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フリアダビア前哨基地編
旧『スパルティア』、現『ヒュマノ聖王国』
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「旧『スパルティア』、現『ヒュマノ聖王国』は元々300年以上前に何処からか流れて来た者が、先住民であった獣人達を奴隷化して、各地の村々を襲いながら領土を広げていったらしい。」
「そんなに昔から奴隷化されていたんですね…」
「まぁ聞こえは悪いが、実は今よりも暮らしは安定していた様だ。
元々その地域では村同士での小競り合いが頻発してたらしく、全ての村が等しく困窮してて真っ直ぐ滅びの道を進んでたらしいんだ。
でもそこにスパルティアの先祖が侵略、次々と征服していった。
勿論侵略する際に戦場にも駆り出されるんだけど、スパルティア人が先陣を切って戦い、獣人達は討ち漏らしの処理を行っていたらしい。
獣人は身体能力でいったら人間よりも高いんだけど、食事の殆どを狩りに頼っていたから何も食べられない日もあったとか…
そこを補う様にスパルティア人が農耕や牧畜等を教えていったらしい。」
「何かここまで聞くと割と良好な関係に思いますが…」
「この良好な関係は国名が変わる迄は割と続くんだ。
話は戻るが、そんな感じで侵略していったんだが問題が発生する。
奴隷の数が国民の10倍以上にまで増えてしまった事で反逆される事を恐れていったんだ。」
「でも関係が良好だったならそんな事気にならないんじゃ…」
「勿論人の考えている事なんざ分かりはしないが、困窮していた状況から救い出してくれたスパルティア人でもあり、土地を奪って来た略奪者でもある。
当時の状況であれば獣人は着いてくる。
王だろうが、神だろうが何にでもなれる。
だが治安も良くなり、食料事情も問題無くなった。
そんな状況で自分の仲間が相手の10倍以上いる。
元々異種族同士だ、何れは自分達に弓を引くのではないか。
そう思わない事も無いんじゃないかな?」
「ぅ…む…」
「まぁ当時は時折反乱も起きていたみたいだからねぇ…
で、スパルティア人は何をしたかと言うと奴隷を減らすのでは無く、スパルティア人1人1人が異常に強くなっていったのさ。」
「何で奴隷を減らさなかったのでしょう?」
「現代でもそうだが、戦争は数こそ全て、みたいな所があるからね。
実際最前線で戦う者は少数でも、相手の戦術を知らない者からしたら、数の暴力で蹂躙されるのでは無いか、と思うだろう。
実際貴女もノア君の影の中から夥しい量のモンスターを見た時絶望しただろう?」
『ノ、ノア様…逃げましょう…あの数は無理です…』
「あー…」
先程の戦いでヴァンディット自身がノアに言った言葉を思い出し、納得した様だ。
「それに人間てのは欲深い。
上の生活に慣れてしまうとなかなか下に行くのは難しいって言うしね。
奴隷を減らして不自由な生活を送るより、奴隷はそのままに、己を強化して自由な生活を送った方が良いと思ったんじゃないかな。
当時は敵にも事欠かないし、身体能力の高い奴隷獣人は大量にいたから強化する環境は整っていたしね。」
「そうして、強国になっていったんですね。」
「そう言う事。
さて本題に戻るが、何でそのスパルティアがヒュマノみたいな国になったかと言うと…
所でヴァンディット嬢、『スパルタ教育』の意味知ってるかな?」
「えっと…厳しい教育、過酷な訓練とかですか?」
「まぁ今はその部分だけ伝わっているだろうが、この言葉が出来た時は頭に『手厚くも』が付いていたんだ。」
「へぇ、そうなんですね。」
「獣人を奴隷としてはいたけども、率先して強くなろうとした者には手厚く指導していた様なんだ。
スパルティア人と同じ教育に訓練、同じ物を食べ、同じ生活を送り、戦死すれば手厚く葬られたりとね。」
「そう言う意味だとは知りませんでした。」
「つまりそう言う事だ。」
「?」
「結果的に良い部分は伝わらず、悪い部分だけ現代まで伝わってしまったんだ。」
そこまで言うと、ヴァンディットも大まかに察した様だ。
「察した様だね?
