ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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王都編

リヴァイアさん

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「…と言う訳です、リヴァイアさん。」

「なる程、上層で爆発があって昇降機ごと落ちて来たとはねぇ…」


ノアは目の前に立つリヴァイアに、鉱山に来た所から今までの経緯を説明する。
話を聞き終えたリヴァイアは両手をパチンと合わせた後に広げると、間の空間に何かの図が現れる。

その図をリヴァイアが摘まんで後ろのガラス張りの壁に放ると、壁の大きさに図が拡大。


「あれ?これって鉱山の地図…と言うか断面図ですか?」

「そう。
今表示しているのは、鉱山入口~『レベル26』までの断面図。
つまり、広く世間一般に周知されている範囲を表示している訳だ。そして…」


リヴァイアがガラス張りの壁に向かって両手を広げ、内側へと狭める様に動かすと、鉱山の断面図が圧縮されていく。
その代わりに鉱山直下の下方にぽっかりとした空間が表示される。


「今表示されたのが新造中の『レベル158 クラーケンの巣』。
君が落ちてきた場所だ。」


リヴァイアは『レベル158』の入口付近をコツコツと叩く。
するとその箇所が更に拡大されていく。


「ライブ!」


と、リヴァイアが何か唱えると、拡大された箇所に大破した昇降機が表示される。


「え?凄…」

「空間魔法の応用よ、場所を指定してその場所とこの図を繋げただけ。」

「へ~。」

(何か最近『空間魔法』って言えば何でも有りな気がしてきたな…)


『空間魔法』の汎用性に気付き始めるノアだった。


「ふむ…それではこのまま上に図を持っていって…と…」


ガラスに指を当て、スイッと3~4回下になぞって行くと、図が上へと移動。
目まぐるしく表示が変わって行き、昇降機の始点に到達。
その辺りを再びコツコツと叩き、拡大するとリヴァイア、ノア共に表情が険しい物に変わる。


「「誰か居るな…」」


表示されている図には、黒いフードを被った人物が7人映し出されていた。
よく目を凝らしてみると、その内の1人の鼻から下が映っており、口元に笑みが見える。


「コイツらが犯人かしらね…」

「分かりませんが、何かしら知っているでしょうね…
ん?リヴァイアさん、鉱山の入口付近を映して貰っても良いですか?」

「ん?いーよ。」


リヴァイアにお願いし、入口付近を表示すると10人程倒れている姿が見える。


「…兵士達だ…」


倒れている人物の装備を見てみると、前日ノアに感謝の念を伝えてきた兵士達と判明。
力無く倒れている姿が目に入る。

ギリッ…

ノアの目が据わり、歯軋りをする音が響く。
その表情を見たリヴァイアはノアに提案を出す。


「ノア君。
セレイアから、ここと外では空間が違うから外では時間が止まってると言われなかったかい?」

「…ええ、言われました。」

「つまり、今この壁に表示されている状態のまま時が止まっていると言う事だ。
今戻れば、犯人を捕まえられるかも知れないけど、どうする?」

「勿論行かせて貰います。
何でこんな事しでかしたのか、聞きたい事が山程ありますからね。」

「ふ、了解したわ。
それではノア君を転移させるのはこの昇降機の始点で良いかしら?」


リヴァイアから転移場所を聞かれたノアは、鉱山の拡大図を眺め、顎に手をやりながら考える。


「え~っと…『レベル8』に転移して頂いても良いですか?」

「良いけど…やっぱ仲間を回収してから行くのね?」

「ええ、あっちでは僅か数分とは言え、皆心配してるでしょうし、放っては置けません。
それに、僕には入口で倒れている兵士を助ける手立ては持ち合わせてはいませんのでね…」


ノアの口振りからして何か考えがあるのか、時折図を見ながらどう動くか確認をしている。




「そうだノア君、この一件が一段落したらまた戻って来て貰っても良いかな?
少し今後の話をしたいんだ。」

「え?あ、はい、分かりました。」


どんな話をするかは定かでは無いが、一先ず目の前の事に注力する事にする。


「それじゃあ、そろそろ転移させるよ、準備は良いかな?」

「ええ、僕は大丈夫です、グリードも良いかな?」

グルルァィッ!

