ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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旅立ち~オードゥス出立まで

装備完成

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「竹魔弓に、カランビットに刺突武器…これでようやっと依頼した装備完成だな。
ってかこの装備で何倒しに行くんだよ、ドラゴンか何かか?」

「いやいや、流石にそれは…」

「素手でバトルベア殺す奴が何言ってやがる!」

「み、見てたんですか?」

「お前昨日の防衛戦はどこでも話題に上がってるんだぜ?見なくても分からぁ!
ま、お前さんが狩り尽くしてくれたお陰でさっきのパーティは装備が作れる様になったんだぜ?」


(ああ、だからジェイルはさっきそんな事を…)


「というか昨日の今日で4人分の装備作ったんですか?僕の装備は結構掛かったのに…」

「バカお前、あの剣作るだけで俺含めて職員全員のスキルレベルがバカスカ上がったんだぜ?なぁ?ガーラ。」

「あぁ…革なめしが1時間程で終わった時は固まっちまったぜ…」

「正直あの剣に比べたら4人分の装備何て朝飯前だわ!」

「ちなみになんですけど、この剣をもう2本作「御免被る!」」


「そうですか…」



武器を全て装備し終えたノアは工房を出る。


「お前さんも訓練所で慣らしに行くのか?」

「いや、今日は用事済ませて寝て、明日潜ろうかと…」

「あまり急ぐ事でも無いですし、知り合いから僕は過労気味だと言われてしまいましたし。」

「確かにな…まぁ何かありゃまた来な!」


挨拶を済ませ、ギルド方面へ向かう。



「おや、フル装備だね、これから潜るのかい?この街の英雄さん?」

声のした方を向くと何日か振りのレーヴァがそこにいた。

「レーヴァさん、その呼び方止めて貰っても良いですか?何かむず痒くて…」

「あっはっは、冗談だ。
最近顔見せ無いもんだからからかっただけさ。」

「すいません、最近アイテムボックス買ったもんで…」

「気にしちゃいないよ。
最近は色んなパーティから依頼が来てるから割と忙しくなったんだ。
今日もウチのライルがジェイルって奴のパーティに同行するんだよ。」

「ほー、じゃあ大分潜るんですね。」

(装備も新調したから張り切ってるんだろうな。)


「んで、坊やはこれからどうするんだい?」

「自分は用事を済ませたら寝ます。潜るのはまた明日ですね。」

「そうかい、引き留めて悪かったね。んじゃまた。」

「また。」



レーヴァと別れたノアはギルドの中に入る。 
中にはエメラルダ、調査隊員、ベルドラッド、アリッサが勢揃いしていた。                                                                   


「あら、ノア様いらっしゃい。」
「やぁノア君。」
「あら、ノア君じゃな…何か装備増えてない?」

「依頼してたのがやっと完成したんです。
皆さんは勢揃いしてどうしたんですか?」

「ああ、2人の潜伏先が大体割れたんだ。
使用スキル履歴と魔力探査の結果、現在2人は下層4階にいると思われる。
その辺りだとこちらも万全の体制で向かわねばならんからな、明朝に再突入する事になった。」

「そう、ですか…」

「一応中層と下層の境を封鎖し、隊員を2名配置している。彼らは袋の鼠だ。」

「後の事はお願いします。」

「ああ、だからノア君少しは落ち着け。」

「…新しい装備が出来たんで早く試したいだけですよ。」

「そうか、それなら良いが…」


そのままギルドを出るノア。


「あれはどう見ても何かで焦ってるって表情だな。」
「落ち着かないからうろうろしてるって感じですね。」
「何か上の空って感じね。」


通りを歩くノア。
工房でジェイルパーティと別れた辺りから<虫の知らせ>が弱く反応していた。

(微弱だが反応がある…色々歩き回ってはいるがどこも反応は同じだ…どこだ、どこから反応が…)

「おや、ノア君また会ったね。」

「…ジョーさん。」

「…ちょっと歩こうか。」


街の通りを無言で歩くジョーとノア。


「落ち着かない、と言った感じだね…」

「…分かりますか?」

「視線の動き、呼吸の早さ、後は気配かな、明らかにいつもと違うからね。」

「商人は凄いですね、そんな事まで分かりますか?」

「今の君の様子を見たら一般人でも分かるよ。
…大方、<虫の知らせ>辺りかな?」

ギクッ!

「何で見ただけで発動スキル分かるんですか?」

「まぁ僕も持ってるし、そのスキルって無駄に不安を煽るんだよね。」

「あー、分かります、漠然と全ての事柄に敏感になるといいますか…」

「まぁ君の事だ、『落ち着け』と言われて落ち着ける性分では無いだろう。
だったら備えておけ!何があっても即行動に移せる様に、『あの時ああしておけば』は起こってからじゃ遅いんだからな?」

「…はい。」

(ふむ…いつもの顔付きに戻った様だね。)

「それじゃ幾つか欲しい物があるんですが。」

「おー良いとも、大抵の物は用意出来ると思うよ。」

いつもの調子に戻ったノアとジョーが話していると、通りの奥にジェイルパーティとライルの姿が見えた。


「あちらはそろそろ潜るみたいだね。」

「ええ…」





ジェイルパーティサイド

「今日もよろしくにゃ。」

「「「「よろしくお願いしまーす。」」」」


「さて、各自武器の確認、回復ポーションや、ポーラはマナポーションも忘れてないか?」

「矢の本数問題なし、ポーションは5本ちゃんとあるよ。」

「こっちもおーけー。」

「マナポーおーけー。」

「よし!それじゃ行くぞ!」


ジェイルパーティとライルは上層への坂を下りる、目的の中層までは暫くあるのでライルが会話を始める。


「それにしても最近ここに来たばかりにゃのにもう中層の攻略も終盤とはにゃー。
みんにゃは下層まで行くのかにゃ?」

「自分は行きたい気持ちはありますが、皆の意見次第ですかね。」
「あたしはリーダーが行くならいーよー!」
「私も、ジェイルに着いていくわ。」
「私は、出来ればノア君と一緒に行ってみたい、かな。」


クロラの発言に少し思案する面々。
適正を知って直ぐであれば「無理だろう」の一言で終わる話であったが

「確かに連携、協力がダメなだけで一緒にいる分には大丈夫だろうし、自分としては普段の戦い方を見てみたいって気持ちもある。」

「あたしも彼の戦い方に興味あるなー、参考に出来そうな所は取り入れたいし。」

「まぁ少年の事だから断る事は無いでしょ。
と、いう訳で交渉はクロラ、頼んだぞ?」

「うん、誘ってみる。」




「そういえばライルさんは下層に潜った事はありますか?」

「うんあるにゃよ。」

「難易度的にはどうですか?」

「そうにゃね…昨日ノア君が戦っていたバトルベアってモンスターがいたけどあれを普通に倒せる様じゃにゃいと厳しいにゃ。」

「…そんなにですか。」

「上層、中層、下層共通して『鹿』は弱い部類に入るんにゃけど、下層にいる鹿は弱くても戦闘力はバトルベア並みにゃ。」

「逆に言えばノア君は下層に行く資格があると言う事かしら?」

「そうとも言うにゃね。
ただ僕ら職員は依頼を斡旋するのも役目にゃけど軽い気持ちで危険な猟場へ向かう冒険者を止める役目もあるのにゃ。
脅かすつもりはにゃいけど、下層はそういう所というのは忘れにゃいで欲しいにゃ。」

 
装備新調で少し浮かれていたジェイルパーティは改めて気を引き締め直す事になった。
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