ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
102 / 1,117
旅立ち~オードゥス出立まで

ジョーとししょー

しおりを挟む
薬草小屋に入ると店内にはジョーとししょーが話していた。


「おや、ノア君いらっしゃい。」
「噂をすれば何とやら、いらっしゃいぼうや。」

「噂ですか?」

「いやいや、こっちの話だよ。それでどうしたんだい?」

「先程仰っていた魔力を通して貰いに来ました。」

「ほほう、魔力をね、良いよ。その場で動かず立っててくれ。」


ししょーに言われてその場に立ち続けていると、ししょーのその巨大な毛玉の様な体毛から1本の杖を取り出す。


「生き物は皆、元から魔力を使う経路が備わっているんだが、開きっ放しだとすぐ枯渇しちゃうから常に栓をしている状態なのさ。」


ししょーが手に持つ杖をノアの体に這わし、お腹のへそ辺りでピタリと止める。


「坊やの栓はこの辺り、これを開いてやれば坊やも魔法が使える様になるよ。」

「へー、開くってどう「ほいにゃぁっ!」」


どぬっ!「うごはぁっ!?」


掛け声と共に杖の先端を腹にめり込ませる。
あまりの出来事と激痛にノアがもんどり打つ。
しかし、少しすると刺された部分が仄かに温かくなっていくのを感じる。


「こ、この感覚は…出血!?」

「いや…それが魔力が沸き上がってくる感覚だよ坊や。
さっき話した栓を開けた状態だ、そのままだと直ぐに枯渇しちゃうから栓を締めていくイメージを…驚いた、初めてなのにもう制御の仕方を掴んだのかい?」

「何か気配を調節する感覚に似てますね。」


ノアが持つ<殺気放出>は現在バーサークベアに匹敵する程の殺気に上書きされているが、任意で調節すれば格下のモンスターの殺気も放つ事が出来る。
内から発する殺気の制御方法と魔力の制御方法に似た部分があったのだろう、直ぐにノアの魔力は安定した。