ここに来てからずっと黙っていたグリードに確認を取ったノアは、リヴァイアに合図を送る。


「よし、それでは『レベル8』、行ってらっしゃい。 」

パン!                   シュバッ!

リヴァイアが手を叩くとノアとグリードの足元に魔法陣が展開、直ぐに光と共に姿がかき消えた。


「ふふ、ノア君か。
何とも面白い子が来たもんだ。」


リヴァイアやガラス張りの壁に映し出された光景を見て呟いていた。











~昇降機が『レベル158』に落下して1分後~


ゴシャァアアア…

「下の方から、凄い音が聞こえたぞ…」

「多分『レベル26』まで落ちたんだよ…この高さじゃ…」

「そんな事ありません!有り得ません!有り、得ま…」

「…ヴァンディット嬢…」


ノアが乗った昇降機が落下し、暗くて底が見えない縦穴を覗き込むクリス、クック、ヴァンディット、ドゥ。

皆ノアの生存は絶望視し、ヴァンディットも頭では分かってはいるものの声を震わせ否定する。
そんなヴァンディットに胸を貸すドゥ。


「…上から轟音が聞こえたが、爆発があったのか…?
ガス漏れ?爆発性の鉱石とかあったか?」

「そんな物、上には無いハズよ!」

「じゃあ人為的に!?」


など、各々臆測していると皆の背後から光が差す。

シュバッ!

「上で誰かが爆破した様で、今からそいつらを捕まえに行きます。」

「「「「「「ノ、ノア君!?」」」」」」


当然の事だが、驚く一同。ヴァンディットは口に手を当てて固まり、ドゥに至ってはノアと縦穴を交互に見て「え?え?」と呟く事しか出来ずにいる。


「ちょ、ノア君血塗れのボロボロじゃないか!?
今すぐ治療を!」

「詳しい事は後で話します!ヴァンディットさん、心配させて申し訳ありません。
早速ですが、ここにいる全員を影の中へと移動させて下さい!」

「はい…
ぐすっ…はい!」

「よし!全員移動させたら直ぐに僕の影に!」

「畏まりました!
と言う訳ですので失礼します!」

「え?ちょっと事情がよく『ぞぶっ』」


困惑するレイルを問答無用で影の中へ移動させたヴァンディットはノアの影に潜る。


「準備完了、それじゃあ犯人達の元へ向かいます、か!」

ブォンッ!

縦穴へと身を乗り出したノアは遥か上に向かって荒鬼神をぶん投げた。









「どうだ?」

「暗くて分からんが、この高さから落ちりゃ即死だ。
音が返って来たら任務完了で良いだろう。」

「しかし、子供1人にやり過ぎじゃないか?」

「キエフ様がやり過ぎ無かった時なんかあるか?」

「「「「「「無いな。」」」」」」


アハハと笑い合う黒いフードの者達。
どうやらキエフの手下の様である。

ゴシャァアアア…

「お?音が返って来たぜ、今頃返って来るなんてどんだけ深いんだ?ここ。」

「んな事どうだって良いだろう。
へへ、ガキが乗った昇降機を落とすだけで100万か…これだからキエフの旦那ん所はたまんねぇぜ。」

「前情報だと『手を抜くなよ』って言われたが、何か肩透かし食らったなぁ…
なぁ、表で気絶させた兵士達、殺って来て良い?」

「他は好きにしろと言ってたから別に良いんじゃねぇか?」

「手早くやれよ。」

…ン…

「分かってるって…ん?」

…ュン…シュン…バシュン

「…何の音だ?」スタスタ…

「どうした?」

「いや穴の下から音『ゴチュッ!!』」


黒いフードの男が縦穴の中を覗き込んだ瞬間、顎に強い衝撃を受けて宙を舞い、天井に頭を叩き付け、そのまま地面に落下し失神した。

ドシャァッ! 「え?」「は?」

黒いフードの仲間達は何が起こったか理解出来ずに佇んでいると、縦穴から乾いた血に塗れ、ボロボロの防具を纏った少年が這い上がって来た。
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