。

先程肘を折ったバトルベアは立ち上がり威嚇を続けるが、ノアが1歩近付けば1歩下がり、2歩近付けば2歩下がる。
誘導しつつそれを続けた結果、ダンジョン入口の壁と接触した。

バトルベアの気が一瞬そちらに向かった所で猛然と駆け出す、不意をつかれたバトルベアは慌てて無事な左腕を振るうが、さっきと違い軽く振るった程度なので避けるのは余裕だ。
少し外側に回避し、壁に近くなった所で<壁走り>を発動し、壁伝いに移りバトルベアの上で肩車して貰っている様な状態になる。

先程顔面を数発殴ったお陰で牙が所々折れ、手を差し込めるだけの隙間がある。
手を入れ、上顎をガッチリ固定し全力で後ろに引く。
急激に引っ張られ大きく仰け反ると、首の辺りがミシミシ音をたて始め、バトルベアは左腕を振り回しなりふり構わず暴れだす。

ノアは左腕に足を掛けて固定し壁に右足を向け壁への衝突を防ぐ。


グ     ゴゴ   ガ!              ベギン!         ズン!


バトルベアの抵抗虚しく首がへし折れ、力無く崩れ落ちる。


あまりにも一方的過ぎる戦いに調査隊員やベルドラッド、アリッサやギルドの屋根に待機しているアルミラ等のノアの戦闘風景をあまり見た事が無い面々は言葉を失っていた。


残るバトルベアはあと1頭。
先程喉を潰したバトルベアは呼吸もままならず体を起こすのがやっとの様で、ノアと相対しても威嚇するでもなく逃げようともせず腕をだらりと下げ観念した様だ。

自分がやっといてなんだが、このまま無駄に時間を掛けて死ぬのを待つか一思いに殺すべきか判断を迷ったので【鎧袖一贖】を解除する。

ジョーの言う通り虚脱感等の反動は起こらず普段のままだ。

ノアは腰の剣を抜く、バトルベアに対しての最大の敵対行為である『武器を手に取る』行動を起こす。
すると弱々しく片腕を上げ、戦って死ぬ方を選んだ様だ。

端から見たら『もう死にかけなのだからそっとしておけ』とか『なぶり殺しするな』とか言われるだろうがバトルベアの生態を考えるとこれが良いのかも知れない。

ノアはバトルベアに向かって歩きだす。
ノアはあえて間合いに入るとバトルベアが腕を振って来たので剣で受け流し、一思いに振り抜く。


ズバッ!            ゴトン!           ドシャッ!


こうして突発的に始まった防衛戦は、街への侵入等の被害は0という結果に終わった。





「ノア君お疲れ様。」
「皆さんもお疲れ様でした。」
「お疲れー!」
「お疲れー。」
「おら、俺らは調査だぞ。」
「…うーっす。」

防衛戦参加者や職員らが各々労いの言葉を掛ける。
調査隊はこれも魔素上昇が関与しているかどうかを調べる事になる。

ノアはダンジョン入口で後片付けを手伝っていた。

「よ、いっ、しょっと!」

俯せに倒れたバトルベアの死体を仰向けにする。
解体小屋に入りきらないのでこの場でアルキラーとバラスがある程度解体をするらしい。
他にもベルドラッドや隊員、アリッサの竜牙兵も動員して復旧を急いでいた。

「ノ、ノア君私も手伝うよ。」

「いやいや、これとてつもなく重いから他の所手伝ってあげて下さい。」

そう言うと脇腹にポーラの杖が突き刺さる。

「うぐっ!?」

「にっぶい男ね。少年と一緒が良いのよ。」

「ポ、ポーラちゃん!?」

「良い?クロラ、少年は"にぶい"んじゃ無いのよ?"にっぶい"のよ?
子供でも分かる様な露骨なヤツをかまさないとあの少年「わー!本人の前で言うのは止めてぇ!」」

何となくポーラからボロクソに言われたノアは目をぱちくりさせていた。


「どうだいあの栄養剤、効果覿面だっただろう?」

「ジョーさん…一体何なんですかあの栄養剤…ただの栄養剤じゃないでしょ?」

「ははは、あれはね…ん?」
「…!」

ジョーとノアが同時にダンジョン入口上部の違和感に気付く。
ノアは直ぐ様<洗練された手業>を発動し背中の弓を取って矢を発射、端から見れば何も無い空間に向け2、3矢射ち続けた。

「ノ、ノア君急にどうしたの?」

「ご乱心?」

「いや、誰かいたな…」

クロラとポーラが突然のノアの行動に驚くがジョーも何かを感じ取った様だ。
ノアが弓を仕舞い、矢を射った辺りを捜索する。

「これは……。」







(ちっくしょう…あの野郎、俺の事射ちやがって…何だよ、この適正だったらバレないんじゃなかったのか…)

何者かがいるのは人通りの少ないとある裏道、フードを目深に被り人目を忍んでいた。
ノアに射たれた太腿を見て恨み節を放つ。

(なぁその傷大丈夫か?今なら誰もいないから適正入れ替えて回復魔法掛けるけど…)

(いや、傷も浅いし調査隊が彷徨いているから止めとこう。)

(分かった。しっかしあのガキ俺らの計画ぶち壊しやがって…)

(俺らが汗水流してかき集めたモンスターを街に入れる事無く片付けやがった…
次は下層まで行ってモンスターを集めてくるぞ。)

(ああ、俺らが受けた苦しみを味わわせてやろうぜ!)


そうして何者か2名は行動を起こす。
適正の力か、姿をほとんど消して建物の屋根へ移動、屋根伝いに移動を開始する。
途中冒険者ギルドが騒がしくなっていた。

(冒険者ギルドが騒がしい。ちょっと<聞き耳>で話を聞いてみるわ。)

(分かった。俺も気になったから丁度いい。)

2人は冒険者ギルドの屋根に飛び移り、<聞き耳>を立て始めた。
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