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アルバラスト編
『冷却中です、触らないで下さい。』
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『冷却中です、触らないで下さい。』
地面に突き立った阿羅亀噛のすぐ横に立て札が立てられ、触らない様に注意喚起がなされている。
エルベストとのやり取りを見ていた野次馬が剣の周りに立ち、一種の観光名所の様になってしまった。
冷えるまでの間、ヴァンディットと共にワイバーンステーキを食べていた。
「いやぁ、話には聞いてたが本当に強いんだなぁ君…」
「私も戦闘を見るのは初めてですがお強いのですね。」
「相手が只の酔っ払いだったから対処が楽でした、召喚獣出すとは思いませんでしたがね。」
「いやいや、あの酔っ払いはどうやら闘技大会の覇者らしいんだ。」
「闘技大会…」
「はぁ…」
冒険者生活1か月目のノアと、戦争奴隷として商会でずっと生活していたヴァンディットでは、王都の事など知る由も無い。
「毎年各大学から選抜された優秀な学生同士が戦って1位を決める大会があるんだ。
はい、ステーキお待ちどう様。」
「へー、でさっきのが覇者ですか。」モグモグ
「そうは見えませんでしたね…あむ。
ん!?凄く美味しいです!」
「ははは、そうでしょう、そうでしょう。」
「で、その覇者さんが何でここに?」
「さぁてね「明日のヒュドラ素材の買い付け目的で来てたんだ。」
屋台の主人との会話に割って入って来たのはベルドラッドだった。
「あ、ボルボロッ「まだ言うか。」
ベルドラッドの後ろを着いて来ていたライリが顔を真っ赤にして顔を伏せる。
「すいませんベルドラッドさん。
それで、さっきの人がヒュドラ素材を買いに来てたんですね?」
「ああ、ある密「じゃあ、アイツに売るのは止して下さい。
どんな理由があれど、ああいうヤツに買われたら碌な事になりませんからね。」
「え、あの…」
「お代、ここに置いて行きますね。
さ、ヴァンディットさん行きましょうか。」
「は、はい…」
「あ、ちょっ、ノア君…」
「なーんか理由があるみたいですけど、そんな事こっちは知ったこっちゃ無いので、後はそちらで話付けて下さい。
こっちは大事な人が酷い目に遭う所だったのでね。」
そう言い残してノアは冷却中の阿羅亀噛を地面から引っこ抜いて、別の店へと足を運んでいった。
「まぁ、そりゃ腹立たしいわな。」
「仕方無い事かと…」
「しゃーない、王とエルベストん所の学園長に報告して来てくれ。」
「…んが?…あー気持ちわ「気持ち悪いでは無いわこの馬鹿者がぁっ!!」
バキッ!「うごぁっ!?」
寝起き直後にぶん殴られたエルベストは無様に床に転がる。
「痛て…何しやがっ、が、学園長!?」
「ああ、そうだっ!貴様が街で問題起こしてくれたお陰で夜中に飛んで来たわ!
よりにもよって出品者の女性に悪酔いして絡んだ上に、街ん中でサラマンダーなぞ召喚しおってこの、大馬鹿者がぁっ!」
ガチュッ!「ぶふっ!」パタタッ
かなり強目にぶん殴った事で鼻と口から血を噴き出すエルベスト。
飛び散った血が床に痕を形作る。
「クリーン!」
床の血を綺麗にした学園長は近くにいた領主のアルバに頭を下げる。
「今回の件は誠に申し訳ありません。」
「正直な事を申しますが、今回の件は私には何も言える事はありません。
召喚されたサラマンダーによる混乱を鎮めたのはそこにおります彼のお陰でございますし、あなた方がお求めになるヒュドラ素材の出品者も彼です。
当初彼が仰られた様に、あなた方に売らないと言えば私共はその決定に従うまでです。」
アルバが視線を送った先をエルベストと学園長も見てみると、入口付近で腕を組み今までのやり取りを無言で眺めているノアがいた。
「はぁ!?このガキがヒュドラ素材の出品者ぁ!?馬鹿も休み休み「それは私共が保証しよう。」
エルベストの言葉を遮ってベルドラッドが話に入ってきた。
「ヒュドラを最終的に討伐したのは彼の契約獣ですが、回収された素材の決定権は彼にあります。」
「という訳で当初の通りそこの人に売るつもりは御座いません。
どうせ碌でも無い事にしか使わないでしょうしね。」
そう言って領主の私室からノアが出ようとすると、エルベストが何やら余裕をかましてノアに突っ掛かる。
「は!良いのか?俺に売らなくて!
