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旅立ち~オードゥス出立まで
腹減った
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「『あー、腹減ったー。』」
ジェイルパーティと別れたノアは一目散に食堂を目指し、通りを歩いていた。
道中ノアは中にいる『俺』と会話をしていた。
(自分の事は自分がよく知ってるけど『俺』も腹減るの?)
(『昨日少し危なかったろ?こっちも死なれちゃ困るから俺が少し前に出させて貰った。
俺の生命力…まぁ、要は体力を使ったからな、お前さんがたらふく食ってくれりゃこっちも体力はすぐ戻る。』)
(そう言う事ね。お陰で助かったよ、あのままじゃまずかった。)
(『次は気を付けろよ、と言いたい所だが、好きな娘を守る為にやった行動だろ?そう言う事なら俺は文句は言わん。』)
(そう言ってくれて助かるよ。)
ここ最近【鎧袖一贖】の短期間での連続使用や『俺』を表に出す場面が増えてきたからか『俺』との会話が増えていた。
声に出したら明らかに不審者に思われるので心の中に留めて置いてはいる。
食堂に着くとおばちゃんが出迎えてくれた。
「やぁ!坊や、昨日は大手柄だったね!
街では君の話で持ちきりだよ。
ほぼ1人でモンスターの集団を殲滅した英雄だ、ってね。」
「皆さんの協力があったからですよ。」
「ふぅむ、謙虚だねぇ。
さて、ここに来たって事は何か食べに来たんだろう?何にする?」
ノアはざっとメニューを見渡す。
「何かメニュー増えてないですか?」
「そりゃ君を筆頭に他のパーティも豊富な量の素材を取ってきてくれるからね!
オススメはカウンター上に貼ってあるから頼んでみると良いよ」
おばちゃんに促されカウンター上のメニューを眺めてみる。
『攻撃力を上げたいならコレ!
トロトロになるまで煮込んだ、バトルベアの肉たっぷりシチュー』
『防御力とスタミナを上げたいならコレ!
分厚く切った盾鹿の肉のカツ』
『毒耐性と感知系スキル範囲上昇効果付き!
毒大蛇の薬膳スープ』
「色々あるな…よーし、オススメ全部とパン3つ!」
「あいよー!」
注文を取り終えると直ぐに肉たっぷりシチューとパン3つ、薬膳スープが届く。
「はいよ!カツは今から揚げるから少し待ちなね!」
「はーい、ではいただきまーす。」
「あら、ノア君じゃない。」
ノアが食事を開始した直後、目の前にアリッサが座る。
「ああ、はりっふぁふぁん、ほはほーほふぁいふぁふ。ふぁふぁへんほーほほへふは?」
「いやいや、飲み込んでからで良いから。」
ゴクン
「うっす。」
「明らかに文字数違うよね?本当は何て言ったのかしら?」
「ああ、アリッサさん、おはよーございます。また面倒事ですか?」
「ちょっとそれどーゆー意味よ!?」
「いや、アリッサさんと出会い頭で会うとろくな事が…」
「昨日の朝方の事なら謝るわ、だか「ズズーッ」」
「聞けぇっ!」
「ほれで何でふか?」 ムグムグ
「まぁ良いわ、単刀直入に聞かせて?一体中身何なの?」
「えーっと、バトルベアの肉「ごめんごめん、今食べてる物を聞きたい訳じゃないんだなー。」」
アリッサからの質問を露骨にはぐらかそうとするノアだが、急速にノアの目が赤黒く染まる。
『まぁ良いじゃないか、話位聞いてやろうや。』
「あれ?良いの?厄介事はゴメンだ、って言ってたの『俺』じゃん?」
『勿論厄介事に繋がるとこちらが判断したら、分かるよな嬢ちゃん?