時代が進むに連れて戦争も減り、【適正】の儀が行われ冒険者等が台頭して来てモンスターの討伐なんかも冒険者任せになってきたから、そこまで強国である必要性も無くなって来た。
実際の文献にも書いてあるが、戦争回数が最盛期の1割にまで減ったらしい。」
「つまり、スパルティア人が強くなり続ける必要もなくなったんですね?」
「そう言う事。」
「でもそうなったら身体能力の高い獣人が暴動起こしでもしたら、一溜まりも無いのでは…?」
「そうだね。
だからスパルティア人は努力の方向性を変え、自己の強化から奴隷の弱体化に力を入れ始めたんだ。
ざっくりとした内容だけど、ある一定の年齢になったら親御から引き離して洗脳教育、食事量や睡眠時間も減らして憔悴させ、その…性奴隷以下の事を行って徹底的に上下関係を刷り込ませる。
逆らう者は殺し、強くなりたいと志願した奴隷は徹底的に排除した。
そんな事を続けた事でスパルティア人も次第に傲慢になり、自分以外は下民みたいな思考になっていったんだ。
モンスターとの戦闘も奴隷任せ、数の暴力で押し潰す、戦術何てありゃしない。
奴隷が死のうが何も思わず、弔いもしない。」
「うわぁ…」
「遂には国名を『ヒュマノ聖王国』に変え『人間至上主義』何て掲げ出した割に、奴隷に関しては『獣人』では無く『奴隷』という扱いだから奴隷制は止めないとか抜かすしね。」
フードの男は語気を強めて言う。
ノア曰くフードの男は獣人だからだろうか。
「すまない…そしてその頃だな、ヴァーリアスフェアレスと言う、獣人ばかりが暮らす街が出来始めたのは。」
「もしかして、そこから逃げ出した人が?」
「ああ、『人間至上主義』を掲げた時に排除したとされた者が生きていた様でね、逃げてきた者、別の村から来た者問わず受け入れて戦う準備を進めている。」
「戦うって…戦争ですか?」
「そう、徹底的に戦って、大陸の地図から『ヒュマノ聖王国』を消すつもりらしい。
ヒュマノ聖王国もその情報を掴んだ様でね、準備を着々と進めてる。
その最たるものが…」
フードの男が前方に向け、視線を送る。
ヴァンディットもその方向に顔を向けると
「私…って訳、よ。」
ミユキが申し訳無さそうな顔をする。
「初めて他国の人から自国の話を聞いたわ。
ヒュマノだと皆が皆色々と美化した事しか言わないし、1人1人で言ってる事も違うから整合性が取れなかったのよね…」
「【勇者】ミユキ。
約3ヶ月程前、禁術とされる異界からの【召喚勇者】としてヒュマノ聖王国にて召喚。
【勇者】と言うのは戦わずしての初期状態で中級冒険者並みの戦闘力を持っている。
恐らく今回のフリアダビアへの派遣は、戦闘訓練の一貫と人間の冒険者を募って来たと言った所か?」
「…はい、そうです…
正直な所いきなり召喚されて、いきなり獣人を殺す為力を貸して欲しいと言われました。
一方的な迄の獣人への悪口やら所業を聞かされ続ける毎日で、今日初めて獣人所か他種族と話した程です。
他種族と話そうとすると、いつもあの取り巻き2人に阻まれていました。」
「君としてはどうなんだ?獣人とは戦うつもりか?」
「今の所そのつもりはありません、ありませんが…」
「国はそれを許さないだろうな。」
「はい…あなたは戦争になれば…」
「無論、今の職、地位等全て捨ててでも戦争に参加する。
勿論貴女と戦うとなれば容赦はしない。」
フードの男から殺気の様な物が放たれる。
【勇者】のミユキはそれを受けて俯く事しか出来なかった。
「私情を挟んで申し訳無いが、これは私の本心だ。何があろうとも故郷を取り戻す。」
このやり取りをヴァンディットはハラハラとした面持ちで見ている。
「すまない…全体的にザックリとした説明になってしまったが、こんな感じで良かったかなヴァンディット嬢。」
「あ、ありがとうございます…また何か分からない事がありましたら教えて下さい、ね?」
「ええ、その時はまた。」
そう言ってフードの男は姿を消す。
