ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
165 / 1,117
アルバラスト編

『うーむ…』

しおりを挟む
(『うーむ…』)

(どうしたの?ヒュドラとの戦いの後からずっと考え事してるみたいだけど。)

(『今回この街に来てからと言うものの滅茶苦茶被弾してるだろ?』)

(あー、すまない。避けきれない物が多くてね…)

(『いや、そこは良い。
至近距離の爆裂魔法を避けろって方が無茶な話だからな。
今までお前さんの自力頼りで攻撃面ばかり強化していたからな。』)

(つまりこれからは防御面を強化すると?)

(『まぁそういう事だ。
一応当てはあるし、何ならもう既に取得は可能だ。』)

(へー、それはどういった物なんだ?)

(『ほい、これだ。【鬼鎧殻】と言う。』)


【鬼鎧殻】を覚えました。


【鬼鎧殻】…体表面に高い防御性能を誇る生体鎧を生成。
全身鎧化または部分展開可能。
発動中は攻撃力、敏捷性が2割程下がり魔力を消費する為、連続使用には注意が必要。
【鎧袖一贖】【一鬼呵成】との併用不可。


(鎧か…取り敢えずどこかで練習が必要だな…
どれだけの防御性能があるかも知りたいから相手も必要になるな…)

(『まぁ、時間はあるんだしのんびりいこうや。
取り敢えず飯だ、飯。』)


『俺』に促されて口元まで運んでいたワイバーンステーキをパクリ。


「さっきから固まってたけど、どうかしたのかい?」

「あ、いえ、少し考え事を…」


現在ノアは街の食品街で朝飯の真っ最中。
ワイバーンステーキの味が忘れられずに再び屋台に来ていた所だった。


「飯食ってる時位無心で食べた方が良いぞ?
美味いものも不味くなっちまう。」

「はは…そうします。」





「ご馳走様でした、お代の2万ガル置いておきます。」

「ああ、今日は1万ガルで良いよ。」

「え?半額じゃないですか、何でまた?」

「昨日、君が戦ってる所を防壁の上から見てたんだ。
聞く所によると野盗200人を相手にした上に化け物と戦ったらしいじゃないか。
俺達はこの街を盗られちまったら全てが終わっちまう、これが私が出来るせめてもの恩返しって訳だ。」

「そういう事ですか、感謝します。」

「それに周りの屋台を見てみな、さっきからお前さんの事ジロジロ見てるぞ?」

(あぁ、通りでさっきから視線感じたのはそういう事か。)

「恐らく他の屋台行ってもそれなりにサービスしてくれるだろうよ。」


そう言われたノアは屋台を離れて他の屋台を回る、その都度タダで串焼きをくれたり飲み物を貰ったりした。
最初のステーキ以外殆どお金を払わずに満腹にまで達する事となった。


一先ず食品街を抜けて街の広場辺りに来ると未だに隊員達によって野盗らの仕分けが行われていた。
流石に400人ともなると1つの奴隷商人では対処しきれない為、今回10の奴隷商がこの街に集まっているらしい。


ちなみに奴隷には大きく分けて3種類いる。

1つ目は犯罪奴隷、分かりやすいのは野盗等の犯罪を犯した者がこの区分に入るらしい。
更にその中でも罪の重さによってランクがあるらしく、本当にどうしようも無い者は『処理』されるとの事。

2つ目は借金奴隷、親の借金のカタだったり、散財や事業の失敗等で多額の借金をしてしまった者がこの区分に入る。
男性であれば労働等で返す事が出来、女性ならそれに加えて性奴隷としても需要があったりする。
ちなみに完済すれば自由の身である。

3つ目は戦争奴隷、捕虜となった者、戦火に巻き込まれたりして身寄りの無い子等がこの区分に入る。
『奴隷』という名はあるが一種の保護の様な役割も担っている。


(まぁ今の僕には縁遠い事かな。)


「さて、腹ごしらえも済んだし魔力もある程度回復した。
また道の整備にでも行くとしよう。」


北門を出ると数人の大工が守衛所を建てていたり、柵の設置等、道以外の整備が着々と進んでいた。


「魔力回復したので戻って来ました。」

「お、もう良いのかい?それじゃ、引き続きよろしく頼むよ。」


現場監督の職員に声を掛けたノアは再び地面に手を付けて魔力を流す。
10分掛けて今度は30メル程の道の下地が出来た所で魔力が尽き掛ける。


「うへぇ…頭痛ぇ…
すいません、また少し休憩します…」

「いやいや、そりゃこの依頼1人でやってるんだし仕方無いさ。
でももう半分か、やはり予定より早いな…
よし!君、あと半分の下地を作った段階でこの依頼を完了としよう。」