その歳で昨日の夜叉みたいな体になりたくは無いだろう?』
「…ええ、だからこれから聞くのはあくまで私が個人的に聞きたい事よ。」
『ノア、ここら辺で人気の無い所は?』
「この店の2軒隣の「本当よ、他言はしないわ!」」
『で?何を聞きたいんだ?』
「あなたよ、その『俺』?ノア君?何て呼んだら良いの?」
『夜叉の事は何て呼んでるんだ?』
「あなた、よ。」
『じゃあ、あなた、で良いわ。』
「じゃあ聞くけどあなたは何者?いつも飄々としてる夜叉があなたにだけは態度が違ったわ、と言うか明らかに怯えていたわ。」
『役割としちゃ夜叉と同じだ。適正の導き手、ガイドとか言うのか?』
『適正の導き手』…適正の儀を受けた直後から脳内に話し掛けてくる存在。所謂チュートリアル
『お前さんの【召喚】はまだ良い方だろ、【ソロ】なんか説明無きゃ何して良いんだか分からんだろうからな。』
「夜叉と同じって事は後々あなたも出て来るの?」
『ああ、ノアは有望株だからな、このままいけばいずれは発現する事も可能だがまだその時では無い。
それと夜叉が怯えていた理由だが、単純な話だ、俺が夜叉の上位存在だからだろう。』
「夜叉はあれでも鬼人の剣客よ?それよりも上位って事なのね?」
『ま、そう言う事だ、聞きたい事はそれだけか?』
「ええ、それだけが引っ掛かってたから。」
そうアリッサが告げるとノアの目は通常の状態に戻る。
「お話はもう済んだのですか?」
「ええ、あまり長く話しても彼の機嫌を損ねるたけだしね。」
「それは助かります。
正直言ってまだ『俺』に体を貸すのは【鎧袖一贖】以上に体力的にも精神的にもしんどいんですよね。」
「え?そんなにしんどいモノなの?」
「何と言いますか…本来の『俺』の身体能力は今の自分以上は平気であるので常に全開で体を動かしている様なものなんです。
『俺』が僕の体を使ってる時間が長ければ長い程その分返して貰った時に疲労感や脱力感が一気にやって来る感じです」
「うわぁ…」
「こうやって話す目的で前に出てくる分には消耗したりはしないんですが、昨日や一昨日みたいに連続で使用すると…」
「ふーん…ん?
もしかして昨日防衛戦で急に不調になったのって…」
「そうですね、それが原因です…ジョーさんがくれた栄養剤が無ければどうなっていたか…」
ノアは前日の事を思い出し苦笑いを浮かべているが、アリッサはそれ所では無かった。
(あれ?それって間接的に私のせいでもあるんじゃね?)
ふとそんな事を思ったアリッサが頭の中で報告書の内容やこの街での出来事を時系列に並べてみる。
ノア鎧蜂&女鏖蜂と戦闘【鎧袖一贖】発動→帰宅→昼頃ベルドラッド強襲【鎧袖一贖】発動→少し仮眠→中層探索モンスター約100頭と戦闘→アリッサと強制戦闘『俺』モードで快勝→昼頃起床→防衛戦開始→途中戦線離脱するも最後は【鎧袖一贖】で勝利→バッツガッツの攻撃で満身創痍→起床→今ココ
これが僅か4日間の出来事。
(思い返してみたら何よ、このハードスケジュールは!
そりゃ不調にもなるわよ!)
アリッサは自分が行った愚行を思い出し頭を抱えるが、直ぐに起き上がり
「よーし、ノア君!罪滅ぼしには到底及ばないけどここの料理奢る!何でも頼みなさい!」
「どうしたんですか?急に。」
「良いの良いの!こういう時は素直に応じるもんよ。
おばちゃーん!私にも同じのー!」
「そう言うことであれば…おばちゃーん!シチュー8人前追加、パン4個も!」
「あいよー!」
「8人前!?食べきれるの!?」
「よゆーよゆー。」
少しすると料理が届けられノアもアリッサもひたすら食べ続ける事になった。
だがこの時ノアは気付きもしなかった。
<気配感知>のギリギリ範囲外に探索の打ち合わせが終わり食堂にやって来たクロラが、仲良さそうに食事を摂る2人の姿を見てしまった。
「ノア…君…?」
ジェイルパーティと別れたノアは一目散に食堂を目指し、通りを歩いていた。
道中ノアは中にいる『俺』と会話をしていた。
(自分の事は自分がよく知ってるけど『俺』も腹減るの?)