俺はな、王から密命を受けてんだ。
フリアダビアの最前線で戦ってくれってな!
これを蹴るって事は王の顔に泥を塗る事になるんだぞ?」
「知ったこっちゃ無い。自分で蒔いた種だから自分でどうにかすれば。」
あっさりとした反応に焦った学園長はノアに詰め寄る。
「ノ、ノア君とやら、どうか頼む!この王命が完了したらコイツを即刻で退学させる!
だからどうか、この王命だけは…」
「ちょっ学園長!?何勝手に『沈黙』
いちいちうるさいエルベストに『沈黙』を掛け、強制的に黙らせる。
口をパクパクと動かしているが喋る事が出来ない様だ。
「あーもう分かりました。
それなら1回の召喚に必要な竜血の量とフリアダビアでの戦闘期間、彼がその期間休まず戦える時間を教えて下さい。」
「うむ…その情報は本人にしか分からん事だ…」
丁度その時に『沈黙』が切れた事でエルベストが再び叫び出す。
「良いから俺らに売りゃ良いんだよ!寧ろ俺をこんな目に合わせやがって!タダで寄越しな!」
「コイツ…」
学園長が再び『沈黙』を掛けようとするが、無言のノアがエルベストの元へ。
「お?何だ!やろうってんのか?昨日は酔ってたからお前ごときに不『ガシッ!』
エルベストの口を鷲掴みして喋らせない様にした上で赤黒く染まったノアの目がエルベストの目を見つめる。
<強制閲覧>発動。
「むごごごごごごごごごごごごごごっ!?」
以前野盗に使った時よりも更に強目に掛けられているのか、目や鼻から血が流れ、痙攣を起こしており、エルベストはノアから目が離せずなすがままとなっている。
明らかに「ヤバい」と判断した学園長とベルドラッドが止めに入るも、ノアの体はピクリとも動かない。
「安心して下さい。なかなか喋らないので強制的に頭を引っ掻き回して記憶を探ってるだけだ。』
ノアの手は流血で真っ赤に染まり、エルベストの痙攣は更に激しさを増している。
とても安心出来る様な状況では無いのだが、ノアの言葉を信じて周囲も見守る事にした。
「もう良いか。』ポイッ ドサッ!
「がはっ!?はぁっ…ぐっ…てめぇ何を…」
「王都国立大学院生エルベスト、適正は【召喚】。
頭脳明晰、眉目秀麗さを盾に、数々の女生徒らと関係を持ち、飽きたら即捨てるというなかなかの屑だな。
直近では、マリ、ミア、ロウとか言う女性らを強姦紛いに襲い、力業で黙らせていると。
おっと、脱線したな。
今回のフリアダビアでの任務期間は12日間、1回の召喚に必要な血の量は1滴?安上がりだねぇ。
こいつは2時間休めば2日はぶっ続けで戦える様だな。
じゃあ血は6滴あれば足りるなぁ。』
「ろ!6滴!?それは流石に少な過ぎ…」
「だってコイツ、『ドラガオ』付近で待ち合わせてる闇ギルドの連中に、ある程度売っ払う予定だぜ?』
「な…!?」
「で、出鱈目だ!?何を根拠に…」
「従者の懐探ってみ?それ関係の書状が出てくるハズだぜ。』
これを聞いたベルドラッドがライリに合図を送り、部屋を出ていく。
「お、おい待て…」
「残念だったな、精々フリアダビアでは真面目に働いてくれよ。』
「な!何なんだよお前は!?」
「…ヴァンディット、出てこれるか?』
「はーい。」
ノアが呼ぶと、足元の影の中で蒸留水作りに励んでいたヴァンディットが姿を表す。
その光景を見て驚く一同。
そんな事も気にしないでノアはヴァンディットの腰に腕を回して引き寄せる。
「『俺』は、冒険者生活1ヶ月目の新人冒険者でもあり、この可愛い可愛い娘のご主人でもある。
お前如きが触れる事も許さねぇからそのつもりでな。』
地面に突き立った阿羅亀噛のすぐ横に立て札が立てられ、触らない様に注意喚起がなされている。
エルベストとのやり取りを見ていた野次馬が剣の周りに立ち、一種の観光名所の様になってしまった。
冷えるまでの間、ヴァンディットと共にワイバーンステーキを食べていた。
