ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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フリアダビア前哨基地編

どっこいしょ

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「どっこいしょ…っと。
おぅ、ガーベラっちゅう【上級魔法使い】の嬢ちゃん、モンスターの反応は無いかい?」

「無い無い。
気配所か、魔力の反応すらないわ。」 

「いなかったら、いなかったで逆に不気味じゃわい…」

「お陰でモンスターの回収が捗ってるんだし、良しとしましょう。
よし、ここら辺も終わりかしらね。」


現在ノアが屠りまくったモンスターの回収が行われていた。
いつまたモンスターが街を襲いに来るか分からなかった為、手が空いている者を集め、4班に分け、短時間での回収を実施。
ドワーフや上級冒険者等は街の奥の方を担当している。


「やはり先程の"アレ"が効いとる様じゃの。」

「「その様じゃね。」」

「ねぇ、ユーグー!そこからは何か見えないー?」


雷妖精のサンドラが防壁の上にいる男性エルフのユグに聞いてみる。


「防壁の外縁部にいるにはいるが、あちらもこちらに入るのを躊躇っている様だ。
"アレ"の効果は確かな様だな!」


皆の言う"アレ"と言うのは勿論先程の『俺』が戦った時に呼び出したグリードの事である。
 
グリードの咆哮と巨大カメレオンの断末魔の叫び声を聞いてからというもの、蜥蜴や蛇等の小型モンスターの動きが著しく鈍化したらしい。

当初エルグランド含め、職員や冒険者、旧フリアダビアの兵士はこの報せに歓喜したものの、相手の戦力が分からない以上、常に先手先手を取る為、モンスターの素材回収に着手した。

蜥蜴や蛇の表皮は鉄が多分に含まれている様で、精錬すれば純度の高い鉄となる。
前哨基地ではそういった事が可能な【鍛冶】持ちもいるのでそちらに回すらしい。

内臓や体内器官、骨等は錬金術や武器等にも使用出来るのだが、腕の立つ錬金術の使い手がいない為、これについては後回し。

肉は魔素強化されている為、食事効果が出やすいとの事なので【料理人】に回すとの事だ。


「よっしゃ!今ので最後じゃ。【勇者】の嬢ちゃん、教会の方はどうじゃ?」


【勇者】、ドワーフ達はモンスター素材の回収に加え、街の中央にある教会の状態確認も頼まれていた。
状態も良く、中に入れる様なら【神官】が入り、教会の防御結界を発動するとの事だが…


「駄目ね!教会自体はかなり頑丈な造りしてるみたいだけど、倒壊した建物の瓦礫で入口や窓が埋まっちゃってるわ。
時間掛ければ排除出来ると思うけど…」

「取り敢えず状態確認だけとの事じゃからな。
そんじゃ街に戻るとしようかの、門付近の者も下がっちょるしの。」








「素材回収ご苦労、教会の方はどうだった?」

「入口や窓は瓦礫で埋まっちゃってて中に入るのは容易では無いわ。」

「そうか…やはり地下から、と言う訳か…」

「地下は先程坊の方で、奪還した区域は区切っておるでな、そこまで前線は延ばせるじゃろう。」

「ああ、今しがた資材班が入っていった。
モンスターの影も無い様なので前線が延ばせる、大幅な前進と言えるだろう。
あなた達は少しの間休むと良い、ミユキ殿は話がある。良いね?」

「はい。」


そう言ってエルグランドはミユキと共に簡素なテントの元へ。
ドワーフ達は、さてどうしたものかと周囲を見回していると


「うん?あれは…」


ドワーフのバドは、近くにいた兵士に防壁の上に置いてあるある物を指差す。


「あれは使わんのか?」

「ああ、あれは10年前まで使ってたんですが、老朽化で使い物にならなくなってしまって…
それに重いですからなかなか廃棄出来なくて…」

「それじゃ、わし等にあれ使わせてもろうてええかのう?
何、悪い様にはせん。戦力は多い方がええじゃろう?」


ドワーフ達の悪い顔を見た兵士は了承する事しか出来なかった。







「さて、ミユキ殿、この街に来た本来の目的を教えて貰おうか?
取り巻き2人には重めのスリープを掛けたから暫くは目覚めんだろうしな。」


前哨基地の簡素なテント内には上級冒険者、職員が数名とエルグランドとミユキのみ。

話とは、ヒュマノ側の意図を探る為である。
取り巻き2人の行動からして何かしら裏がある事は明白。
強制的に眠らしているのと、戦線が一段落している今が情報を聞き出すチャンスなのである。


「助かります、あの2人がいると会話なんてとても出来そうにありませんしね。
まず始めに、本来であれば今回の派遣は私1人だけの予定でした。」

「ほう?では何故あんな足手まとい兼邪魔者がここにいるのだ?」

「普通は王の決定を無視して割り込む事何て不可能なのですが、軍部の者にでも手を回して推薦でもさせたのでしょう。
彼等はヒュマノでも上位に位置する貴族ですし、一部の方面から絶大な支持を持っています。」

「?一部の方面?」

「『人間至上主義』賛成派の者達です。
このフリアダビアには現在上級冒険者や、それ相応の実力がある者が集っています。
来るべき獣人との戦争に向けて【勇者】である私をだしにして、戦闘員の収集とかが目的の様です。」

「そんな事で来たのかよ…」


周りにいた冒険者が悪態をつく。


「ただ2人はいつもあんな感じですし、自国でしか支持されてないのに矢面に立てばどうなるか何て考えていません。
基本的に戦闘は奴隷任せなので、最前線に来たら邪魔になるのは目に見えています。
ですが彼等は何処であろうが、火力重視の攻撃をすれば片が付くと思ってる様で…」

「それでさっきの爆裂魔法か…チッ、余計な事を…」

「確かにさっき蜥蜴に足貫かれた時、『何故だ!?何故だ!?』って言ってたのはそういう事か。」

「爆裂魔法だけで死ぬんならこっちも苦労しねぇっつうの…」


周りの者が色々と愚痴やら悪態をついているのをエルグランドは咳払いを一つして抑える。


「ちなみに、君に対して王からは何か指示はあったのかい?」

「…はい。」


ミユキは歯切れ悪そうに返事をする。
やはり他人には言えない内容なのだろう。


「極力話して貰いたい事だが無理に「…してくれと…」

「え?」


言葉が被ってしまい、ミユキの発言を遮ってしまった様なのでエルグランドが聞き直す。


「あの取り巻き2人を…バッガスとダグの2人をこの戦いに乗じて殺してくれ、と…」
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