ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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アルバラスト編

うんざり

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ノアは現在うんざりした顔で道を歩いている。
何故なら目の前に大剣を肩に担ぎ、鼻息荒くノアを睨み付けるジュラとバグラが立っていた。


「おい、糞ガキ!俺達と勝負しろ!」

「…は?」

「さっきの勝負の続きだ!」

「ああ、さっき勝手に勝負仕掛けてきて速攻で負けた勝負の続きですね?」


煽る。


「ぐっ…ああ、そうだ!次こ「嫌だよ、めんどくさい。」

「何だと!?ふざけるなよ!」

「ちょっと静かにして貰えません?お仲間さんにやられた魔法でまだ体力が戻ってないんですから。」

「んな事知った事か!良いから俺達と勝負しろ!」

「それこそ"んな事知った事か"だ!
さっき速攻で負けたくせに続きですって?
子供でももう少し良い言い訳思い付きますよ?
どうせ時間稼ぎ、足止めでも任されたんでしょう?」

「「ぐぬっ…」」

「え!?当たっちゃった?
お二人さん顔に出やすいって言われません?」

「うるせぇ!」ブォンッ!


バグラがイラついて持っていた大剣をノアに振るうが、顔を少し引いただけでかわされてしまった。


「落ち着いて、落ち着いて。
表情と鼻息、目の動きで何するかバレバレ。
先程の余裕綽々なキャラはどうしたんです?
無駄な力が抜けて動きが読み辛かったのに。
何でしたっけ?「なぁ」のジュラと「ねぇ」のバグラでしたっけ?」

「「だぁまれぇぇっ!」」


再びジュラとバグラが大剣を振るう。
ノアは瞬間的に【鎧袖一贖】と<渾身>を発動、振り下ろされる大剣ごとジュラ、バグラの体をぶん殴り、それぞれ一撃で仕留める。





「あーあ、やっぱり駄目だったか。」

「まぁ、2分位は稼いでくれたな、お陰で準備が整ったぜ!」

「よし、やってくれ。」


ジュラとバグラが倒された事を露程も気にしていないデッドはゼノに召喚を促す。

ゼノは腰に付けていたアイテムボックスから小袋を取り出し、白い欠片を魔方陣へとばら蒔く。
すると魔方陣の光が強さを増す。


「いやーホントこの街の近くに竜種ダンジョンがあって助かったぜ、触媒となる素材が幾らでもあるからな。」

「俺らのギルドを潰しやがったあの街の領主め…
今度は俺らが奴の街をぶっ潰す番だ!」

「…しかし俺達にとっての最大の脅威が【無血開城】じゃなく…
あんなガキとはな…」


ゼノとデッドの視線の先では、回収した阿羅亀噛を両手に携えたノアが迫ってきていた。








(『何か光が強くなってないか?』)

「よく分からないけどもう少しで何かが召喚されそうだってのは分かる、阻止するぞ!」

(『合点!』)


阿羅亀噛を携えたまま、前方の集団へ向けて猛然と走り出す。






「召喚獣が出てくるまで全力でアイツを近付けさせるなっ!
ゼノ!お前も前出て戦ってくれ!」

「了解!」


召喚陣から飛翔したゼノは【召喚】から【魔拳闘士】に変化し、ノアに急速接近。
指にはめた装飾が赤く光り、拳に魔方陣が展開される。


「初めましてだなぁ少年!こいつを召喚するのは骨が折れるんだ!邪魔はさせねぇぞ!」


繰り出される拳に合わせる様に阿羅亀噛の側面を叩き付ける。


ドグァアッ!「うおっ!?」


ゼノの拳から炎が吹き荒れる、拳と炎を受けた阿羅亀噛はびくともせず、ゼノを吹き飛ばす。


「おいおい、その剣何で出来てやがる!?」


空中に打ち上がったゼノは文句を垂れながらも身を翻して体勢を整える。
足に装着された装飾が薄黄緑に発光するとそのままの姿勢で滞空する。


「【魔法使い】?いや【拳士】か?…」


ノアがゼノの攻撃を見て【適正】を推察していたが、考える暇を与えない様に前方からナイフが3本飛んで来る。

それを払い、地面に突き刺さると前にいた男がゼノに向かって叫ぶ。


「今だ、やれ!」


男の合図と共にゼノが空に向かって電撃を放つと地面が照らされ、ノアの足元に影が出来る。
その影から黒い帯が伸びノアの体に絡み付いていく。
アルバも使用していた<影縫い>を発動したのだ。


