ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
146 / 1,117
アルバラスト編

ぬっはっはっはっは!

しおりを挟む
「ぬっはっはっはっは!良いぞ少年。それ位の威勢が無くてはな!
こりゃ絶対に敗けられなくなったわ!」


ぬっはっは笑いを初めて見たな、等どうでもいい事を思っていると30メル程離れた対面にいる獅子型獣人がガントレットをガンガンと打ち鳴らす。


 「さーて!お喋りはそこまでとして早速試合おうじゃないか!
我が名は【拳士】レオバルクハーミット!長ったらしいからレオと呼んでくれ!
血湧き肉踊る戦いに身を投じるのが好きなのでな!簡単には終わってくれるなよ!」

「僕はノア!【適正】は後のお楽しみという事で、こちらも簡単には終わるつもりはありませんのでそのつもりで!」


吼える様に放つ名乗りが広々とした闘技場に響き渡る。
レオの眼光がギラギラしているのが遠目で分かる。


「それでは始めぇ!」


職員が開始の合図を言い放つ。

レオは足元の石畳を踏み抜く勢いで一直線にノアに向け駆け出す。

対するノアは開幕行動に移る。
腰に差した阿羅亀噛を1本外し<集中><渾身><投擲術>を発動、向かって来るレオにぶん投げる。


「む!?武器を!?」


驚くレオだが速度は変えず左腕を構えて迎撃体勢を取る。

ゴシャアッ!「ぬぐぁっ!?」

構えた左腕に衝突した阿羅亀噛は、弾かれる事無く突き進み、ノアの3倍はあるであろうレオの体ごと吹き飛ばす。

試合場の壁に灯りが1つ灯る。
致命傷レベルの一撃と判断され無効化する代わりにカウントされた様だ。

吹き飛ばされたレオは何とか体勢を整えるも驚きを隠せない。


「何だ今の攻撃は!?少年は何をした!」


そう言ってる間に今度はノアがレオに向け駆け出していた。

腰に差していた阿羅亀噛を抜きつつ大きく飛び上がる。
再び<集中><渾身><投擲術>を発動してレオの元にぶん投げる。

「うおっ!?」ズゴン!

咄嗟に避けたレオ、阿羅亀噛は深々と石畳に突き刺さっている。

ノアは投げた直後、着弾を見届ける事無く直ぐ様背中の弓と矢を取り<集中><洗練された手業>を発動、滞空している間に4射程射ち込む。

ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!

レオはこれを少ない動きで回避、ノアの着地地点を目指す。

ノアは弓を背中に戻し、阿羅亀噛の柄に降り立つ。
同時にレオもその場に到着、ノアに向け右拳を繰り出す。
が、左太ももから取り出したカランビットナイフで<受け流し>を発動、右拳が空を切る。

ノアは左腕でレオの右腕に絡めて固定し、がら空きの左脇腹に<渾身>を乗せた右を打ち込む。

ズドン!「うぐぁあっ!?」

1発、2発と打ち込み、3発目で右腕を掴まれた為、その場で少しジャンプしてレオの胸辺りを<渾身>を乗せた両足でおもいっきり蹴り飛ばす。

掴まれた腕も力任せに解除され、レオの体は大きく吹き飛ばされ、土煙が立つ。
対してノアは蹴り飛ばした直後ひらりと身を翻してその場に着地、地面に突き刺さった阿羅亀噛を強引に抜き、レオの方に歩き出す。

チラリと壁を見ると2つ目の灯りが灯っていた。


「うぉおおおおっ!」


土煙からレオが飛び出しノアに接近する。
<気配感知>で分かっていたノアは地面スレスレまで屈みつつレオの股下を通り反転。
背後から膝裏を蹴り、体勢を崩したレオの右脇腹に強目の蹴りを入れる。

たたらを踏んだレオの足を刈り、転倒させた後馬乗りに。

太腿から刺突武器を2本取り出し首目掛け突き立てるも両腕を掴まれる。
だが細腕からは想像出来ない力で徐々に首元へと刃先が迫る。


「ぬ、ぬぬ…!ぐ、おぉぉあああっ!」


レオが吼えつつ力任せにノアの体を空中へとぶん投げる。
レオは飛び起きて後を追うように駆け出すも、滞空しているノアは錐揉み状態と言う無茶苦茶な姿勢のまま弓を取り、矢を2矢射て、レオの接近を阻む。
肩に矢が掠りながらも突き進んだレオは<渾身>を発動し、右拳を下から上へと振るい着地地点に落下してくるノアに繰り出す。

ノアは拳の動きに注視して足を出し、拳と足が触れる瞬間に<エネミーステップ>を発動。
繰り出される拳を足場に、前方に回転しながら地面に着地。
反転しつつ腰に差した阿羅亀噛を外し、背後から斬り掛かる。

右拳が空を切ったレオだが、振りを利用して背後にいるノアに左の裏拳を繰り出す。

阿羅亀噛と左拳のガントレットが衝突して凄まじい金属音と火花が散る。

ギュゴァッ!

