ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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旅立ち~オードゥス出立まで

トボトボと歩くクロラ

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ノアとアリッサが料理を貪り食っているとトボトボと歩くクロラが食堂の前を通る。
ノアが慌てて呼び止め、席に座らせた。

何故かむくれて涙目なクロラは何でも無いと言っていたが、様子が明らかにおかしく、ノアは訳も分からずあたふたしていた。

クロラが何か勘違いしていると察したアリッサは誤解を解く為に話し掛ける。

「ねークロラちゃんも一緒に食べない?
昨日の防衛戦の打ち上げみたいな事やろうかなーって思ってたらたまたまノア君と出会ったの、勿論私の奢りで。」

「え!?ノア君だけ誘ったんじゃないんですか!?」

「だってノア君彼女いるのにそんな誤解されるよーな事しないよー。」

「な、なーんだ、私てっきり…」 

言葉を区切ったクロラにノアが聞く。

「てっきり、どうしたんですか?」

「え!?いや、あの…」

上手く言葉を返せないクロラにノアは

「心配しなくても僕はクロラさん一筋ですよ。」

「はうっ!?」

「あれ!?クロラさん顔が赤いですよ!大丈夫ですか!?」

「ま、待って!今は…今は顔見ないでっ!」


アリッサは見逃さなかった、ノアの言葉に顔を真っ赤にして口元が緩んだクロラを。

(良いなー…私もこんな彼欲しい…)


ノアとクロラのやりとりを眺め、そんな事を思うアリッサ、彼女の春はまだまだ先だ。



クロラへの誤解が解けた所で食事を再開する。


「でも私も良いんですか?」

「大丈夫大丈夫、お姉さんこう見えてお金はたんまりありますからね。」


が、アリッサは会計の際後悔する事になる。


「よく食べたね、お会計は6万5千ガルになるよ。」

「お、おばちゃん、(冒険者)カードで…」

「あいよー。」


「「アリッサさんご馳走さまです。」」


食べても食べても『俺』に持っていかれるノアと元々大食いの気があるクロラの両者に奢った事を今更後悔するアリッサは乾いた笑いしか出てこない。


「ほんっとうによく食べたわね、食べっぷりを見て飢餓ミミズかと思ったわよ。」

「あ!」

「どうしたの?ノア君?」

「アリッサさんの"飢餓ミミズ"で、一昨日変な称号手に入ったのを思い出しました。」

「へー、どんなのどんなの?」

「えーっと、『特殊清掃員のお得意様』って称号です。」

「え!?何それ、聞いた事ないよ!?」

アリッサも聞いた事が無い様なのでノアとクロラは冒険者ギルドへ向かう事にした。
アリッサは別の用事があるとの事なのでここで別れることになった。

「分かったら教えてねー!」

軽く手を振ってそれぞれ行動に移す。



「いやー、相変わらず食堂の料理は美味しいですね。」

「うん、探索が無い時は毎食来てるよ、でも次に来るのは早くても明日の昼かな。」

「という事は夕方位から潜るんですね?」

「そうなの。今日は下層手前の坂まで行こうって事になったの。」

「大丈夫ですか?その、あの2人が潜伏してるみたいですけど…」

「さっき打ち合わせした時にベルドラッドさんが言ってたんだけど、どうやら2人共下層2階より下にいるみたいなの。
それと隊員さんが中層と下層の境を封鎖してるみたい。」

「それなら安心か…でも気を付けて行ってね?」

「もちろんだよ。それに今日探索するのは装備の性能を見るのが目的だし。」

「製作依頼出してたんですね?」

「うん、後で皆で取りに行くの。ノア君も一緒にどうかな?」

「そういえば僕も弓とナイフ、刺突武器頼んでたから様子見に行かないとなー…」

「じゃあ決まりだね。」


話を続けているとギルドに到着、中に入ると前日破壊された床は既に修復が完了しており、普段通りの業務をこなす職員が数名とジェイルパーティの面々が揃っていた。

「やぁノア君。」
「やーやークロラっち。」
「クロラお帰り。少年と食堂で食事してたんですってね。」

「あれ?何で知ってるの?」

「さっき肩をがっくり落としたアリッサさんが教えてくれたわ。」

「アリッサさんが落ち込んでたの?私とノア君に奢ってくれた時は普通だったけどなー…」


(((絶対それだ!)))



「それでノア君はどうしてここに?」

「ああ、一昨日変な称号手に入れたの思い出して聞きに来たんだ。」


2人の会話が聞こえていたであろうカウンターの職員がノアに聞いてくる。


「その称号、教えて頂いても良いですか?」

「はい、『特殊清掃員のお得意様』って言う称号です。」

「少しお時間頂きます。」

職員はカウンター内の資料棚を探る。


「ジェイル達は武器取りに行くんだってね?」

「おや、知ってたのか。」

「クロラさんに聞いてね、自分も残りの武器の状況を見に行こうと思うんだが着いて行っても良いかな?」

「ああ、勿論だ。
それに今回製作依頼が完了したのはノア君のお陰でもあるからね。」

「え?どう言う事だ?」

「それは着いてからのお楽しみだ。」


「どう言うこっちゃ」といった顔をするノアに職員が声を掛けて来た。

「申し訳ありません。該当する称号がありませんでした。
お手数ですが水晶に手を翳していただいても宜しいですか?」


そう言われたノアは水晶に手を翳し、職員が確認すると


『特殊清掃員のお得意様』…5体の飢餓ミミズが満足するまで食事を与えた者に授けられる称号。
効果:対象者の獲物を飢餓ミミズが勝手に食べなくなる。飢餓ミミズの呼び出し可。


と水晶に表示される。


「あー通りでバトルベア倒した後に待っててくれたのか。」

「「「何この羨ましい効果は!」」」


ポーラ、ロゼ、クロラが同時に叫ぶ。

「え?そんなにですか?」

「忘れもしないわ、皆で初めて熊を倒した時に座り込んでたら1頭丸々持って行かれたあの悪夢を…」

「うわぁ…そりゃあ辛い…」

「羨ましいけど"満足するまで"って所が厳しそーだね…一体どれだけ食べさせたの?」

「あまり覚えて無いけど中層で群れ狼の首を60頭位処理して貰った時は3匹位満足して帰っていったけど…」

「「ろ、60頭…」」

「私達じゃその称号は厳しそうね…」


ノアとジェイルパーティの会話の区切りを待っていたのか職員が声を掛けて来た。


「ノア様、今回初めて発見された称号の賞金3万ガルになります。」

「え!?こう言うのにも賞金って出るんですね。」

「はい、称号収集家と言う物好きな方も世界にはおりますのでそういう方が街に落とすお金の方が多いですから。」

「おお…生々しい…」


ノアは賞金を受け取ると入口近くにいるジェイルパーティの元に向かう。

「すまない、待たせたね。」

「いやいや、面白いモノを見せて貰ったよ。
それじゃ工房に向かおうか。」

こうしてノアとジェイルパーティは製作武器を取りに工房へと向かう。
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