(『昨日少し危なかったろ?こっちも死なれちゃ困るから俺が少し前に出させて貰った。
俺の生命力…まぁ、要は体力を使ったからな、お前さんがたらふく食ってくれりゃこっちも体力はすぐ戻る。』)
(そう言う事ね。お陰で助かったよ、あのままじゃまずかった。)
(『次は気を付けろよ、と言いたい所だが、好きな娘を守る為にやった行動だろ?そう言う事なら俺は文句は言わん。』)
(そう言ってくれて助かるよ。)
ここ最近【鎧袖一贖】の短期間での連続使用や『俺』を表に出す場面が増えてきたからか『俺』との会話が増えていた。
声に出したら明らかに不審者に思われるので心の中に留めて置いてはいる。
食堂に着くとおばちゃんが出迎えてくれた。
「やぁ!坊や、昨日は大手柄だったね!
街では君の話で持ちきりだよ。
ほぼ1人でモンスターの集団を殲滅した英雄だ、ってね。」
「皆さんの協力があったからですよ。」
「ふぅむ、謙虚だねぇ。
さて、ここに来たって事は何か食べに来たんだろう?何にする?」
ノアはざっとメニューを見渡す。
「何かメニュー増えてないですか?」
「そりゃ君を筆頭に他のパーティも豊富な量の素材を取ってきてくれるからね!
オススメはカウンター上に貼ってあるから頼んでみると良いよ」
おばちゃんに促されカウンター上のメニューを眺めてみる。
『攻撃力を上げたいならコレ!
トロトロになるまで煮込んだ、バトルベアの肉たっぷりシチュー』
『防御力とスタミナを上げたいならコレ!
分厚く切った盾鹿の肉のカツ』
『毒耐性と感知系スキル範囲上昇効果付き!
毒大蛇の薬膳スープ』
「色々あるな…よーし、オススメ全部とパン3つ!」
「あいよー!」
注文を取り終えると直ぐに肉たっぷりシチューとパン3つ、薬膳スープが届く。
「はいよ!カツは今から揚げるから少し待ちなね!」
「はーい、ではいただきまーす。」
「あら、ノア君じゃない。」
ノアが食事を開始した直後、目の前にアリッサが座る。
「ああ、はりっふぁふぁん、ほはほーほふぁいふぁふ。ふぁふぁへんほーほほへふは?」
「いやいや、飲み込んでからで良いから。」
ゴクン
「うっす。」
「明らかに文字数違うよね?本当は何て言ったのかしら?」
「ああ、アリッサさん、おはよーございます。また面倒事ですか?」
「ちょっとそれどーゆー意味よ!?」
「いや、アリッサさんと出会い頭で会うとろくな事が…」
「昨日の朝方の事なら謝るわ、だか「ズズーッ」」
「聞けぇっ!」
「ほれで何でふか?」 ムグムグ
「まぁ良いわ、単刀直入に聞かせて?一体中身何なの?」
「えーっと、バトルベアの肉「ごめんごめん、今食べてる物を聞きたい訳じゃないんだなー。」」
アリッサからの質問を露骨にはぐらかそうとするノアだが、急速にノアの目が赤黒く染まる。
『まぁ良いじゃないか、話位聞いてやろうや。』
「あれ?良いの?厄介事はゴメンだ、って言ってたの『俺』じゃん?」
『勿論厄介事に繋がるとこちらが判断したら、分かるよな嬢ちゃん?