「え?良いんですか?」

「ああ、構わない。
ここは他の依頼より大分進んでてね、言ってしまえば他の依頼の方はまだあまり進展していなくて職員の手が大分余っているんだ。
均し作業なら職員でも出来るから後はこちらで何とかするよ。」

「そうですか、であれば報酬金は減額して下さい、途中みたいなものですから。」

「ははっ、そこは気にしなくて良いよ。
元々この依頼は数人規模での予定で設定した金額だからね。
それに聞く所によると君、昨日の防衛戦で相当活躍したそうじゃないか。
戦い終わりに碌に休んでもないままこの依頼をやってるんだろう?
早く終わらせてゆっくりしてくれ。」

「分かりました、それでは厚意に甘えさせて貰います。
魔力が回復したらまた作業に戻ります。」


職員に断りを入れて門の近くの壁際へと向かい、壁に寄り掛かって少し休憩をする。


「ふー…」

「お疲れの様だね。」

「そーですね、親と訓練した時も魔法の訓練はしてこなかったもので…」


音も無くノアと同様に壁に寄り掛かっているジョーが声を掛ける。
が、あまり動じていないノアに驚いている様だ。


「おや?あまり驚いていないね?」

「もう何度目になるか分からないですからね。
<気配感知>じゃ気付けないので別の<スキル>で探す事にしたんです。
そうしたらやーっと数秒前に気付く事が出来ましたよ、ですがまだ少し馴れなくて…」

「…ほう、どうやって気付いたんだい?」

「それはですね、<ね「「ジ、ジョーさん、ここに居られましたか。」」


北門から声が聞こえたのでそちらを見ると、ルーシー姉妹がげんなりした様子で立っていた。


「「たまに本気で気配消すの止めて下さい、探すのが大変なんですから。」」

「ははっ、ごめんごめん。それで例の件はどうだい?」


ルーシー姉妹とジョー話を始めようとしたのでそっとその場から離れようとしたが、ジョーからこの場に残るよう促された。
どうやら例のヒュドラ絡みの話らしい。


「「商人、大学関係者や研究者らは明日の早朝にはこの街に到着との事です。」」

「え?今朝の話ですよ?そんなに早く来るんですか?」

「それだけヒュドラの素材は皆喉から手が出る程欲しい貴重な素材なのさ。」

「「そしてこちらが例の物になります。
時間が無かったので取り敢えず100枚程用意しました。」」


そう言ってジョーに小袋を手渡す。


「うん、ありがとう、それじゃ取り敢えず暫く自由にしてて良いよ。」

「「畏まりました。」」


ジョーとの話が終わったルーシー姉妹がくるりと反転してノアに挨拶をしてくる。


「「ノア様、昨日はお疲れ様でした。」」

「お2人も昨日はありがとうございました。
お陰で戦略の幅が増えました。」

「「正直な話、支援魔法を敵に放って殲滅速度が上がるとは思いもしませんでした…」」

「まぁ、超限定的な戦略ですがね。」

「「でも楽しかったです。
またいずれ貴方様と御一緒に戦える事を心待ちにしたいと思います。」」


妙にキラキラした目で姉妹がノアに深々と頭を下げて来る。
すると『俺』が中からある事を呟いてきた。


「ルーシーさん、この後時間ってありますか?」
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

『山』から降りてきた男に、現代ダンジョンは温すぎる

暁刀魚
ファンタジー
 社会勉強のため、幼い頃から暮らしていた山を降りて現代で生活を始めた男、草埜コウジ。  なんと現代ではダンジョンと呼ばれる場所が当たり前に存在し、多くの人々がそのダンジョンに潜っていた。  食い扶持を稼ぐため、山で鍛えた体を鈍らせないため、ダンジョンに潜ることを決意するコウジ。  そんな彼に、受付のお姉さんは言う。「この加護薬を飲めばダンジョンの中で死にかけても、脱出できるんですよ」  コウジは返す。「命の危険がない戦場は温すぎるから、その薬は飲まない」。  かくして、本来なら飲むはずだった加護薬を飲まずに探索者となったコウジ。  もとよりそんなもの必要ない実力でダンジョンを蹂躙する中、その高すぎる実力でバズりつつ、ダンジョンで起きていた問題に直面していく。  なお、加護薬を飲まずに直接モンスターを倒すと、加護薬を呑んでモンスターを倒すよりパワーアップできることが途中で判明した。  カクヨム様にも投稿しています。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

処理中です...