ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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フリアダビア前哨基地編

ノアく~ん、ちょぉ~っと来てくれる~?

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<ノアく~ん、ちょぉ~っと来てくれる~?>


時間は少し遡って、街にシエストラバードが飛来した場面まで戻る。
バラスの間延びした声が常時発動していた<聞き耳>に引っ掛かった。

ノアは影移動を駆使して教会内にいるバラス、アルキラーの元へと移動する。


「お、来てくれたな。」

「どうしました!?今、街に謎のモンスターが…」

「まぁ~まぁ~落ち着いて落ち着いて~。」

「一先ず冷静になって貰えるかな?」


妙に落ち着いているアルキラーといつも以上に間延びした声のバラスに、一気に気分が落ち込んだノアは2人の話を聞く事にした。






「『造魔』ですか…あの…『竜人』が…でしたっけ?」

「そそ、そ~そ~。」



『竜人』…竜族が人間形態になった姿。
本来の力をかなり凝縮させている為、防御力、攻撃力、俊敏性等がかなり向上している状態。


『造魔』…文字通り造られた魔物。
体内の至る所に『コア』と呼ばれる結晶状の物質があり、破壊しない限りは時間を掛けて魔素を吸収して何度でも復活する。
体が幾ら欠損しようともモンスターの肉体や魔素を吸収して幾らでも再生可能。
【魔王】や、それに似た存在が作成可能で、人間には『コア』は作成不能と言われている。


「前に似た特徴の奴を何体か倒した事があってね、恐らくアイツも同じ類いの物だろう。」

「それでお願いがあるのだけど良いかしら~?」

「何でしょう。」

「今言った様に、周囲にモンスターが多数存在していると幾らでも再生する。
奴単体で、且つ再生要員さえいなければ私達2人でも対処可能だ。」

「つまり、その状況に持っていって欲しいと言う訳ですか?」

「…ああ、そう言う事だ…頼めるか?」


2人からの提案に少し考えるノア。


ドガン!ドガッ!ゴガン!
シュドドドドドドドドドッ!

ゴゴゴギゴギギギギギギギギギギンッ!!


「「「!?…始まったか…」」」

「音から察するに、大した効果は与えてなさそうですね…
分かりました、その依頼引き受けましょう。」

「…ありがとう、助かるわ。」

「ちなみに、"最終的に"その状況に持っていけば良いんですよね?」

「そうだが…何をするつもりだい?」

「今外では皆が戦っていますが、アイツはこの間戦ったヒュドラよりもヤバイ感じがします。
僕はこれから影に潜んであの竜人の動きを観察しつつ、皆の窮地を救います。
戦いが始まった今となっては連絡するのは困難でしょうから皆には方針を伝えずに行きます。
こういった戦場では難しい事かも知れませんが、死人は極力出したくは無いんです。
僕の【適正】の問題もありますので全員の無事を確認した後、依頼の実行に移ります。
それで良いですか?」

「ああ、それで良い、ただ無茶はしないでくれ。」

「勿論です。」

ゴバァッ!ズズズズズズズズン!


外では竜人による火球攻撃が炸裂し、上級冒険者が吹き飛ばされている所であった。


「それではこの方針で行きます。
2人は防御結界を発動したら直ぐに【神官】の方を安全な場所へ!
ヴァンディット、少しの間忙しくなるが協力頼むぞ!
あとマナポーションを大量に用意しといてくれ、影移動の消費魔力は全て僕が引き受ける!」

「了解しましたノア様!」

「グリードは2.5メルサイズになって出てきてくれ!」


そう言うとノアの足元に魔法陣が展開、ノアの呼び掛けに応じて2.5メルサイズで出現。


「良いかグリード、これから初めて君と共に戦う事になる。
が、僕の【適正】上、共闘という形を取ると僕の【ソロ】効果が失くなって弱体化してしまう。
だから対抗措置として、噛み付きだろうが例のプラズマレーザーだろうが全ての攻撃に対して、"僕を狙え"。
奴を誘導して紙一重で避けて当ててやるからな。」

グ…ル…


ノアの提案に対してグリードの反応が宜しくない。
するとノアはグリードの頭に手を置き


「グリード。僕を、『俺』を信用しろ。」


ノアは片目だけ赤黒く染め、真っ直ぐにグリードを見詰める。

グルル!

