ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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王都編

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怒鳴り散らす様に戦いを申し込んできた『新鋭の翼』リーダーに対して、ノアは無言で顔の前で腕を交差して✕を形作る。


「な!なぁっ!?」


そのノアの行動に困惑したリーダーの男性に対して、側近の男性が申し訳無さそうに述べる。


「実はな、今の君と似た理由でノア君に対して勝負を持ち掛けた者が2名いてな。
1人は調査隊隊長のベルドラッド。
2人目は【召喚】のアリッサだ。
ちなみにこの2人にもノア君は勝っておる。
ただ、そのせいで王都に来るのをずっと拒まれておったのだ。
今回も『この様な事』が起きないのを条件に来て貰ったのだ、我慢してくれ。」


納得していない男性だが、王の前であるのでそれ以上の追求は無かった。


「さて、ノア君は褒美について要望があればバラス、アルキラー夫妻同様、申告してくれれば応じよう。
今回の皆の働き誠に感謝する。
近年の物資不足で細やかではあるが宴を用意してある。
是非とも参加して貰いたい。」


ここで言う宴というのは王を含めた王族やそれに付随した立場の者、近隣諸国の貴族や令嬢、令息、大商人等、顔見せに集まった者達が一同に介した場である。

後々の事を考えると顔を覚えて貰った方が、冒険者として安泰とも言える。

その為6人パーティ、3人パーティの面々は待ってましたとばかりの雰囲気を醸し出していた。

が、そんな事一切考えていないノアは徐に手を上げる。


「あの~すいません、この後依頼を受けてるのですが、僕はここまでという事で構いませんか?」


この発言にこの場に集まった冒険者はおろか側近と隊員らも『えっ!?』と言う顔をする。


「そう言えば昨日ジャロルから報告が上がってたな。
【金細工・彫金加工】ギルドと【料理人】ギルドの合同護衛依頼が入ってきたが、君が受けてたのか。
君は今回の宴の目玉でもあったのだが、致し方無いな。
では宴の参加者は少し話があるのでこのまま残って貰いたい。」


そうして王は隊員に目で合図を送り、隊員はノアを伴って部屋を退出した。







ガコン!ギギィィ~…


「あれ、ノア君…だけですか?」

「あれ?ライリさん、どうしたんです?王城の前で。」

「私は謁見の後に催される宴の会場へ案内する為に待機していたんです。
そしたらノア君だけ出てきたから…」

「ああ、何か宴の参加者はもう少し話があるみたいなのでまだ掛かるんじゃないですかね。」

「そうですか…ん?という事はノア君は?」

「僕は護衛依頼受けてるので不参加という事で。」

「な!?何で!今後の事考えたら出といた方が良いよ!?」

「いやぁ、さっきまで屋台でしこたま食べたので実はもうお腹一杯なんですよ。
これ以上は流石にもう入らないので辞退しました。」

「何でこんな時だけ年相応の子供っぽさを発揮するんですか…」


何かを必死に訴えようとしているライリだが、よく分からないのでノアは手を振ってその場を後にした。





カランコロンカラン

「いらっしゃ…お!例の少年だね?
今日は何か用事があると聞いたが良いのかい?」

「実は用事がもう済んだので、皆さんの都合が良ければ出発は可能ですが…」

「何!?ちょっ、ちょっと待っててな!
クリスとクックに連絡してくる。」


そう言って【彫金加工】ギルドの者は建物を飛び出し、隣の建物へと入っていった。
待っている間何してようか、と考えているとカウンターの奥から声が掛かる。


「君が護衛依頼を受けてくれた冒険者だな?
話には聞いていたが、本当に新人の様だな。」


後ろを振り返ると、ドワーフみたいなずんぐりとした体型で太い腕の男性が立っていた。


「悪いな、依頼内容的にどんな奴が受けたか気になったんだ。
俺はこのギルドのギルドマスターをやってるモガってんだ。
なぁお前さん<気配放出>持ってるだろ?
ちょっと放って貰って良いか?力量を量るならコレが手っ取り早い。」


言われてみて確かに手っ取り早いな、と初めて気付いたノア。
通りで先程の6人パーティのリーダーは『少し』殺気を飛ばしていたのだな、と思い至る。

ノアは<殺気放出>の設定欄を確認すると『シエストラバード』になっていた。
トドメを刺したのはバラス、アルキラーの2人なのにな、と思いつつもギルドマスターに向けて殺気を放つ。


「これで良いでしょうか?」ズオッ!


ノアが殺気を放つと途端にギルドマスターのモガが冷や汗を流し、顔が強張る。


「だ、大丈夫だ…試すような真似をして申し訳無かった。
頼むから殺気を止めてくれ…」


ノアが殺気を抑えると、モガは深い溜め息を吐く。


「お前さんが王城から出てくる所を見たって話をさっき聞いてな…
今の時間は確か謁見が行われていたハズだと思い至ったんだ。」

「なるほど。
それで、僕の評価はどうでしたか?」

「はは…職人風情がお前さんの評価等烏滸がましいわい。
寧ろ安心してギルドメンバーを任せられるぜ。」


ガランゴロンガラン


「おぅ!昨日の…ノア君だったか、もう出立出来ると言うのは本当か!?」

「ええ、都合が良ければいつでも。」

「よっしゃ!昼!昼に行こう。皆もそれで良いよな?」

「「「「おお!」」」」
「「「ええ!」」」


という訳で昼(約1時間後)に西門で集合となった。 








「お!来たな!」


10分前行動をと思って早目に着いたつもりだったが、既に各ギルドから5名ずつ、荷物持ち各1名の男女12人が集まっていた。 


「早いですね。待たせてすいません。」

「いや、こっちが先走り過ぎた。
取り敢えず鉱山までは俺達が先を行くから護衛の方を頼むぜ?」

「ええ、畏まりました。」


【彫金加工】【料理人】ノアの並びで門を出る。
ノアにしてみれば初めての王都の外である為、目に飛び込んできた光景は全て新鮮なものだった。

まずは、ただただ広い草原が目に入る。
草の高さは高くても腰程までしかないので見張らしは良いが、小型のモンスターが出てくると厄介な場所とも言えるだろうし、なだらかな勾配はあるものの、歩いている分には体力的には問題無いだろう。

視界の範囲内でも新人冒険者だろうか、3~5人のパーティが3組見える。

頭に突起が付いた白い塊を追い掛けているので、恐らくあれが『角ウサギ』なのだろう。


「そう言えば、道中で出会したモンスターはどうしますか?」

「仕留めてくれたら【料理人】ギルドとして買い取ろう。
【料理人】として素材の状態は特に重視するから、状態が酷い物は処分するかも知れないがね。」


何て話をしていると、<気配感知>の範囲に未確認のモンスターが近付いて来た。

徐にノアは進行方向に歩き、草むらの切れ目で立ち止まる。

ズバッ! 

草むらから勢いよく『角ウサギ』が飛び出し、突進を仕掛ける。

が、待ち構えていたノアが角を鷲掴みし、掴んだ勢いそのままに手首を捻って『角ウサギ』の首をへし折った。

ゴギリ! ギュッ!?

『角ウサギ』は短く悲鳴を上げた後にぐったりとして動かなくなった。

草むらから『角ウサギ』が飛び出して1秒も掛からず仕留めた為、周りの者は何が起こったか分からないと言った表情をする。

仕留めた『角ウサギ』を背後にいた【料理人】の女性に差し出す。


「これで良いですか?」
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