ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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アルバラスト編

相変わらず得体が知れない

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「全く…諜報部の連中は相変わらず得体が知れないな…」


ノアの元へやって来たワークスが愚痴る。


「はは、職業柄仕方の無い事でしょう。」

(ま、収穫はありましたがね。)


「しかし…フリアダビアか…お前さんは吸血鬼の嬢ちゃん守っただけなのに面倒な事になったなぁ…」

「ま、あの状況なら守る以外の選択肢なんてありませんでしたしね。
だからヴァンディットも気にしなくて良いからね?」


足元の影を見ると顔を半分だけ出し、ヴァンディットが申し訳無さそうにしていた。


「取り敢えずヴァンディットさんは引き続き薬品の作成を。
それと後でメグミ草の鉢を買いに行きましょうか。」

「はい。」


目礼したヴァンディットは影の中へ戻っていった。


「フリアダビア、か…どんな所なんだろう…」


ノアがボソッと呟くと、丸まった大きな紙を持った職員と共にワークスがやって来た。
テーブルを雑に集め、丸まった紙を広げる。


「占領前の地図で良いならウチでも持ってたからな、少しは役に立てば良いが…」

「助かります。」

「何か聞きたい事があれば俺が答えよう。」


ワークスに続いて静養中のルディアがテーブルの近くへ。


「俺は元々この街の出でな、冒険者になってから戻って無いから建物が変わってるかも知れないが、配置なら未だに頭の中だ。
聞きたい事があったら言ってくれ。」

「それでは街の簡単な説明をお願いします。」

「よし、それじゃあ…」


『フリアダビア』…不毛な土地であるテラヴァジアとは目と鼻の先にあり、直径400メルもある円形の城塞都市。
アルバラストの倍以上の高さの防壁に囲まれており、生半可な攻撃では突破する事は不可能。
近くにある渓谷で豊富に採れる鉄鉱石での産業が盛んである。
街の中心部には高い尖塔を持った教会があり、有事の際には防御結界を発動する要の場所でもある。
教会の下には地下墓地が存在し、街の各所を移動する事も可能。


「俺も噂でしか聞いてないが住人の避難が難航していると聞いた。
もしかしたら地下墓地も占領されているかも知れないな。」

「その地下墓地の整備はどうですか?」

「俺が子供の頃はきちんと整備されていたから、教会が機能していれば悪霊やグール等はいないハズだ。 」

「流石に出現しているモンスター等は分かりませんよね?」

「ああ…ただ、街の知り合いからの手紙には『通常のモンスターとの戦い方じゃ歯が立たない』らしい。」


ルディアの知り合いが何を見たのか知る由も無いが、手強いモンスターなのであろう。


「街の兵、街の防衛設備はどうでしょう?」 

「街の周囲は獰猛なモンスターが多くてね、街にいる兵士は勇猛果敢な奴じゃないと生きていけない、そんな奴等ばかりだ。
まぁ、そんな脳筋ばかりな街が嫌で出てきたんだけどな…
すまない、脱線したな。
街の防衛設備はなかなかな物だぜ。
大砲、バリスタ、それに加えて【技士】の適正を持った奴もいるから改良が成された防衛設備がたんまりとある。
勿論、モンスターに占領されてなければ使ってるだろうがね…」

「なるほど…それだけ聞ければ大丈夫です。
後は現場に行く途中、または到着してからどう動くか考えます。
ワークスさんや職員さんも地図用意してくれてありがとうございました。」


ルディアの説明を少しの質問と僅かな相槌を交えつつ聞いていたノアがそう呟い一旦話を終える。
落ち着き払った様子のノアに周りの冒険者や職員が違和感を覚える。


「お前さんは…相変わらず落ち着いてんな?」

「いやいや、そうでもありませんよ?
今聞いた情報でどう立ち回ろうかとか色々考え「あー違う違う。」

「死地に行くかも知れないってぇのにどうしてそう落ち着いていられるんだ、って話だ。」 

(あー、そう言う事か…)

「何て言ったら良いですかね…
昔訓練で何度か死にそうな目には合ってるので、もう慣れちゃったんですよ。
ほら、犬だって初めて見た時は怖かったですけど何回か会ってる内に慣れちゃうじゃないですか?」

「…な、なん…」

『死にかけるのには慣れた』この発言に唖然とする一同。


「ただ死ぬ可能性を考えてない訳じゃありませんし、その時が来ても最後の最期まで諦めるつもりもありません。
自分の持てる全ての手札を使ってでも抗うつもりですよ。
両親からも教わりました、『落ち着かないのは覚悟が決まって無いだけだ』ってね。」


ノアの言葉に皆が反応出来ないでいると


「すいません、あの感じからすると明日には出立するかも知れませんので準備に取り掛かっても良いですか?」

「え?あ、お、おう…」


ノアは皆に一礼してギルドを出て行った。







場所は移って、再び王室。
音も無く王の元に辿り着いた黒いフードの男が王へと礼をする。


「お、戻ってきたな?打診の方はどうであったか?」

「ええ…恐ろしい位すんなり快諾してくれました…」

「ほう…その割には反応が宜しく無い様じゃが?」

「彼に…正体バレたかも知れません。」


黒いフードの男の発言に王は何も言わず、眉間に皺を寄せる。


「会話の出鼻を潰し、同行者の種族を当ててこちらの反応や対応力を見てきました。
意図せず吸血鬼の娘が出てきたり、フリアダビアの話題を振られた事で僅かに素を出してしまいました。
確実に身バレた確証はありませんが、恐らくは…」

「まぁお前さんの場合、面と向かって会わない限りは無敵じゃが、割と接していれば直ぐに分かるしな。
で?お前さんの流儀に当て嵌めるならその少年を殺す事になるが?」

「……」


黒いフードの男はただただ無言で考え倦ねている様子。
それを見兼ねた王が


「考えてる事を言ってやろうか?
お前さんにとってその少年に身バレする事は些細な事でしかない。
身バレしたとして少年が追及してくる事は無いってのはお前さんが一番知ってるのであろう。
それ以上に有能であるから、殺すのは非常に惜しいと考えておる、って所か?」

「…はい…」

「お前さん普段はペラペラと口が回るというのに、子供が絡むと直ぐこれだな…」
          
「面目ありません…」

「逆だそれで良い!お前はあくまでも諜報、最終的な決は私が判断する。
ま、次その少年に会った時、普段通りであれば今まで通りの付き合いを続ける、で良いではないか。」

「そんな簡単で良いのでしょうか…?」

「阿保、お前の調査能力には全幅の信頼を置いておる。
お前が大丈夫と判断した人物であればそれで大丈夫だ。」

「…畏まりました。」


王から太鼓判を押されたフードの男は、完全にとは言わないが納得してくれた様である。

(全く…昔っから変な所で真面目なんだか優柔不断なのか良く分からんやっちゃな…
ま、昔に比べれば大分マシになったがな。)

何処と無く嬉しそうに心の中で思う王であった。
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