「いやはや、流石に早いよ。私だって初めの頃は制御するのに2日掛かったのに…」

「やはり両親の仕込み方が良かったんだろうね、普通の子だったら制御出来ずに魔力切れを起こすのが殆どだよ。」

「これで一応魔法は使える様になったんですよね?」

「ん?あぁ、使える様になっただけで技とかはこれから覚えないと…」

「あ、いいです。」

「なっ!?何だってぇ!?」


ノアの発言に衝撃を受けたししょーが大声で叫び、最近高くなってきた血圧が上がる。


「ジョーさん、魔力通ったみたいなので例のキッチン購入します。」

「え!?あぁ、構わないよ…」

「ちょっ、ちょっと待つんにゃ坊や!い、いらないだって!?」

「そうですね、魔力で個人登録しなければならない物が買いたかっただけですので。」


そうノアが言うとししょーはキッとジョーを睨み付ける。


「うーん…ノア君、魔法も覚えとくと結構役立つよー?回復とか…」

「あー…回復は欲しいですね。」

「そうじゃろ、そうじゃろ?他にも火属性とか風属性の魔法とか…」

「あ、それはいいです。」

「何でじゃーぃ!」


度重なるノアからの拒絶に自分のキャラも忘れて叫ぶししょー。


「いや、何と言いますか、自分の戦い方って『高火力で一気に』って感じなんですよ。」

「野菜炒めの作り方みたいだね。」

「茶々を入れんじゃあないよ。」

ずむんっ!     「うぐぅっ!?」


場を和ます為に言った一言だったがししょーの癪に触ったようだ。


「その…出が遅い攻撃方法はちょっと…」

「あー…なるほどね…」

「じゃ、じゃあ、出が早い雷魔法何かどうかな?」

「消費魔力多い割に当てにくいんだよな…」

「ぐぬぬぬぬ…」


ノアは顎に手をやり、うんうん唸る。
少し考えた後、ししょーに質問を投げ掛ける。


「…すいません、属性魔法って何種類あるんですか?」

「先にそれ説明すれば良かったね。えーっと…」




この世界における属性魔法の種類は以下の通りになる。


火属性魔法…炎を操ったり放出が可能。
水属性相手や雨天時に不利。

水属性魔法…水流操作や水属性攻撃が可能。
雷属性相手や乾燥地帯では不利。

風属性魔法…気流操作や斬撃攻撃、体に風を纏わせて移動速度上昇効果を付与可能。
台風や大嵐の時期は不利。

雷属性魔法…高火力な上、広範囲攻撃が可能。
体に纏わせて身体強化を付与可能。
魔力消費は全属性の中でも多い上当てにくい。
土属性相手に不利。

土属性魔法…土や岩に干渉して形状操作が可能。主に土木工事等で用いられる。
水属性に不利。

光属性魔法…アンデッド系モンスターに最も効果を発揮し、高位聖職者や聖騎士等はこの属性魔法を所持している。
不得手な属性は特に無し。

闇属性魔法…闇夜に紛れ、影に潜んだりと応用の幅が広く隠密職に人気。
光属性に多少不利。



「こんな所だね。」

「じゃあ土属性魔法で。」

「土属性ね…ええっ!?土属性魔法だって!?」

「ノア君本当に土属性魔法にするのかい?」

「えぇ、畑仕事とかで両親の手助け出来るかなーって。」


ノアの決意を止めるつもりは無いがよりにもよって土属性魔法を選ぶとは両名共、予想だにしなかった様だ。
土木工事は勿論の事、ノアが言った様に畑仕事でも非常に重宝される。


((こりゃ、戦闘面で使うつもりは一切無いな…))


ここまで懇切丁寧に魔法について教えたにも関わらず一向に興味が無さそうな顔をしているノアを見て先程までグイグイと魔法を勧めていた両名も流石に諦めた様で


「じゃあ土属性魔法で登録するよ?掌を上にしてこちらに差し出して。」

「はい、お願いします。」


手を差し出すとししょーが2、3呟き、ノアの両掌に魔方陣が浮かび上がる。
痛みとかは無く手を動かしても何ら支障は無いようだ。


「はい、これで登録したよ。
別の属性に変えたくなったらまた来な!最初から覚え直しになるけど変更可能だよ。」

「分かりました、大事に使います。」


属性魔法の登録が済んだノアは綺麗に半回転してジョーに向き直る。


「と、言う訳で登録終わりました、早速キッチンの購入を!」


魔法云々の時とは打って変わってハキハキと喋るノアに、本当に興味無かったのだなと感じ、落ち込むししょー。


「じゃあ手続きやお金が絡むからギルドに向かおうか。
僕は少しししょーと話す事あるから先に向かっててくれないか?」

「はい!待ってますね。」


るんるん気分で小屋を出るノアをジョーとししょーが見送る。


「少し急かし過ぎたかねぇ…」

「その様だね、本当に仕方無く取ったって感じだったね…」

「『高火力で一気に』…ねぇ…本当にそんな戦い方なのかい?」

「防衛戦の戦いを僕は間近で見てたけど『一騎当千』って感じだったよ。
ノア君は気付いて無いだろうけど彼の戦い方に感化された新人冒険者は何人もいたみたいで、ギルドじゃ無茶な事はするな、って言い聞かせるのに必死みたいだよ。」

「ふぅん…そんな彼に手数を増やしてあげようって思ったんだけどねぇ…まさか土属性魔法とは…」

「まぁ彼なら上手く使ってくれるだろうし、直ぐに別の属性に変更しに来るんじゃないか?」

「そうだね。
魔法の有用性を認識すれば直ぐに戻って来るさ。」


尚、今後もノアは土属性魔法を変更する事は無かった。
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった

海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。 ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。 そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。 主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。 ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。 それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。 ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...