ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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フリアダビア前哨基地編

※別に修理するとは言ってない

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「さぁて、使い物にならんくなった防壁の設備、大砲2基と王都から試験的に買ったっつうガトリング砲2基を、戦力増強目的(※別に修理するとは言ってない)で兵士から"快く"貰い受けた!
と言う訳でわし等の手によってこれらの兵器を"魔改造"しようぞ!」

「「ガハハ!やったるぜぇ!」」

「…で、何でここに私もいるの?」


異様に張り切るドワーフとは対称に、取り敢えず呼ばれたミユキが愚痴る。
今4人がいる場所は南門から少し離れた広場で、辺りには分解された設備の部品等が散乱している。


「何でて、嬢ちゃん異世界の者なんじゃろ?
なぁんか凄い兵器とか無いんか?」

「いやいや…知ってたとしてお爺ちゃん達じゃ作れないでしょ?
それに、私は普通の女子高生だったから武器や兵器の知識無いわよ。
…私の恋人だった人なら詳しいんだろうけど…」

「じょしこうせいが何の事か分からんが…
なぁんが、期待外れじゃのぅ…」


むすっとするミユキがチラリとガトリング砲を見る。


「と言うかこの世界にガトリングがあった事に驚きよ。
こんな物見たの映画の中だけだわ…」

「何じゃ、えいが言うんは?」

「うーん、何て言ったら良いかな…映像作品?」

「何じゃ、えいぞー言うんは?」

「うーん、うーん…」


このやり取りを4~5回程繰り返した所でミユキが「とーにーかーくー」と話を中断し、当初の話に引き戻した。


「その映画って奴でこれに似た物を見ただけって話!」

「似た物?これと何が違うんじゃ?」

「これは手回し式だけど私が観た物は、この…砲身?が自動で回って、給弾、装填、発射を連続で行われている物だったわ。」


ミユキの発言を受け、考え込むドワーフ達。


「ふーむ、自動でのぅ…魔力回路の術式を組み込めば訳無いが、弾か…材料があらんし、魔力弾に変更してみるかのぅ…」

「いや、ただの魔力弾じゃ強化されたアイアン系モンスターの表皮すら貫けんじゃろ。
弾にも何か工夫せんとな…」

「工夫…そう言えば奴等は…
お、そこにおる兵士の兄ちゃん、ちょっと【料理人】の所行って聞いて来て欲しい事あるんじゃがええかのぅ?」


ドワーフの1人が"ある事"を思い付き、兵士に調べてきて貰うようお願いしている。


「…それを聞いてくれば良いのですね?」

「ああ、頼むぞ。」


指示を受けた兵士は直ぐに駆け出して行った。


「ロイ、なぁんか思い付いたんか?」

「ん?ああ、まぁ予想が当たっておったら話すとするわい。」


勿体振らせるなぁ、とミユキは思いつつも話は続く。


「嬢ちゃん、他には何か無いかのぅ?」

「うーん…あの俳優、ガトリング以外何持ってたっけなぁ…
彼、特定の俳優の映画しか観なかったからなぁ…
ショットガン…は弱い?のかな…
後は…レールガン…かなぁ…」