「ふ、良い子だ。
それじゃあグリード、合図を出すまで待機。
その後の戦い方は臨機応変に行くぞ!」

グルルォアッ!


そう言ってグリードは再び魔法陣を展開して地面の中へ。
ノアは影に潜って行動を開始した。




その後ノアは倒壊した家屋のに吹き飛ばされた上級冒険者、レールガンで待機していた兵士、ユグ、妖精2人、エルグランド、ドワーフ3人の救出を次々と達成していった。


「お前さんの姿が見えんかったから、何か画策しとるとは思っとったが…
まさか全員助け出しとるとはな…」

「ミユキさんは助けられませんでしたがね…」

「奴の話を信じるなら生きとるらしいから後で探しに行っちゃるわい。」

「お願いしますね。」


そう言って影移動しまくって魔力が枯渇し掛かったノアが立ち上がる。


「それじゃあヴァンディットさん、皆の手当てをお願いします。」

「はい、行ってらっしゃいませノア様、どうか御武運を。
あとマナポーションをお飲み下さい、魔力が枯渇し掛かってますので。」

「ああ、ありがとう。」


ヴァンディットから貰ったマナポーション2本を飲みながら、シエストラバードの背後の影より出現したノア。


(『俺は今回は静観って事で良いんだよな?』) 

(ああ、万が一2人が対処出来なかった場合は頼むよ。)

(『了解だ。派手に暴れろよ?』)

(勿論だ。)


飲み干したマナポーションの小瓶を地面に落とし、シエストラバードに自分の存在に気付かせる。

パリン…パリンッ!…


《ん?何でしょう、この音は…》













そして現在に至る。


「ありがとう、ここまで事を上手く運んでくれて。」

「ま~かさ~れた~。」


シエストラバードの背後からぬうっと腕が伸び、素手の状態で胸部に腕を捩じ込まれる。


《な!?…うごぉ…ああっ!?》

「確か…」

「こ~の~あ~た~り~に、あったあった!」


バラス、アルキラーが同時にシエストラバードの胸部から手を引き抜く。
と、同時に突然現れた2人から距離を取るシエストラバード。


《何だ!貴様ら…は…》


2人が手に持っている物を見て目を見開く。


「これは左腕の。」パキンッ! 

「こ~れは~右足。」ビキッ!


2人が持つ『コア』を砕くと共にシエストラバードの左腕と右足が砂の様に崩れ去っていく。

何とか尻尾を支えに体勢を整えると、即座に口を開いてブレスを吐く。

ゴガガガガガガガガガガガガガッ!

《くそっ!何だ今のは…私の『コア』の場所を1発で見抜きおって…
だが私のブレスを持ってすれば他愛…な!?》


ブレスによる破壊の余波が落ち着くよりも先に、平然と爆炎から姿を現すバラス、アルキラー両名。


《な、何故だ!私のブレスを食らって何故平然としてられる!
それに貴様らは何者だ!》


シエストラバードから問われた2人は表情はそのままに自己紹介を始める。


「初めまして、私は【暗殺】のアルキラー。
趣味で解体業を営んでいる、因みにお前の質問に答えよう。
このスーツは60億ガルを掛けた特別製でね、お前如きのブレスなら何て事は無い。」

「どーもー、はーじめまーしてー。
私も【暗殺】のバラス。
旦那と同様趣味で解体業営んでまーす。
魚の3枚おろしから龍種の解体までなーんでも御座れ。
今日は造魔を『殺す(バラス)』予定でーす。
因みに私のスーツも特別製だからブレス吐いても無駄よ~。」


自己紹介を終えた2人は真剣な顔付きになり仕事を開始する。
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