ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
147 / 1,117
アルバラスト編

中級冒険者のルディア

しおりを挟む
俺は中級冒険者のルディア、【槍】の適正を持っていて普段はこの街『アルバラスト』に拠点を置いている。

パーティメンバーの【忍】朧、【拳士】レオ、【槍】ルディアの3人で組んでいる割と名の売れたパーティだ。

今日この街に変な冒険者がやって来た。

ゴブリン200体を倒したと言い、報酬金を見ず知らずの奴に渡したり、野盗3人捕まえた事で今まで進捗しなかった野盗壊滅がもう間近まで迫ったり、変に人脈あったり、変に場馴れしてて大人びてたり、極め付けに諜報部が出て来たり…


ははーん、アイツもしかしてどっかの貴族の坊っちゃんが世直しの真似事で世間を放浪中とかそんな所かな?


現場叩き上げの俺達が世の中そんな上手く行かないことを教えてやらないと。

そんな事を思って夜中メンバーのレオと飯食ってたらあの坊主ワイバーンステーキ食ってんだもんな。
機会を伺って坊主を闘技場まで誘ってみた。
レオは元々戦闘馬鹿な所があったから取り敢えず戦ってみたいと言ってたし丁度良いだろう。

さて、どの程度で音を上げるかな。


「お、バカ!レオ、【獣化】する気か!?」

「ソレホドノテアイダ!ソレニヤツノメヲミロ!コノスガタニナッテモヤツハドウジテスライナイ!」


レオに言われて坊主を見るが、先程ギルドで見た表情そのままだ。
平然とさっき自分でぶん投げた剣を腰に戻している。
何故、何故そんな落ち着いていられる、レオの【獣化】は見た目はまんま魔獣だぞ?



流石に速度が段違いに跳ね上がった事で坊主が受け止め切れなくなったか…ここまでだな…
いや、それ以前にレオは通常状態でも十分強いんだぞ?
バトルベアとタイマン張れるんだからな…


『ゴギンッ!』

「ウゴァッ!」


試合場の方から金属で金属を叩く様な音が聞こえてレオが倒れる。
顎に食らった様だ、少しふらついて…え?何だ…アレは…


「うわー、鎧蜂よりは柔いけど大分防御力上がってるな…」


ノアの眼は赤黒く染まり、赤黒いオーラを立ち昇らせたノアがレオに歩み寄る。
何とか回復したレオは突進を仕掛ける。



グルォアアアアア『ガシッ!』グフッ!?


ノアは、口を開け猛烈な速度で噛み付きを行って来たレオの下顎を掬い上げ、力任せに地面に叩き付ける。

ドゴァアッ!ウグァッ!?

(割と強目に叩き付けたハズだがカウンターは灯らないか…って事はこれは"壊す"つもりで戦わないとなぁ。)

ニタリと嗤うノアの表情に恐怖を覚えるレオ。

ノアは拳を振り下ろし顔面を殴り付ける。が、寸前の所でレオはこれを回避、破砕する石畳の礫が顔を叩く。

地面を1回転がり直ぐ様起き上がったレオは吼え掛かる。


「ナンダソノスガタハッ!?」

「姿に関してはお互い様です、さっき言ったじゃないですか、勝ったら教えるとねっ!」


ノアはレオに向かって急速に接近を開始、僅か2秒程で肉薄する距離まで接近。

するとレオの口先に魔方陣が発生。


「エクスプロージョン!」


ゴバァアアアッ!

レオの目の前で大爆発が発生、爆炎が吹き荒れるも

ゴギィンッ!ウゴォアッ!?