レオは左拳を弾かれ錐揉み状態で吹き飛ばされ、ノアは2、3歩後退するに留まる。

3カウント目が灯ったレオは空中で身を翻して四つん這いの状態で地面に着地。
顔をガバッと上げて吼え掛かる。


「っはぁ!良い!良いぞ少年!ここまで苦戦を強いられる戦いは久しぶりだ!
残りカウントは2つ、出し惜しみしてはいられん!全開で行かせて貰ウゾォオオアアアアァッ!」


レオが叫ぶと徐々に鬣や牙が伸び、腕や脚が太く、光沢を増していく。
恐らく硬度が上がっているのだろう。


「お、バカ!レオ、【獣化】する気か!?」

「ソレホドノテアイダ!ソレニヤツノメヲミロ!コノスガタニナッテモヤツハドウジテスライナイ!」


そう言われた槍使いがノアを見ると、冷静に武器を拾い、腰に差す姿が目に入る。

(『おーおー、すげぇな【獣化】って奴は。
どうする、代わるか?』)

(やれる所までやってみるよ。)


【獣化】…獣人種が使う固有スキル。
街などで暮らす場合等、人型形態の時は本来の4割程まで力を抑えているが、獣化する事で全ステータスを本来の数値まで戻す効果がある。


闘技場中央の職員や周囲の冒険者も動きを止め、2人の戦いを見守っている。

完全に【獣化】したレオは、体躯が1.5倍程大きくなり、四つん這いになっており見た目は獣その物だ。

ゴォオオアアアアアッ!ズドン!

咆哮を上げたレオは先程とは明らかに違う速度で駆け出し、ノアはへと向け駆け出す。

対するノアは再び<集中><渾身><投擲術>を発動して阿羅亀噛をぶん投げる。

ガギュンッ!

レオの体に直撃するも僅かに動きを阻害するだけでそのまま真っ直ぐこちらへと向かって来る。
ちなみに4つ目のカウントは点かない、防御力も格段に上がっている事が窺える。

ザグッ!

ノアは残った阿羅亀噛を背後に深々と突き刺し迎え撃つ体勢を取る。
試合場の外から見ていた槍使いはノアに叫ぶ。


「おい少年!迎撃は無理だそこから逃げろ!」


そう言われてもノアはピタリと阿羅亀噛に足を着けて迎撃体勢を取ったまま動かない。


ゴァアアアアアッ!ガシッ!ガシッ!ボゴゴゴッ!


レオは深々と突き刺した阿羅亀噛ごとノアの体を押し込む。
石畳が次々に捲れ上がり、石礫を撒き散らしながら突き進み、壁際まで押し込まれた。

レオは密着状態で左腕を振り下ろして強烈な連撃を繰り出す。
ノアは右腕でいなしたり、防いだりするが数発程良いのを貰って少しよろめき1つ目のカウントが点灯する。

ここだ、とレオは猛攻を続けるが、ふと両手首を掴まれたので無理矢理力で外そうとするも、びくともしない、逆に凄まじい力で掴まれて徐々に手から力が抜けていく感覚すら覚える。


「これを人に使うのは2回目だ…」


ノアの体から赤黒いオーラが立ち昇り、それと同時に殺気も放たれレオが体を竦ませる。


「ナ、ナンダ!?コノサッキ『ゴギンッ!』

「ウゴァッ!」


端から見たら軽く小突かれただけに見えたが、食らったレオにとっては少し深刻で、視界がぐらついていた。


「よくは知りませんがその【獣化】とやらは恐らく奥の手か何かでしょう。
であれば僕も奥の手を使わないとね…
こっちも全開で行きます。」


ノアは赤黒く染まった目で言い放った。
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~

テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。 しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。 ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。 「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」 彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ―― 目が覚めると未知の洞窟にいた。 貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。 その中から現れたモノは…… 「えっ? 女の子???」 これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

処理中です...