「いやぁ、話には聞いてたが本当に強いんだなぁ君…」
「私も戦闘を見るのは初めてですがお強いのですね。」
「相手が只の酔っ払いだったから対処が楽でした、召喚獣出すとは思いませんでしたがね。」
「いやいや、あの酔っ払いはどうやら闘技大会の覇者らしいんだ。」
「闘技大会…」
「はぁ…」
冒険者生活1か月目のノアと、戦争奴隷として商会でずっと生活していたヴァンディットでは、王都の事など知る由も無い。
「毎年各大学から選抜された優秀な学生同士が戦って1位を決める大会があるんだ。
はい、ステーキお待ちどう様。」
「へー、でさっきのが覇者ですか。」モグモグ
「そうは見えませんでしたね…あむ。
ん!?凄く美味しいです!」
「ははは、そうでしょう、そうでしょう。」
「で、その覇者さんが何でここに?」
「さぁてね「明日のヒュドラ素材の買い付け目的で来てたんだ。」
屋台の主人との会話に割って入って来たのはベルドラッドだった。
「あ、ボルボロッ「まだ言うか。」
ベルドラッドの後ろを着いて来ていたライリが顔を真っ赤にして顔を伏せる。
「すいませんベルドラッドさん。
それで、さっきの人がヒュドラ素材を買いに来てたんですね?」
「ああ、ある密「じゃあ、アイツに売るのは止して下さい。
どんな理由があれど、ああいうヤツに買われたら碌な事になりませんからね。」
「え、あの…」
「お代、ここに置いて行きますね。
さ、ヴァンディットさん行きましょうか。」
「は、はい…」
「あ、ちょっ、ノア君…」
「なーんか理由があるみたいですけど、そんな事こっちは知ったこっちゃ無いので、後はそちらで話付けて下さい。
こっちは大事な人が酷い目に遭う所だったのでね。」
そう言い残してノアは冷却中の阿羅亀噛を地面から引っこ抜いて、別の店へと足を運んでいった。
「まぁ、そりゃ腹立たしいわな。」
「仕方無い事かと…」
「しゃーない、王とエルベストん所の学園長に報告して来てくれ。」
「…んが?…あー気持ちわ「気持ち悪いでは無いわこの馬鹿者がぁっ!!」
バキッ!「うごぁっ!?」
寝起き直後にぶん殴られたエルベストは無様に床に転がる。
「痛て…何しやがっ、が、学園長!?」
「ああ、そうだっ!貴様が街で問題起こしてくれたお陰で夜中に飛んで来たわ!
よりにもよって出品者の女性に悪酔いして絡んだ上に、街ん中でサラマンダーなぞ召喚しおってこの、大馬鹿者がぁっ!」
ガチュッ!「ぶふっ!」パタタッ
かなり強目にぶん殴った事で鼻と口から血を噴き出すエルベスト。
飛び散った血が床に痕を形作る。
「クリーン!」
床の血を綺麗にした学園長は近くにいた領主のアルバに頭を下げる。
「今回の件は誠に申し訳ありません。」
「正直な事を申しますが、今回の件は私には何も言える事はありません。
召喚されたサラマンダーによる混乱を鎮めたのはそこにおります彼のお陰でございますし、あなた方がお求めになるヒュドラ素材の出品者も彼です。
当初彼が仰られた様に、あなた方に売らないと言えば私共はその決定に従うまでです。」
アルバが視線を送った先をエルベストと学園長も見てみると、入口付近で腕を組み今までのやり取りを無言で眺めているノアがいた。
「はぁ!?このガキがヒュドラ素材の出品者ぁ!?馬鹿も休み休み「それは私共が保証しよう。」
エルベストの言葉を遮ってベルドラッドが話に入ってきた。
「ヒュドラを最終的に討伐したのは彼の契約獣ですが、回収された素材の決定権は彼にあります。」
「という訳で当初の通りそこの人に売るつもりは御座いません。
どうせ碌でも無い事にしか使わないでしょうしね。」
そう言って領主の私室からノアが出ようとすると、エルベストが何やら余裕をかましてノアに突っ掛かる。
「は!良いのか?俺に売らなくて!