「魔法使えたんですね!目の前で爆裂魔法撃たれるのは2回目ですよ!」


ノアは臆する事無く爆煙の奥から拳を繰り出してレオをぶん殴る。
その代わりに爆裂魔法を諸に食らった為2つ目のカウントが灯る。


「フザケルナ!エクスプロージョンダゾ!?セメテヒルメ!」

「攻撃力は魔方陣で無効化されるんですから後は持ち前の<火耐性>でどうとでもなるっ!」


爆煙から飛び出したノアがレオに迫る。
予想外の行動でレオの思考は止まり掛かっており、ノアの接近を止める為エクスプロージョンを連発する。


「エ、エクスプロージョン!エクスプロージョン!」


ノアは連発される爆裂魔法をギリギリで回避、後方では何発もの爆裂魔法が炸裂、闘技場内は爆音が響く。

再びノアの目の前でレオの口先に魔方陣が展開、するとノアは魔方陣ごとレオの口先を掴む。


「一蓮托生ってねぇ!」


ドガァアアアンッ!グォアッ!?「あっはっはー!」


レオは4つ目、ノアは3つ目のカウントが灯る。
今度は爆煙の奥からレオが飛び出して来た、口元からは未だに黒煙が立昇る。

オオラァアアアアッ!ドガァッ!

レオが<渾身>を乗せた拳を繰り出すとノアは顔面に諸に食らう。
ノアの4つ目のカウントが灯る。
ノアがまともに食らった事に違和感を覚えるレオ。


「そっちから接近してきてくれてありがとうございます!」


ノアは顔面の腕を引っ張り足を刈って押し倒すと拳を握って<渾身>を発動。

レオも拳を握り込むと同時にガントレットに嵌め込まれた装飾が光だし、拳に魔方陣が展開。

両者ほぼ同時に拳を繰り出し同時に互いの顔面に撃ち込まれる。

レオからは爆裂魔法とパンチの同時攻撃による爆裂拳を繰り出し空中に火柱が上がる。

ノアは純粋な攻撃力を込めた拳を撃ち込み、着弾地点を中心に直径5メルの石畳を破砕、爆炎と土煙が立ち昇った所で両者同時に試合場から弾き出された。





「おーい、お2人さん大丈夫かい?」


試合場の外で【獣化】が解除されたレオが大の字に寝転び、【鎧袖一贖】を解除したノアが尻餅を付いて項垂れていた。


「あー大丈夫です…"アレ"使った反動が来てるだけですので。」

「何なんだよ、坊主さっきのアレは…まぁ良い、おい、レオ大丈夫か、って聞いてるだろ?」

「大丈夫だ、くっくっく…あっはっはっは、あー負けた負けたぁ!
負けてこんな清々しいのは久しぶりだ!」

「何言ってるんですか、最終的には相討ちでしたよ?」

「何を言う、少年の【適正】は知らんが俺と同じ土俵に立って奥の手まで使った。
最後まで拳で戦おうとしたが魔法を使って搦め手まで駆使した上での引き分けだ。
これはもう負けと同じだ、だが悔しいといった感情は無い。
非常に楽しい戦いだったぞ!」

「もし機会があればまたやりましょう。」

「ああ。ルディア、お前はどうする?」

「あのな、純粋な火力だけで言ったらパーティで最強のお前が勝てなかったら俺が敵う訳無いだろ、それに…」


ルディアが試合場の方を見たのでノアとレオがそちらを向くと、試合場の石畳が所々破砕し、その下にある魔方陣が剥き出しになっている為、職員が総動員で修復作業にあたっていた。


「こんな状況じゃ暫くは無理だろう?」


その後ノアとレオは職員達に謝罪、職員達は気にしないでとは言ってたが、使える様になるには半日程掛かるとの事だ。


「うぐ…痛たた…俺らはこの後宿に戻るが、少年はこの後どうするんだ?」

「そうですね…腹減ったので取り敢えず食品街にでも行ってますかね。」

「「そ、そうか…」」


激戦で疲れきったレオに対して軽い足取りで地上を目指すノア。
その後ろ姿を見たレオはポツリと呟く。


「完全に負けたな…」 
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった

海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。 ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。 そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。 主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。 ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。 それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。 ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...