ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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アルバラスト編

ゴブリンの巣

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「という訳で山の洞窟内にゴブリンの巣を確認しました。
それによってウルフや猪が山を下りてきたかどうかは判断出来ませんが、一因と考えても良いでしょう。」


夕方頃村に戻ってきたノアは、直ぐにハミルと村人数人を呼び、報告した。

このノアからの報告にざわつく村人。
こんな直ぐ近くにゴブリンが住み着いていたと思っていなかったのだろう。

村人がノアに質問を飛ばす。


「か、数は?」 

「僕が見た時は20体でしたが恐らく狩りか何かで出払っていると思います。」

「何故その場で殺さなかったんだ!」

「奴らは上位種がいない場合、視界が悪い夜間は巣穴に引き込もっています。
その場で殺しても良かったんですが、日暮れに戻ってきたゴブリンが仲間の死体を見付けた場合、周辺に拡散して手当たり次第に暴れまわるのでその場は見逃しました。」

「な、何故上位種がいないと判断出来たんだ?」

「ゴブリンの上位種は知能が上がると何故か綺麗好きになるんです。
恐らく巣の場所を悟られない様に、とかあるんだと思いますがね。
僕が中に入った時は所々に骨が散乱して異臭が凄かったですから。」


村人からの質問が止んだ所で今度はノアから質問を飛ばす。


「村人の中で戦える人はいますか?」


するとミミの父親とハミルが手を上げる。


「俺は元々【斧】の冒険者だ、君には娘を助けてくれた恩があるからな、何でも言ってくれ。」

「私は元【剣士】です。
君には村の者を助けて頂いた上に色々と尽力なさってくれています。
何かあれば仰って下さい。」

「まぁ、そこまで身構えないで下さい。
僕が今夜護衛と共に山へ行って巣のゴブリンを片付けて来ます。
その間村の方をお願いします。」

「分かった。」

「分かりました、お気を付けて。」


村の事をお願いしたノアは早速行動に移す。
外に出ると既に辺りは暗く、村の周りは闇に包まれ始めていた。


「それではお二方、よろしくお願いします。」


ミミの父親とハミルに一言告げたノアは山へと歩き出す。


「なぁどう思うよハミルさんよ、本当にあれで新人冒険者なのか?」

「冒険者カードを見たんだ、間違いないさ。」

「一体何経験したらあんな落ち着いていられるんだか…」

「無駄話はここら辺にしとこう、早速1匹やって来たぞ。」

「おう、取り敢えず俺から行く、ぜ!」


こうして2人はノアのいない間武器を振るい続けた。





「よし、っと。」

(『これで取り敢えず全部だな。』)

「ああ、昼間に見付けた巣の入口は頂上以外全部埋めた。」


ノアが村を出て巣に向かう途中、恐らく狩りから帰って来たであろうゴブリン共の姿を目撃。
最後の1体が洞窟へ入ったのを見届け、暫し経った後に昼間見付けた入口2ヶ所を土属性魔法で塞いだ。

最後の1ヶ所は頂上付近の開けた場所にあった。
草木に隠れ、一見しただけじゃ分からなかったが<気流感知>を使えば割と直ぐに見付かった。


「それじゃ頂上に着いたら始めるか。」






あー…疲れた…

明るくなってから暗くなるまでひたすら歩き続けたのに捕まえられたのはギャンギャン吠えてすばしっこい毛むくじゃら1匹だけ。

前は割といたのに最近あまり見なくなった。
今日はこいつの骨に付いてた肉を少し食べただけだ。
腹が減った…
皆反対側にある広い所で狩りをしようと言っているが、あそこにはニンゲンとか言うヤツがいて狩りが上手く出来ない。

むしろあいつらは俺達を攻撃してくる。
恐ろしい奴らだ。
ただ以前食べたニンゲンは旨かった。
毛むくじゃらより食べやすくて肉が柔らかい。

でもあいつらは強い。
前にニンゲンが1の時に仲間が3で攻撃したのに直ぐに殺された。
ニンゲン1に俺達3じゃ勝てない。
なら俺達が10なら?

俺達の棲み家から見えるニンゲンの棲み家には20いる。
俺達は仲間を集め、昨日暗くなる頃に10が20と3集まった。

これでニンゲンに勝てる。
行くなら明るくなってからが良いと思った。

やったぞ!棲み家から1抜けて19になった。
絶対勝てる。
そう思ったのに抜けた1が2になって戻ってきた。
ニンゲンが21、俺達は10が20と3、少し足りない。

暗くなる頃に何とか7を集めて来た。
皆腹が空いている。
でも明るくなってからニンゲンの棲み家へ行こう。
明日は腹一杯食べてやる。


ズガァンッ!ガラガラ…

ゲギャギャ!?ギャガガッ!?ゲゲァッ!?


寝ていたら大きな音が聞こえた。
真っ暗だから何が起こったか分からない。
仲間も訳が分からず騒いでいる。

少しだけ目が慣れてきたので周りを見ると、壁の向こうから何かが入ってきた。
前に食べた事がある、にょろっとした柔らかい棒みたいな生き物だ。
ただこいつはデカイ。

餌だ!そう思って仲間がこいつに襲い掛かったが


グルルルァアッ!! ガブジュッ!ザシュッ!


仲間が4体瞬く間に食われた。


ゲギャギャギギャッ!(逃げろ!今すぐ!)


仲間達は我先にと坂を登り、出口を目指す。


ギギャギャッ!?(出口が無い!?)

ギギギギギ!?(出口が塞がって、やめ…ぐげげ!?)


先程まであった出口に仲間達が殺到して何匹かが潰されている様だ。


ゲゲァッギギャッ!(上の出口を目指せ!)


仲間達が一斉に上を目指す。
すると続々と声が上がる。


ゲギャ!(外だ!)
ギョギャギ!(ここは塞がってないぞ!)
ゲギョッ…ゲゲギャッ!?(皆こっち…うぐぁっ!?)


一瞬悲鳴の様なものが聞こえたが、皆が騒がしく上を目指すのであまり良く聞こえない。

遂に上の出口直ぐ近くまで来た。
仲間が殺到してて出られそうにない、というか動く気配が無い。


ん?足元が濡れてる…
まぁ良い、そんな事気にしたって仕方ない。
中央部分に隙間があるから、仲間の体を登って外に出るとしよう。


ギェギギ!(痛い痛い!)
ギュガ…(うげぇ…)


体に登った位で大袈裟な…
そんな事を思って外に出ると



「はーい、いらっしゃい、さようなら。」

ザシュッ!  ゲギャギャ!? 


ノアは出口から飛び出して来たゴブリンの首を阿羅亀噛で撥ねる。


(『なるほどな、こりゃ効果的だな。』)

「だろう?出口付近に岩で杭を作っておけば奴らが勝手に突っ込んでくるだけだからな。
奴らの死体で出口が狭まってるから出てこれてもせいぜい1匹2匹…
そいつらを処理していく簡単な作業だ。」

(『それにしたって多くないか?反応見る限り、150匹はいるぞ…』)

「そうだな、割と規模が大きいみたいだから一応やっとくか。」

(『ギルドで貰った要請弾って奴か、やろうやろう。』)


ノアはアイテムボックスから要請弾を1つ取り出し、魔力を籠めて空へと放つ。
要請弾は目映い光を放ちながら空高く上がっていき、炸裂、光の波紋の様なものが広がっていった。


「これで少し待てば良いのかな?」

(『まだまだいるみたいだし、気長に待とうや。』)


ノアは目の前の出口から飛び出し続けるゴブリンを再び屠り始めた。
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