残ったヴァンディットは何でも無い風に装いつつ(バレバレ)もノアの治療に専念しだした。
「私…どうしたら良いんだろう…」
ヴァンディットの耳にも届かないか細い声でミユキが呟く。
誰にも聞こえてないハズである。
(『あの娘も色々大変だねぇ。』)
「そんなに昔から奴隷化されていたんですね…」
「まぁ聞こえは悪いが、実は今よりも暮らしは安定していた様だ。
元々その地域では村同士での小競り合いが頻発してたらしく、全ての村が等しく困窮してて真っ直ぐ滅びの道を進んでたらしいんだ。
でもそこにスパルティアの先祖が侵略、次々と征服していった。
勿論侵略する際に戦場にも駆り出されるんだけど、スパルティア人が先陣を切って戦い、獣人達は討ち漏らしの処理を行っていたらしい。
獣人は身体能力でいったら人間よりも高いんだけど、食事の殆どを狩りに頼っていたから何も食べられない日もあったとか…
そこを補う様にスパルティア人が農耕や牧畜等を教えていったらしい。」
「何かここまで聞くと割と良好な関係に思いますが…」
「この良好な関係は国名が変わる迄は割と続くんだ。
話は戻るが、そんな感じで侵略していったんだが問題が発生する。
奴隷の数が国民の10倍以上にまで増えてしまった事で反逆される事を恐れていったんだ。」
「でも関係が良好だったならそんな事気にならないんじゃ…」
「勿論人の考えている事なんざ分かりはしないが、困窮していた状況から救い出してくれたスパルティア人でもあり、土地を奪って来た略奪者でもある。
当時の状況であれば獣人は着いてくる。
王だろうが、神だろうが何にでもなれる。
だが治安も良くなり、食料事情も問題無くなった。
そんな状況で自分の仲間が相手の10倍以上いる。
元々異種族同士だ、何れは自分達に弓を引くのではないか。
そう思わない事も無いんじゃないかな?」
「ぅ…む…」
「まぁ当時は時折反乱も起きていたみたいだからねぇ…
で、スパルティア人は何をしたかと言うと奴隷を減らすのでは無く、スパルティア人1人1人が異常に強くなっていったのさ。」
「何で奴隷を減らさなかったのでしょう?」
「現代でもそうだが、戦争は数こそ全て、みたいな所があるからね。
実際最前線で戦う者は少数でも、相手の戦術を知らない者からしたら、数の暴力で蹂躙されるのでは無いか、と思うだろう。
実際貴女もノア君の影の中から夥しい量のモンスターを見た時絶望しただろう?」
『ノ、ノア様…逃げましょう…あの数は無理です…』
「あー…」
先程の戦いでヴァンディット自身がノアに言った言葉を思い出し、納得した様だ。
「それに人間てのは欲深い。
上の生活に慣れてしまうとなかなか下に行くのは難しいって言うしね。
奴隷を減らして不自由な生活を送るより、奴隷はそのままに、己を強化して自由な生活を送った方が良いと思ったんじゃないかな。
当時は敵にも事欠かないし、身体能力の高い奴隷獣人は大量にいたから強化する環境は整っていたしね。」
「そうして、強国になっていったんですね。」
「そう言う事。
さて本題に戻るが、何でそのスパルティアがヒュマノみたいな国になったかと言うと…
所でヴァンディット嬢、『スパルタ教育』の意味知ってるかな?」
「えっと…厳しい教育、過酷な訓練とかですか?」
「まぁ今はその部分だけ伝わっているだろうが、この言葉が出来た時は頭に『手厚くも』が付いていたんだ。」
「へぇ、そうなんですね。」
「獣人を奴隷としてはいたけども、率先して強くなろうとした者には手厚く指導していた様なんだ。
スパルティア人と同じ教育に訓練、同じ物を食べ、同じ生活を送り、戦死すれば手厚く葬られたりとね。」
「そう言う意味だとは知りませんでした。」
「つまりそう言う事だ。」
「?」
「結果的に良い部分は伝わらず、悪い部分だけ現代まで伝わってしまったんだ。」
そこまで言うと、ヴァンディットも大まかに察した様だ。
「察した様だね?
