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フリアダビア前哨基地編

『人間至上主義』筆頭

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「バッガスとダグは『人間至上主義』筆頭支持者…と言うか掲げだしたのがこの2人。
元々獣人嫌いな人なんて少数しかいなかったらしいのだけど、貴族の権力だとか同調圧力何かを駆使して『人間至上主義』を国の方針にまで押し上げたのだとか。
あと私を【勇者】としてこの世界に召喚したのもこの2人。」

「な…」

「王は私がこの世界に来てからというものの、ずっと謝り続けているわ。
『王とは名ばかりだ、下の者を御せず、取り返しの付かない事をしてしまい申し訳無い。
この国は遅かれ早かれ終わりを迎える、奴等は君を利用して色々画策している様だ。
その期に乗じて亡き者にしてくれ、出来なくば、私が手を下す。』って齢90以上のお爺ちゃんに言われたわ。」


ミユキからの発言に黙る一同、しかしここでテント内に入ってくる影が。


「なるほどな、この文に書かれている事がやっと腑に落ちた。」


テント内に入ってきたのはフードの男だった。


「エルグランド殿、あなたからヒュマノ聖王国に書簡を送れとの指示を受け、ついさっき返事を貰って来たのだが、あの取り巻き2人が自信たっぷりに『最終的な判断は国が決める』と言っていた割に王の返事が素っ気無かったので不思議に思っていたんだ。」


フードの男は、エルグランドとミユキがいる卓の中央に返事の書かれた紙を置く。
周囲の冒険者や職員もその紙に書かれている文章に目をやる。


『此度の派遣には元々【勇者】ミユキのみ派遣の予定であったが、2人達ての希望で参加を了承した。
著しく戦闘、救助等に影響を与える場合、不要と判断した場合はそちらの指揮官又は代表に生殺与奪の権利を託すとする。以上。』


「恐らくあの2人が強気に出ていたのは、王がもう自分達のいいなりになってると勘違いしていたのかも知れませんね。」

「ふぅむ、国からお墨付きを貰ったのであれば早い内に手を打つとしようかね。」

「正直、また変な事されちゃ敵わんしな。」


人の生殺与奪が二言で決まった所で、エルグランドが今後の方針を話す。


「さて、今後の方針を話そう。
この後街の向こう、テラヴァジア方面に【隠密】の上級冒険者が偵察に向かっている。
夜には街に戻るらしいので報告を待つとしよう。
次に地下墓地の奪還を最優先に進め、教会も続けて奪還。
最終的には防御結界発動が最終目標となる。
それさえ発動すればモンスターの魔素強化も無力化出来るハズだ。
で、あの2人は適当な所で勝手に動いて貰い、自滅して貰おう。」


遂に人の生殺与奪が一言で決まり、方針も決定。
各々行動に移そうとした所でミユキから質問が飛ぶ。


「あの…私からも質問良いですか?」

「何だね?」

「あの子…ノア君、でしたか、彼は一体何者なんですか?
あれ程の強さ…もしかしたら彼も【勇者】、とか…?」

「あー、確かに俺達も気になってたわ。
誰も何も言わないから王都の機密に関わる事なんかな、って思って聞けなかったんだよ。」

「何処ぞの貴族様のお子さんとか?」

「馬鹿お前、貴族でマトモな奴がいるかよ。」

「色々旅をしたが、あの様な契約獣なぞ…いやそれ所かあの様な…変身か?見た事無いぞ?」


色々意見が飛ぶが、フードの男は答えに迷っていた。


「あ、やっぱ聞いたらマズイ感じ?」

「いや、何と言うか…こちらも良く分からんのだ。」

「おいおい…諜報部でも分からないのかよ…」

「彼の【適正】は過去に数名いたにはいたのだが、あのレベルの者は今までいなかった。
彼の変身は何度か見た事あるが、先程のは今までとは別格だ。
【狂戦士】の変化に似ているが、自我は保たれているし、その状態で召喚術等聞いた事が無い。
それとあの契約獣だが、特殊契約獣の様で<鑑定>を使ってもアレが何なのかが分からない。
説明文には『飢餓ミミズ』と書いてあるが、書き換えているのだろう。
ちなみに彼は【ソロ】であって【勇者】では無い。」

「まぁ何にしても仲間であって良かったな…」

「「「「うんうん。」」」」

クイックイ「ん?」


と、全員納得した所でフードの男の影からにゅっと出て来て装束を引っ張る。


「おや、どうしたのだ、ヴァンディット嬢?」

「あ、いえ、『俺』様から伝言です。
『余計な詮索やしつこく聞いてこない限りは仲間として振る舞おう。
あと、猫!喋り過ぎだ。』だそうです。」


フードの男がノアの方を見ると、ゆらりと赤黒い影が見えた様な気がした。


「す、すまないこちらも話過ぎた、私も本来の仕事に戻るとするよ。」


そう言ってフードの男は足早に駆けて行った。


「うふふ、あんなに慌てちゃって。」

「いや、確かに話し込み過ぎたかもしれん。
さ、各々臨機応変に対応の方宜しく頼む。」


そう言って今度こそこの話し合いはお開きとなった。






前哨基地から南へ200メル程離れた広場にて


「ほいさ、これはアイアンリザード、こっちはアイアンスネークじゃ。
解体を頼むぞ、バラス、アルキラー夫妻。」

「はーい、お任せあれー。」

「ほぅ、先程の物とは違い、良い殺され方をしているね。殺意を感じるよ。」


ドワーフのバド、ルド、ロイの3人は荷車に山と積んだ蜥蜴や蛇モンスターの死骸を運搬し、解体専門の職員の所へと持ってきていた。

 死骸を渡す際は地下墓地で着けていたガントレットを装着し、表皮の主成分を見て仕分けている。


「蛇の血は右の、蜥蜴の血は左の樽に頼みますよ。」

「らじゃー。」

「了解。」

「なぁ、あんたら2人とは言え休まなくて大丈夫かい?
さっきから40体位ぶっ続けで捌いちょるが…」

「「趣味解体なので大丈夫です!」」


返り血がベットリと付いてはいるが、とても良い笑顔で笑うバラス、アルキラー夫妻。

(実際この2人、死骸を持ってくる度に元気になっていっとる気がする…あとハァハァ言っちょる、怖い…)


ザバッ!ザッ!ゾリッゾリッ!ズダンッ!ボトボト…

「はーい、お待ちどう様。
取り敢えず皮と肉、内臓と骨に分けておいたわ。」

「おぅ、あんがとよ嬢ちゃん。
そいじゃあルド、ロイ、肉と内臓、骨は頼むわぁ!わしゃ先にこん街のたたらに行って始めとくぞい!」 

「「おぅさ、頼んだぞい!」」


ドワーフのバドは荷車にどっさりと積まれたアイアンリザードやアイアンスネークの皮と共に、国営のたたら場へと歩みを進めて行った。
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