「ありがとよ、デッド!これでも食らって消し炭になれや!『紫電雷殴』」


滞空していたゼノが今度は勢いよくノアに向けて加速しつつ落下していく。
続け様に『紫電』『サンダーストライク』『雷鳴拳』三重の術式が描かれた魔方陣を拳に展開、身動き取れないノアに向け打ち込む。が


「おぉおらあああっ!』ゴバアァッ!

バガアァッ!「うごぁっ!?」


【鎧袖一贖】を発動したノアが<影縫い>で固定された地面や岩を力任せに引っ剥がし、飛来して来たゼノにぶち当てる。

諸に直撃したゼノの右腕は複雑骨折の上、内臓も数ヶ所破裂しており半死半生の状態であった。


『オォオオオオオオッ!』


未だに土石と繋がったままのハズなのに重量を無視して猛烈な速度で赤黒いオーラを纏ったノアがデッドや【魔法使い】らに接近を仕掛ける。


「…マジもんの化け物じゃねぇか…」


ほぼ勝ち目は無いが、デッドは最後の悪足掻きに入る。

【野盗】から【斧】に変化したデッドはアイテムボックスから自分の身の丈以上の斧を取り出し、肩に担ぐ。


「<身体強化>!」


デッドが後ろを振り返ると【魔法使い】らがなけなしの魔力を振り絞り、強化魔法や支援魔法を飛ばす。

再び前を向いたデッドは叫ぶ。


「今日限りのパーティだったがお前らとこんな化け物みてぇなガキと戦えた事を誇りに思う!楽しかったぜぇ!」


目の前まで迫るノアが巨大な土石塊を振り上げつつ<渾身>を発動、ゼノは斧に力を込めた上で<渾身>を発動。


「喰らいやがれぇ!【地轟爆戦斧】!」


ゴバァアアアアアアッ!


お互いの火力は凄まじく、ノアの繰り出した土石塊の一撃で生じた衝撃波で地面に陥没痕が出来、周囲に10メル程に地割れが発生。

デッドの【地轟爆戦斧】を受けたノアは30メル以上も後方に吹き飛ばされた。

周囲にいたデッドや【魔法使い】らも衝撃波によって各々散り散りに飛ばされた。




ドガァッ!「うごぁっ…!?」


街の方まで飛ばされたノアは受け身が取れないまま地面に叩き付けられ、大量の血吐き出す。


「う、ぐっ…ごふっ…ぶふっ…」ビチャチャッ


ノアはアイテムボックスから回復玉を3個取り出して握り潰し、口の中に流し込む。
中々入っていかないが何とか飲み込む。


「「ノア様、大丈夫ですか!?」」

「おい、大丈夫か?ノア君!?」


ノアの元へルーシー姉妹が、続けてジョーや冒険者等が続々と到着する。


「…と、取り敢えずこれで全員片付いた…ハズです…ごふっ…」

「そんな事はどうでも良い。無茶苦茶が過ぎるぞ!」


ノアはアイテムボックスから万能薬とチノアラシの針を取り出し、応急処置をする。

大分マシになったノアが徐に立ち上がる。


「まだ…召喚陣がまだです、早く壊さないと…」


そう話すノアだが、周囲にいる冒険者らが呆然とした様子で前を見ている。

ノアも前方に目をやると魔方陣から双頭の竜が顔を出しており、体表から何かが地面に滴って煙を出していた。


「何てもんを喚びやがって…」


アルバが苦虫を噛み潰した様な顔をする。
竜の正体を知らないノアにジョーが双頭の竜の名前を伝える。


「ノア君、あれはねヒュドラって言う竜なんだ。」

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