ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
116 / 1,117
旅立ち~オードゥス出立まで

ダンジョンに入って19時間

しおりを挟む
ダンジョンに入って19時間。

丁度中層2階での実戦練習が終わった所である。
何故か辺り一面が氷で覆われ、木々も所々に氷が張り付いている。


「ぐへ~…疲れた~…」     ドスン!


地面に座り込んだのはノアだった。
頭から流血、顔には痣が出来、腕の数ヶ所にも斬り傷を負っている。


「ノ、ノア君、す、すまない!?」
「ちょっ、ちょー!?ノア君大丈夫!?」 
「少年!大丈夫か!?ジェイル!やり過ぎだぞ!」
「ノア君!血が…」


痛々しい姿のノアを心配して実戦練習を見守っていたルドルフパーティも駆け寄る。


「あー、見た目程ダメージは無いから大丈夫です…」


手をヒラヒラ振って大丈夫だ、とアピールするも全くそうは見えない。





話は少し戻って実戦練習終了5分前に遡る。


ノアは皆の体力を考え、もうそろそろで終了だな、と考えていた。
それでも今回の実戦練習はかなりの収穫があった。


まずジェイルは<受け流し>や<挑発>スキル、メンバーへの指示出しが格段に上達。
盾に体を隠し、半身になる事で攻撃時も手を悟られない様にしたりと立ち回りも良くなっている。

ロゼは死角からの攻撃や樹上からの奇襲が上達、技のキレも良くなった気がする。
攻撃時も大技は狙わず一撃離脱戦法に切り替えている。

ポーラは魔法の命中精度が向上し、ロゼやクロラの攻撃に合わせ二段構えの攻撃を仕掛けたり地面や木々に魔法を当て、壁や足場を作ったりと、厄介さが増した。

クロラは常に動きまわり、パーティメンバーにノアが詰め寄ろうとすると横槍を入れたりとサポートにもまわる。
尚この時スムーズな立ち回りを心掛けていたのと、死角を考えて行動をした為、<洗練された手業>と<曲射>のスキルを覚えた。


しかし、ここで問題が起こった。
ジェイル、ロゼ、ポーラの3人に【固有スキル・技】が発現したのだ。

突然の発現に驚いたのと好奇心から、3人共【固有スキル・技】を発動してしまったのだ。

発動してしまったのはしょうがないと気持ちを切り替え、軽いノリで練習台を請け負ったのがマズかった。



その結果、今に至る。

ちなみにロゼ、ポーラ、ジェイルの順に【固有スキル・技】の練習台になったが、ノアが血塗れになった原因はジェイルの【固有スキル】をモロに食らった為だ。




バリバリボリボリ…

ノアは回復玉をムシャる。
出血は止まり斬り傷は徐々に塞がっていく、掌で器を作り、生活魔法で水を出し顔を洗う。


「ふぃー、さっぱりしたー…
皆さん見張りありがとうございました。」


ノアは練習の間ひたすら見張りをしていたルドルフパーティに礼をする。


「いやいや、後半は特にやる事無かったからスキルの練習に費やせたからこちらとしては儲けもんだよ。」

「あー、確かに後半バーサークベア並みの<殺気放出>発動して練習してましたから中層のモンスターは寄り付かないでしょうからね…」

「おいおい、あんな殺気放ってたのかよバーサークベアって奴は。
お陰で俺やガルベラも<気配感知>取れたから良かったけどな…」

「どうですか?皆さんも実戦練習やりますか?」


このノアからの提案に押し黙るルドルフパーティ一同。


「うーん…実を言うと僕らは今の所バトルベアの討伐自体まだなんだ。
見ての通り僕らは全員【剣士】のゴリ押しパーティだ、最終的に下層に行ってハルバードディアの素材を取りに行くつもりだが今回は行っても中層5階止まりだ。」

「そうか、了解した。」

「すまないな、途中から同行した上にスキル取得まで頼んだのに…」

「なに、今回の当初の目的は"行ける所まで行く"だ。
ルドルフ達の"行ける所"が中層5階ならそちらの意向を尊重するよ。」

「すまない。」


話が終わったノアはジェイルパーティらの元へ戻り、ルドルフパーティの意向を説明。
ジェイルも意向に沿う為ルドルフらとは中層3階で(バトルベアが出現する辺り)別れるとの事だ。




少しの間休憩を済ませた一行は中層3階へ向け坂を下り始める。
実戦練習で体力を消耗したジェイルパーティの代わりに暫くはノアが戦闘にまわる様だ。


「体力の方はどうだい、ジェイル?」

「俺とポーラはまだ大丈夫だが、ずっと動き回っていたロゼとクロラはくたくただ、」


ジェイルから状況を伝えられたノアはアイテムボックスを開け、手作り携行食を取り出してロゼとクロラに渡す。


「はい、これ食べて下さい。
体力とスタミナの継続回復効果が付いてますので食べると少し楽になると思いますよ。」

「え!ありがとー。ザクッザクッ!」
「ノア君ありがとう、あー美味しかった。」

(あれ?咀嚼音聞こえなかったような…)


などと考えているとクロラがノアの手を引いてくる。


「ねぇノア君、また<大好物>が発動したみたい、今度は追加で"腹持ち(中)"が付いてるよ。」

「うーん…"腹持ち"が付く様な物は入れてないハズなんだけどなー…
何か好みの食材とかありますか?」

「うーん…何でも食べれるからどれが好物かって言われると難しいなー…」

「おばちゃんの食堂では発動しませんでしたか?」

「そう言われると発動して無かったと思う。」

「うぬぬ…今度色々作ってみてクロラさんの好物探しでもやってみましょうかね。」


ノアからのこの提案に色めき立つクロラ。


「まぁ、そろそろ街を出る準備もしないといけないですから料理の作り置きも兼ねてるんですけどね。」

「そっか、私達も装備揃えたり色々準備整えたら直ぐに王都に行くつもりだからそろそろ今後の事考えておかないとなー…」


お互い近日中にこの街を出るとの事なので色々と準備について話し合っていた所、中層3階の
入口が見えてきた。


「ルドルフさん、荷物の空きはありますか?」

「え?空き…」

「あ、私のアイテムボックスはまだ空きがあるわよ。」

「それでは先にこれ渡しておきます、道中で食べて下さい。」


そう言ってノアの手作りハンバーグサンドを1人に付き2個分渡す。


「良いのかい?元々そちらの…」

「これは僕からの餞別です、先程食べたから知ってるでしょうが食事効果が付いてますのでバトルベア討伐に役立てて下さい。」

「…ああ、ありがとう、恩に着るよ。」


そうこうしている内に中層3階に到着。
ルドルフパーティとはここで別れる事となった。


「それじゃバトルベアの討伐頑張ってな!」

「ああ、そちらも下層探索の無事を祈るよ!」


お互い別れの挨拶は短めに済まし、各々別の方向に歩きだした。
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~

テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。 しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。 ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。 「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」 彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ―― 目が覚めると未知の洞窟にいた。 貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。 その中から現れたモノは…… 「えっ? 女の子???」 これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

処理中です...