時代が進むに連れて戦争も減り、【適正】の儀が行われ冒険者等が台頭して来てモンスターの討伐なんかも冒険者任せになってきたから、そこまで強国である必要性も無くなって来た。
実際の文献にも書いてあるが、戦争回数が最盛期の1割にまで減ったらしい。」
「つまり、スパルティア人が強くなり続ける必要もなくなったんですね?」
「そう言う事。」
「でもそうなったら身体能力の高い獣人が暴動起こしでもしたら、一溜まりも無いのでは…?」
「そうだね。
だからスパルティア人は努力の方向性を変え、自己の強化から奴隷の弱体化に力を入れ始めたんだ。
ざっくりとした内容だけど、ある一定の年齢になったら親御から引き離して洗脳教育、食事量や睡眠時間も減らして憔悴させ、その…性奴隷以下の事を行って徹底的に上下関係を刷り込ませる。
逆らう者は殺し、強くなりたいと志願した奴隷は徹底的に排除した。
そんな事を続けた事でスパルティア人も次第に傲慢になり、自分以外は下民みたいな思考になっていったんだ。
モンスターとの戦闘も奴隷任せ、数の暴力で押し潰す、戦術何てありゃしない。
奴隷が死のうが何も思わず、弔いもしない。」
「うわぁ…」
「遂には国名を『ヒュマノ聖王国』に変え『人間至上主義』何て掲げ出した割に、奴隷に関しては『獣人』では無く『奴隷』という扱いだから奴隷制は止めないとか抜かすしね。」
フードの男は語気を強めて言う。
ノア曰くフードの男は獣人だからだろうか。
「すまない…そしてその頃だな、ヴァーリアスフェアレスと言う、獣人ばかりが暮らす街が出来始めたのは。」
「もしかして、そこから逃げ出した人が?」
「ああ、『人間至上主義』を掲げた時に排除したとされた者が生きていた様でね、逃げてきた者、別の村から来た者問わず受け入れて戦う準備を進めている。」
「戦うって…戦争ですか?」
「そう、徹底的に戦って、大陸の地図から『ヒュマノ聖王国』を消すつもりらしい。
ヒュマノ聖王国もその情報を掴んだ様でね、準備を着々と進めてる。
その最たるものが…」
フードの男が前方に向け、視線を送る。
ヴァンディットもその方向に顔を向けると
「私…って訳、よ。」
ミユキが申し訳無さそうな顔をする。
「初めて他国の人から自国の話を聞いたわ。
ヒュマノだと皆が皆色々と美化した事しか言わないし、1人1人で言ってる事も違うから整合性が取れなかったのよね…」
「【勇者】ミユキ。
約3ヶ月程前、禁術とされる異界からの【召喚勇者】としてヒュマノ聖王国にて召喚。
【勇者】と言うのは戦わずしての初期状態で中級冒険者並みの戦闘力を持っている。
恐らく今回のフリアダビアへの派遣は、戦闘訓練の一貫と人間の冒険者を募って来たと言った所か?」
「…はい、そうです…
正直な所いきなり召喚されて、いきなり獣人を殺す為力を貸して欲しいと言われました。
一方的な迄の獣人への悪口やら所業を聞かされ続ける毎日で、今日初めて獣人所か他種族と話した程です。
他種族と話そうとすると、いつもあの取り巻き2人に阻まれていました。」
「君としてはどうなんだ?獣人とは戦うつもりか?」
「今の所そのつもりはありません、ありませんが…」
「国はそれを許さないだろうな。」
「はい…あなたは戦争になれば…」
「無論、今の職、地位等全て捨ててでも戦争に参加する。
勿論貴女と戦うとなれば容赦はしない。」
フードの男から殺気の様な物が放たれる。
【勇者】のミユキはそれを受けて俯く事しか出来なかった。
「私情を挟んで申し訳無いが、これは私の本心だ。何があろうとも故郷を取り戻す。」
このやり取りをヴァンディットはハラハラとした面持ちで見ている。
「すまない…全体的にザックリとした説明になってしまったが、こんな感じで良かったかなヴァンディット嬢。」
「あ、ありがとうございます…また何か分からない事がありましたら教えて下さい、ね?」
「ええ、その時はまた。」
そう言ってフードの男は姿を消す。
残ったヴァンディットは何でも無い風に装いつつ(バレバレ)もノアの治療に専念しだした。
「私…どうしたら良いんだろう…」
ヴァンディットの耳にも届かないか細い声でミユキが呟く。
誰にも聞こえてないハズである。
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