その歳で昨日の夜叉みたいな体になりたくは無いだろう?』
「…ええ、だからこれから聞くのはあくまで私が個人的に聞きたい事よ。」
『ノア、ここら辺で人気の無い所は?』
「この店の2軒隣の「本当よ、他言はしないわ!」」
『で?何を聞きたいんだ?』
「あなたよ、その『俺』?ノア君?何て呼んだら良いの?」
『夜叉の事は何て呼んでるんだ?』
「あなた、よ。」
『じゃあ、あなた、で良いわ。』
「じゃあ聞くけどあなたは何者?いつも飄々としてる夜叉があなたにだけは態度が違ったわ、と言うか明らかに怯えていたわ。」
『役割としちゃ夜叉と同じだ。適正の導き手、ガイドとか言うのか?』
『適正の導き手』…適正の儀を受けた直後から脳内に話し掛けてくる存在。所謂チュートリアル
『お前さんの【召喚】はまだ良い方だろ、【ソロ】なんか説明無きゃ何して良いんだか分からんだろうからな。』
「夜叉と同じって事は後々あなたも出て来るの?」
『ああ、ノアは有望株だからな、このままいけばいずれは発現する事も可能だがまだその時では無い。
それと夜叉が怯えていた理由だが、単純な話だ、俺が夜叉の上位存在だからだろう。』
「夜叉はあれでも鬼人の剣客よ?それよりも上位って事なのね?」
『ま、そう言う事だ、聞きたい事はそれだけか?』
「ええ、それだけが引っ掛かってたから。」
そうアリッサが告げるとノアの目は通常の状態に戻る。
「お話はもう済んだのですか?」
「ええ、あまり長く話しても彼の機嫌を損ねるたけだしね。」
「それは助かります。
正直言ってまだ『俺』に体を貸すのは【鎧袖一贖】以上に体力的にも精神的にもしんどいんですよね。」
「え?そんなにしんどいモノなの?」
「何と言いますか…本来の『俺』の身体能力は今の自分以上は平気であるので常に全開で体を動かしている様なものなんです。
『俺』が僕の体を使ってる時間が長ければ長い程その分返して貰った時に疲労感や脱力感が一気にやって来る感じです」
「うわぁ…」
「こうやって話す目的で前に出てくる分には消耗したりはしないんですが、昨日や一昨日みたいに連続で使用すると…」
「ふーん…ん?
もしかして昨日防衛戦で急に不調になったのって…」
「そうですね、それが原因です…ジョーさんがくれた栄養剤が無ければどうなっていたか…」
ノアは前日の事を思い出し苦笑いを浮かべているが、アリッサはそれ所では無かった。
(あれ?それって間接的に私のせいでもあるんじゃね?)
ふとそんな事を思ったアリッサが頭の中で報告書の内容やこの街での出来事を時系列に並べてみる。
ノア鎧蜂&女鏖蜂と戦闘【鎧袖一贖】発動→帰宅→昼頃ベルドラッド強襲【鎧袖一贖】発動→少し仮眠→中層探索モンスター約100頭と戦闘→アリッサと強制戦闘『俺』モードで快勝→昼頃起床→防衛戦開始→途中戦線離脱するも最後は【鎧袖一贖】で勝利→バッツガッツの攻撃で満身創痍→起床→今ココ
これが僅か4日間の出来事。
(思い返してみたら何よ、このハードスケジュールは!
そりゃ不調にもなるわよ!)
アリッサは自分が行った愚行を思い出し頭を抱えるが、直ぐに起き上がり
「よーし、ノア君!罪滅ぼしには到底及ばないけどここの料理奢る!何でも頼みなさい!」
「どうしたんですか?急に。」
「良いの良いの!こういう時は素直に応じるもんよ。
おばちゃーん!私にも同じのー!」
「そう言うことであれば…おばちゃーん!シチュー8人前追加、パン4個も!」
「あいよー!」
「8人前!?食べきれるの!?」
「よゆーよゆー。」
少しすると料理が届けられノアもアリッサもひたすら食べ続ける事になった。
だがこの時ノアは気付きもしなかった。
<気配感知>のギリギリ範囲外に探索の打ち合わせが終わり食堂にやって来たクロラが、仲良さそうに食事を摂る2人の姿を見てしまった。
「ノア…君…?」
応援ありがとうございます!
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