ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
156 / 1,117
アルバラスト編

「………!」

しおりを挟む
「………!」

「………!?」

バシュッ!

「あ!解除されました!」

「おい大丈夫か!?…うわ!?何だこりゃデバフ山盛りじゃないか!
おい!ノア君!聞こえるか!」


「…う…しまった、意識飛んでたか…」

「「ノ、ノア様大丈夫ですか!?」」


【魔法使い】らが発動した各種デバフとデッドが放った『隔絶』により音が遮られていたノアは僅か数分とは言え意識を失っていた。

あの後『転移』されたノアを発見した商人の護衛達がジョーや冒険者に連絡、直ぐに駆け付けるも『隔絶』の解除が出来ずにいた。

数多くの爆裂魔法を受け、凌いだりした為ノアの皮膚は所々焼け爛れ、意識も無い為安否が不明であった。

皆が手をこまねいているとデッドが次の手を発動、その対処に冒険者が総動員されているとの事だ。


「ノア様口を開けて下さい、はい、アーン。」

「あ、あーん…」


デバフだけならまだしも石柱と氷の棘で身動きが取れない為、ルーシー・ラベルタが手ずから万能薬をノアに飲ませる。
こういう事に慣れてないノアは何だか恥ずかしい思いで一杯である。

何故かルーシー・ラベルタは顔を赤らめ、ラーベは羨ましそうな顔をしているのが気になる。


「…むんっ!」バキッゴキッバゴッ!ガラガラ!


万能薬を飲んだ事でデバフが幾つか解除され、少し力が戻ったノアは石柱と氷の棘を自力で破壊。
拘束が解除されるが、地面に膝を付く。


「ぐっ…おかしいな…全部解除されてないな…」

「そりゃ10個以上のデバフを解除するのに万能薬1本じゃ無理だよ。
ほら、もう1本。」

「あ、どうも…」グヒビ。


万能薬を2本飲んだ事で火傷状態が解除され、一応戦える状態までは戻ったが体力までは戻らない。


「あー…あのバイタルドレインとか言う体力持っていかれるのが一番しんどいな…」

「体力は自然回復しかないからね。」

「一応回復効果のある固有スキル持ってますが、アイツら何かの準備してたからまだ使うかどうか迷うんですよね…」

「準備?覚えてる範囲で教えてくれるかい?」

「何か地面に大きな魔方陣描いてて、1人の男がその魔法陣に手を付けて魔力を流してました。
その周りで3、4人の【魔法使い】が男に手をかざしてましたね。」


ノアの大雑把な説明を聞いたジョーとルーシー姉妹は何か思い当たる事がある様で


「何か召喚するつもりでしょうね。」

「ですね。」

「だよなぁ…」

「召喚ですか…」

「基本的に魔方陣の大きさで召喚されるモンスターの大きさや強さが変わりますし、消費する魔力量や時間も異なります。
恐らく【魔法使い】達は魔力供給をしていたのかもしれません。」

「そうですか…何にせよ奴等の所まで行かないといけませんね。」

「その事なんだが今は厳しいと思うよ。」

「え?…そういえば、他の冒険者が総動員してるって言ってましたね?」

「見て貰った方が早いだろう、付いてきて欲しい。」


そう言って北門の近くまで行くと何人もの冒険者が座り込んでおり皆疲弊している。
門の外からは冒険者の声やモンスターの咆哮が聞こえてくる。


何か嫌な予感を感じたノアが門の外に出ると大量のゴブリンとウルフが押し寄せ、それを冒険者や兵士、アルバ等が抑えていた。


「お!少年!無事だったか!」


声のした方を見るとアルバが駆け寄ってきた。
他の冒険者もノアが来たのを横目に、目の前の敵で手一杯といった感じである。


「アルバさん、戦況は?」

「君が飛ばされた直後、奴は継続的にウルフやらゴブリン等を召喚し続けている。
恐らく時間稼ぎの為に魔力消費が少なく、量を重視して低級モンスターを喚んでいる様だ。
1匹1匹は弱いがこの数じゃ…」

「アルバさん!もう持ちません!応援を!」

「くそっ…すまないノア君、直ぐに戻らなくては…」


<気配感知>の範囲内に70を越えるモンスターの反応があり、冒険者らでは持ち堪える事が厳しくなった様だ。

ノアは咄嗟にバーサークベア並みの<殺気放出>低級モンスター共はびくりと体を強張らせ、動きを止める。

その隙を見逃さすハズが無いノアが叫ぶ。


「グリード!そいつらを食っちまえ!」


ノアが叫んだ瞬間、冒険者達が抑えているモンスターの群れに向かって地面から飛び出した何かが突撃し、反対側へと抜け、再び地中へと潜って行った。

ドバァッ!             ゾリッ!             ズボァッ!