「レールガン?何ぞ、それ?」

「詳しい事は私も分からないけど、金属の棒2本に電気流して金属の弾を飛ばすって言う…」


ガトリングの時よりも更にザックリとした説明をすると、意外な答えが返って来た。


「あれ?それと似た様な物作ってくれっちゅう『ゆう』と名乗る坊主がおったな。」

「ああ、おったおった。
あと、嬢ちゃんが言っとった『しょっとがん』つうのも作れないか聞いてきたのぅ…」

「わっけ分からん事言うとったな、『げんだい知識を活用して生き抜いてやる』言うとったわ。」

「ちょっ、ちょっと待って!?その人ってどんな見た目か分かる!?」


今までに無い位感情を露にしてドワーフ達に詰め寄るミユキ。


「落ち着け、落ち着け…
そうさなぁ、嬢ちゃんの頭の位置にその坊主の肩辺りにあたる位背のでかぁ奴じゃったわい。」

「髪が短く刈っちょって快活そうな坊主じゃったね。
後は左腕に長い古傷があっとったなぁ。」

「あ、そうじゃ、その坊主が書いたメモあるんじゃが見てくれんか?
文字が読めんくて困っちょってのぅ…」

「み、見せて!!」


ドワーフのルドがアイテムボックスから数枚の紙を取り出す。
ミユキはその紙を受け取ると食い入る様に見始めた。


「…ちょっとわし等は飯でも食って来るでの、また後でな。
バド、ロイ、行くぞ。」

「…はい…」


少しして紙に目を通していたミユキの表情に変化があったので、ルドがバドとロイを誘ってその場を離れる。

残ったミユキは壁の方を向いて何度も紙に目を通す。
誰にも聞こえない声でポツリと呟く。


「…悠君の文字だ…」








「お?どうしたドワーフ3人衆、さっき門の所で【勇者】の娘とワイワイ騒いでなかったか?」

「ん?まぁそのつもりじゃったが、あの娘にも色々ある様での、少しそっとしとこ思っての。
お前さん達は何しとったんじゃ?」

「「何って、ぼっち君の様子見に来たのよ。
ヴァンちゃんが診てるとはいえ心配だったから。」」


ちなみに『ヴァンちゃん』とは妖精2人が付けたヴァンディットの愛称である。
いつの間にか仲良くなっていたらしい。


「う、うううっ…」

「あ、ノア様、大丈夫ですか!?」

「魘されちょる、傷が熱を持っとるんじゃろ、凄い熱じゃのう…」


ドワーフのバドがガントレットを装着した手でノアに触れる。
体温を見ている様だ。

「傷が多いし、意識もハッキリせんからスキルが働かんのじゃろう、大の大人でも耐えられんてこれじゃ…」

「クリストロ、氷出せるか?」

「はいよ。」


エルフのユグがクリストロに指示を出し、魔法で氷を出して貰う。
ユグとサンドラはその氷を布で巻き、ノアの体の周りに置いていく。


「スゴく原始的な方法だけど、一先ずこれで熱を下げましょ。」

「時折クリーン掛けた方が良いじゃろうな、化膿しとるかも知れんしの。」

「一応定期的に火傷に効く薬と回復薬を混ぜた物を塗り込んでましたが、追加でクリーンも行いましょう。
安心して休んで下さいね、ノア様。」


ヴァンディットの両手がノアの頬に触れる。
すると落ち着いたのか、再び深い寝息を吐き始めた。


「一先ず落ち着いたかの。」

「その様じゃ、さて飯でも食いに行くかの。」


と、ノアの様子が収まった所でまた別の問題が発生した。


「おい!誰だ、私達を奴隷と同じ様に雑魚寝させおって!」

「おい!腹が減った!誰か食事を持って来い!」


取り巻き2人が目を覚ました様で、途端に周囲の人々が溜め息を漏らす。
が、これに即座に対応したのはエルグランドだった。


「お、やっと目を覚ましたか。(強制的に眠らせてたけど)
それだけ元気があるなら大丈夫そうだな。
さて、早速資材運搬の手伝いをして貰おうか。」

「何だと貴様!何故我々がその様な事をしなければならんのだ!」

「それに私達は死の淵を彷徨っていたのだぞ?
にも関わらず手伝えだと?正気か貴様!」

「はいはい、たかだか右足と脇腹に穴空いた位でわーわー叫ぶな。
お前達より重傷だった冒険者はもう起きて手伝いやら、見回りに行ってるんだ。
この街に来てから特に何もしないまま怪我だけ負ってぐーすか寝てたお前達とは違う。
分かったらさっさと何か仕事見付けて来い。
働かざる者食うべからず、ってね。」

「ふん!先程言った事をもう忘れたのか?
貴様如きの指図は受けん!最終的な判断は国が決める!」

「そう言うだろうと思って、国から返事を貰った!
良く確認しろ!」


エルグランドはフードの男から受け取った紙を広げ、取り巻き2人の前に掲げる。
ヒュマノ聖王国製の紙、ヒュマノ国王の印が押されており、字も紛れもなく国王の物だった。


「な、何故…だ…あの爺がこれを!?」

「う、嘘だ!こんな物偽造したに違いない!
あの老いぼれは我等の傀儡も当然!この様な文章を…書く訳が…」


そこまで叫んだ所で周囲の反応に気付き、言葉が詰まる取り巻き2人であった。
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