ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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旅立ち~オードゥス出立まで

無能

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「【万能】?無能じゃなくて?」


バッツとガッツの適正を聞いた瞬間、誰が見ても「イラッ」と言う擬音が良く似合いそうな顔でポーラは返答する。


「色々思う事はあるだろうが落ち着こう。
な?ポーラ。」

いつもは冷静なジェイルがポーラを落ち着かせている。
ポーラは怒ると恐いのだろう。


「続けるぞ?【万能】は知っての通りあらゆる適正になれるが、特化 【適正】には劣る。
だがこの適正ちと厄介でな、全うな職を手にしている者もいるが大半は悪事に手を染める者がほとんどだ。
王都近郊に巣食う大規模な野盗団の頭も【万能】を持っているという。」


王都が抱えている問題は侵蝕竜や物資不足だけでなく、それが原因で増え続ける貧困層や野盗の類いも悩みの種となっていた。
現在も各所で小規模の野盗団による押し付けに乗じた略奪が発生してるという。

 
「やり口は簡単だ、【盾】にでもなって挑発スキルを発動、モンスターをある程度引き付けたら【飛脚】等の適正で引っ張り、目的地近くで【隠密】等を使って姿を眩ます。
モンスター共がその場に到達して混乱に陥った所を襲う。
これが奴らの常套手段だ。
恐らくこれと似た事を行って街に引き連れたのだろう。」

ベルドラッドが【万能】持ちの盗賊の手口を語った所でポーラから質問が飛ぶ。


「あいつらとはこの街に来るまで少しの間パーティ組んでたんだけど、あいつら本当に無能だったわよ?
【万能】持っているならもう少し戦えても良いんじゃないかしら?」


この質問にベルドラッドが顎に手をやって少し考えた後で返答する。

「君達は【適正】を授かって日は浅いと思う。
努力して極めていけば行く行くは凄まじい力を得る様になるのだが、実を言うと最初期は【適正】による補正は微々たるモノしかない。
例えば君はクロラと言ったな?
君に聞くが、【弓】を授かったからと言って百発百中で矢が当たった事はあったかい?」

「い、いえ、ノア君に色々手解きを受けてから上達していきました。」


「ああ、ノア先生ね。」

「ポーラさん?」

「おっと。」


「そう言うこと。
最初期の【適正】の補正と言うのは威力等が少しだけ上がるってだけで動きや武器の扱い方は本人の頑張り次第だ。」


ベルドラッドの説明で大体理解したポーラ。


「要はあいつら努力を怠ってただけなのね?」


「そうなるな、先程のクロラの例で言えば順調に研鑽を積んでいれば、どの辺りで矢を放てば相手に当たるか感覚的に分かってきてないかい?」

「はい、矢を射つ時視界に矢の軌道が表示される様な感覚と言いますか…」


「ノア先生のご指導の賜物ね。」

「ポーラさん?」

「他意は無いぞ?」


「順調、順調、恐らく次は威力が更に上がると思うから励む様にな。」

「は、はい!」

「まぁこの様に研鑽を積めば上達していくが【適正】の豊富さにかまけてると戦えはしない上に逃げの技術だけは上がっていく悪循環に陥る。」

(確かにあいつら逃げる時に<分身>使って来たけど…あれを戦闘面で使えば割と行けると思うんだけどなぁ…)

「この説明で大体理解してくれたかな?」

「ええ、ありがとうございます。」

話に区切りがついた所でその場は一時解散する事になった。
バッツとガッツ両名の捜索は調査隊の方で引き継ぐとの事だ。


ジョーも仕事に戻るという事なので挨拶を済ませ、別れる事になった。

「僕らは今日から明日に掛けての探索の為一旦場所を移すがノア君はどうする?」

「邪魔になるといけないから僕は色々と用事を済ませるよ。
何よりもまずお腹に何か入れたいからね。」

「そうか、分かった。」
「じゃあな、少年。」
「ばーい。」
「またね、ノア君。」

手を振って見送ったノアの背中を見てクロラは安堵する。

「元気そうで良かったじゃない。」
「うん。」
「昨日まともに爆発を食らってズタズタに引き裂かれた彼の体を見た時は色々覚悟したもんだが…」
「出血量もすごかったしね。」


「…私ってばずっとノア君に守られてばっか…
何もお返し出来てないのに…」

「そんな事無いんじゃない?彼、あなたと会ってる時凄い楽しそうよ?
前は適正の事もあって何処と無く避けてる感じがあったけど、ついさっきも私の冗談(?)にも快く応じてくれたし。」

「それにーノア君、クロラを助けたからって何か見返りでも求めた?」

ふるふる

「なら良いんじゃない?彼もクロラが側にいるだけで満足みたいだし。」

「あの歳で見返りを求めないとは、よっぽど大事にされてる証拠じゃないか。」

「うん…」

それでも少し浮かない表情のクロラにポーラが耳元まで近寄り


(だったらこの間の『教え子と先生』をまたやったら良いじゃない。)

(へ!?いや、あれはその、黒歴史といいますか…)

(そう?クロラも彼も案外まんざらでも無さそうだったじゃない。)

(まー、確かにグイグイいったらノア君オドオドして可愛いなーって…はっ!)


自分は何を、と思い口をつぐむが時既に遅し。悪い顔をしたポーラの顔がそこにはあった。


(そう、それだよクロラ君。今の彼に必要なモノはお返しでも見返りでも無い、触れ合いなのさ。)

(触れ…合い?)

(そうさ、本来は社交的な彼が適正の事もあって人との接触を避けていた。
そんな彼から告白を受けたのだよクロラ君?
本当は彼もクロラといちゃいちゃしたいハズよ。※ポーラの考えです)

(そ、そうかな~…)

(だってクロラ、告白してから数日経つけどイチャイチャした試しある?)

(え?……あ!無い!)

(そう、何かにつけて厄介事に巻き込まれていく彼の触れ合いたい度数は恐らくもう限界のハズよ。
※ポーラの勝手な考えです)

(げ、限界…)

(それに思い出して御覧なさい、昨日の事を…)

(昨日?)

(お忘れかしら?防衛戦の時にアリッサとか言う冒険者がクロラよりも先に、そう我先にとお姫様抱っこして貰ったあの悪夢を!
※腰が抜けただけです。)

(た、確かに私、あれは少し嫉妬しちゃったな…)

(つまり触れ合い度数で言えば彼女が最高位にいるのよ?
このまま何も手を打たなかったら彼女にノア君取られちゃうかも知れないのよ?
※ポーラの勝手な考えです)

(ポ、ポーラちゃん…私頑張ってみる。)

(そう、その意気よ!但し自然に振る舞わないと彼鋭いから不審に思うからそこは注意ね。)

(うん。頑張るよ。)



そんな2人のやりとりを後ろから眺めていたジェイルとロゼは「また何か吹き込まれたな」と言う顔をしていた。
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