すると先程までけたたましかったゴブリンやウルフの鳴き声や咆哮がピタリと止み、頭部や腕、体の一部を残して地面に落ちる。

冒険者や兵士、アルバやジョー、ルーシー姉妹も何が起きたか分からず声を発さないでいる中、朧とノアが餌やりをやっている所を見た兵士だけが事態を飲み込めた。


『彼は"アレ"を呼んだんだ』と。


ノアは<殺気放出>したまま押し留めていた冒険者らに近付き声を掛ける。


「お疲れ様です、引き続きここの事はお願いします。」

「あ、ああ…君は何をしに?」

「捕縛の途中だったので再開しないと。
それと後はこの子の食事ですかね。 」


そう言って地面を指差す。


「…やっぱり今のは君が…?」

「ええ、申し訳ありませんがこの子の事はあまり喋らない様にして下さい。
あとすいません散らかしちゃって…
ほらグリードちゃんと後片付けしないとね。」


そう言うと地面に落ちたモンスターの一部等が土の中に吸い込まれていき、地面の下から破砕音が響く。
その音を聞いただけで周りの冒険者が息を飲む。


「僕の契約獣なのでご心配なさらず。
さ、行こうかグリード、こっちにやって来るモンスターは全て食って良いからな。」


そう言い残して再びノアはデッドらの元へ駆けて行くのだった。









ウルフやゴブリン等の低級モンスターを召喚し続けていたデッドは、街の連中に時間稼ぎしつつもボコボコにやられたジュラとバグラの治療を行っていた。


「よし…っと。お前ら起きろおら!」

「ぐ、む…」

「いてて…」

「起きたか、早速だがお前らはこの場で待機、ゼノの護衛か魔力供給に当たれ。」


目覚めたジュラとバグラの2人はデッドから受けた指示に耳を疑う。


「ちょっと待て!俺達は遊撃のハズだぞ!」

「その遊撃が「殺って来て良い?」とか抜かした挙げ句、僅か数分後に瞬殺されてボロボロんなって帰って来たんだ!
野盗は全滅、あの坊主の迎撃と時間稼ぎ、召喚に加えてお前らの治療で全員魔力がかつかつなんだよ。
足止めにもなってねぇ奴が偉そうな事抜かしてんじゃねぇ!」

「「瞬殺って…」」

「何言ってるんだ?現に俺達はこうしてここに生き「生かされたんだよ。」


召喚陣の所で魔力を注ぎ続けるゼノが2人に告げる。


「あの坊主はアホみたいな攻撃力してるのに重傷者はいるが殺しは一切やってない。
お前、ぼろ雑巾にされても実際には生きてたろ?」

「ぅ…うるせぇ!?アイツが…あのガキが手加減したってのか?俺達に!?」

「そもそもお前ら、本当に剣術得意なんか?」


ゼノの一言に固まる2人。


「お前ら、新人冒険者やら動物と戦ってる所は見た事あるんだが、モンスターや商人とかと戦うって時いつも「気が乗らねぇ」とか言って参加してなかったよな?」


デッドも参加して2人を追及する。


「うるせぇな!デッドだって指示ばかりで何もしてねぇじゃねぇか!」

「お前らが気ぃ失ってた時にあの坊主が1回ここまで来たんだが、召喚まで15分って絶望的な時間を死守してくれたんだぞ?【魔法使い】の連中と連携してな。」

「そんなに気に食わないんなら足止めして来いよ、その為に送り込んでるんだぞアレ。」


デッドが街の方を指差して告げる。
街の方からは召喚されたウルフやゴブリン等の騒がしい声が聞こえる。


「お、俺達にゴブリンやウルフと一緒に戦えってのか!?」

「俺と【魔法使い】らがやったのは精々が足止め程度だ、直に拘束も解けてまたここにやって…!?」


その場にいた全員が言葉を失う。
数秒前まで聞こえていたゴブリンやウルフの鳴き声がピタリと止んだのだ。

目を凝らして見ると誰かがこちらへ向かって歩いて来ている様だ。


「ほら、お前らが毛嫌いしたゴブリンもウルフもいなくなったぞ?
舞台が整ったじゃないか。
召喚まであと少しある…足止め、頼んだぞ?お二人さん。」


手をヒラヒラと振って送り出すデッド。
送り出された2人は内心腸煮えくり返っていた。


「馬鹿にしやがって、クソが…」
「ガキ1人位どうって事無いぜ…」


ブツブツと小声で呪詛の様に呟きながらジュラとバグラはノアの元へ駆け出して行った。
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった

海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。 ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。 そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。 主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。 ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。 それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。 ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...