俺はな、王から密命を受けてんだ。
フリアダビアの最前線で戦ってくれってな!
これを蹴るって事は王の顔に泥を塗る事になるんだぞ?」
「知ったこっちゃ無い。自分で蒔いた種だから自分でどうにかすれば。」
あっさりとした反応に焦った学園長はノアに詰め寄る。
「ノ、ノア君とやら、どうか頼む!この王命が完了したらコイツを即刻で退学させる!
だからどうか、この王命だけは…」
「ちょっ学園長!?何勝手に『沈黙』
いちいちうるさいエルベストに『沈黙』を掛け、強制的に黙らせる。
口をパクパクと動かしているが喋る事が出来ない様だ。
「あーもう分かりました。
それなら1回の召喚に必要な竜血の量とフリアダビアでの戦闘期間、彼がその期間休まず戦える時間を教えて下さい。」
「うむ…その情報は本人にしか分からん事だ…」
丁度その時に『沈黙』が切れた事でエルベストが再び叫び出す。
「良いから俺らに売りゃ良いんだよ!寧ろ俺をこんな目に合わせやがって!タダで寄越しな!」
「コイツ…」
学園長が再び『沈黙』を掛けようとするが、無言のノアがエルベストの元へ。
「お?何だ!やろうってんのか?昨日は酔ってたからお前ごときに不『ガシッ!』
エルベストの口を鷲掴みして喋らせない様にした上で赤黒く染まったノアの目がエルベストの目を見つめる。
<強制閲覧>発動。
「むごごごごごごごごごごごごごごっ!?」
以前野盗に使った時よりも更に強目に掛けられているのか、目や鼻から血が流れ、痙攣を起こしており、エルベストはノアから目が離せずなすがままとなっている。
明らかに「ヤバい」と判断した学園長とベルドラッドが止めに入るも、ノアの体はピクリとも動かない。
「安心して下さい。なかなか喋らないので強制的に頭を引っ掻き回して記憶を探ってるだけだ。』
ノアの手は流血で真っ赤に染まり、エルベストの痙攣は更に激しさを増している。
とても安心出来る様な状況では無いのだが、ノアの言葉を信じて周囲も見守る事にした。
「もう良いか。』ポイッ ドサッ!
「がはっ!?はぁっ…ぐっ…てめぇ何を…」
「王都国立大学院生エルベスト、適正は【召喚】。
頭脳明晰、眉目秀麗さを盾に、数々の女生徒らと関係を持ち、飽きたら即捨てるというなかなかの屑だな。
直近では、マリ、ミア、ロウとか言う女性らを強姦紛いに襲い、力業で黙らせていると。
おっと、脱線したな。
今回のフリアダビアでの任務期間は12日間、1回の召喚に必要な血の量は1滴?安上がりだねぇ。
こいつは2時間休めば2日はぶっ続けで戦える様だな。
じゃあ血は6滴あれば足りるなぁ。』
「ろ!6滴!?それは流石に少な過ぎ…」
「だってコイツ、『ドラガオ』付近で待ち合わせてる闇ギルドの連中に、ある程度売っ払う予定だぜ?』
「な…!?」
「で、出鱈目だ!?何を根拠に…」
「従者の懐探ってみ?それ関係の書状が出てくるハズだぜ。』
これを聞いたベルドラッドがライリに合図を送り、部屋を出ていく。
「お、おい待て…」
「残念だったな、精々フリアダビアでは真面目に働いてくれよ。』
「な!何なんだよお前は!?」
「…ヴァンディット、出てこれるか?』
「はーい。」
ノアが呼ぶと、足元の影の中で蒸留水作りに励んでいたヴァンディットが姿を表す。
その光景を見て驚く一同。
そんな事も気にしないでノアはヴァンディットの腰に腕を回して引き寄せる。
「『俺』は、冒険者生活1ヶ月目の新人冒険者でもあり、この可愛い可愛い娘のご主人でもある。
お前如きが触れる事も許さねぇからそのつもりでな。』
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