ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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王都編

大海獣の

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「『大海獣の柔肌』が10枚、『大海獣の厚龍殻』も10枚、『大海獣の粉砕牙』が150本、『大海獣の筋繊維』が120本、『大海獣の爆砕拳』が2本…
幾らなんでも貰い過ぎな気がするのですが…
それにこの素材ってまさか…」


クラーケン(成体)からリヴァイア経由で素材を受け取る。

文面だけ見ると、量的に少なく感じるが、『大海獣の柔肌』も『大海獣の厚龍殻』も1枚が縦横3メルを超える大きさがある為、防具を作るにしても1枚で十分とすら感じる。

『大海獣の粉砕牙』は牙と言うにはあまりに巨大で、1本1本がノアの足の付け根から足先まであり、太さも尋常じゃなくある為、何に使う物なのかも分からない。

『大海獣の筋繊維』はまだ良いとして『大海獣の爆砕拳』は、まんま巨大なクラーケンの手首から先の拳がゴロリと置かれていた。

と言うかこの素材の出所って、ま、まさか…


『ああ、この素材は最近寿命を迎えた同族の物だ。』


先程戦ったクラーケン(幼体)では無い様子。
それを聞いて少し安心するノア。


「…その様な物を頂いても良いのですか?」

『気にしないでくれ、弔いはキチンと行った。
遺骸は最終的には海に帰す決まりになっておるし、何もせずただ朽ち果てていくのを見るのは儂らも、弔われた者にとっても耐えられん。
それよりか、お主の様な強者に役立てて貰った方がその者にとっても良いだろう。』

「…分かりました、有り難く頂きます。」





素材を渡し終えたクラーケン(成体)は、用が済んだとばかりに身を翻してノアの元を去ろうとする。


『お主とは一度戦ってみたいものよ。』

「僕はあなたと戦う事が無い様、行いに注意します。」


クラーケン(成体)の言葉に「うへぇ」と言う顔をしてノアが答える。


『ふふん、つれないねぇ…』


そう言い残してクラーケン(成体)は、今度こそその場から去って行った。







クラーケン(成体)の後ろ姿がまだハッキリと見えてはいるが、リヴァイアからノアに声が掛かる。


「あちらの用は済んだ様だし、次は私の話に付き合って貰って良いかしら?」

「ええ、戦う事以外であれば構いませんよ。」


リヴァイアから漂う雰囲気からして戦う事は無いと思うが、念の為釘を刺しておく。


「実は私共は、永く深海で過ごして来たが、この度王都と国交を結びたいと思っているのだ。」

「おお、良い事じゃないですか。」


リヴァイアの話によれば、永い事深海で何不自由無く暮らしてきた。

別に深海で暮らす事に特段不満も無いし、今までは人間と交流を深めずとも良いと考えていた。

人間達が鉱山の採掘を進め、そこで出会った時にどうするか考えれば良い。
と思っていたのだが、海洋種の若い世代が外の世界に興味を持ち始めたのだ。

実はその切っ掛けを作ったのは他ならぬリヴァイアだったりする。


「私は他の海洋種の者達と違って『人化』は完璧だし、陸に上がって長時間の呼吸も可能だ。
そんな訳で時折外に出て散策したりしてね、子供達に聞かれるんだ。
『外はどんななの?』『食べ物美味しい?』ってね。
外の話を聞かせたりはしたけど、食べ物は与えなかったよ。」

「ああ、口に合わなかったとか…」

「いや、外の食事…特に甘味は子供に与えたら暴動が起きると思ってね…」

「ああ…海だから塩ですものね、基本…」


ノアの村では昔、とても甘い柿が生る木があり、しょっちゅう子供達が取り合いのケンカをしていた事がある。
甘味の魔力は恐ろしい。


「それに永く生きている者や、昔人間と戦った事のある者は国交を結ぶ事に懐疑的でね。
何か良い切っ掛けがあったら結ぼうかな~、なんて思ってたんだ。」

「あ、もしかしてその切っ掛けって…」

「そう、君、ノア君だ。
クラーケン(成体)の息子が人間の子供に返り討ちにあった、って報せが瞬く間に広がってね。
今まで懐疑的だった者も『ここは敢えて人間達と国交を結び、弱点を知っておかねば…』って変な方向で前向きになっちゃったんだ。」

「あれまぁ…」

「まぁ形は違えど前向きになってくれたのなら良い方向として捉えるとしよう。
それに何かしらやらかす奴が出たら『ガツン』とやってやるよ。」


リヴァイアが恐ろしい程に魔力を込めた拳を見せる。


「ははは…
それではこれから国交に取り組んで行くんですね?」

「そう言う事。
それでノア君にお願いしたいのだけど、ノア君には仲介人として王都と私達との仲を取り持って欲しいんだ。」

「うぇえっ!?僕に、ですか!?」


唐突に告げられた荷が重そうな話に焦るノア。


「どうやらノア君はその歳の割に王都の人達とそれなりに関係を築いてる様に思う。
さっき、この画面越しに様子を見てた限りの予想だけどね。
私達は永い事深海にいたから外の事は全くと言って良い程知らないし、人間との繋がりも一切無い。
そんな未知の種族が急に国交を結びたいと言ってすんなりと話が通るとも思えない。
そこでノア君を介して、王都の人に話を振って貰えないだろうか。」

「…上手く行くかは分かりませんが、取り敢えずちょっと相談してみます。」

「まぁ、そこまで気負わなくても良いよ。
取り敢えず国交の第一歩として、まず認知して貰う事が目下の目標だしね。」

「そ、そうですか…」


何の問題も無く国交を結ぶ事をお願いされていると思い込んでいたノアは少し安心する。

(取り敢えず王都に戻ったらジョーさんか、王に相談してみよう…)

「あ、そうだ、コレをノア君に渡しておくよ。
この龍宮城への簡易的な転移符よ。」


リヴァイアがノアへ何やら呪文が書かれた紙を10枚程手渡す。


「その符に魔力を流して龍宮城の入口を想像するとそこに転移出来る様に設定してある。
あくまで簡易的な物だから、半径3メル程の範囲でノア君含めて3人までしか一緒に来れないから、誰か連れてくる場合はよく考えてからにしてね?」


恐らくリヴァイアの実力なら更に高性能な転移符を作る事は可能であろう。
一応信用してくれてはいるが、軍隊等を連れて来れない様に配慮しているのかな?

などと勝手に考えたりしたりするノアであった。


「今日から大体1週間位はゴタゴタすると思うので少し時間が掛かると思います。」

「まぁ、気長に待つよ。1年位は誤差よ誤差。」

「長命ぇ…」


その後ちょっとした世間話をしたノアは、そろそろ地上に戻る事を伝える。


「それじゃ今度の転移先は最上層の昇降機入口で良いかな?」

「はい、そこでお願いします。」

「ちなみに転移後はあの昇降機の縦穴に入っても下まで落ちるだけだから注意してね。」

「はは、落ちるつもりは無いので大丈夫ですよ。」

「了解、それじゃあ転移させるよ。」


パン!シュバッ!

リヴァイアが手を叩くとノアが光に包まれ、姿が消えた。







バシュン!

「ふぅ、戻って来『モフッ』

「ぬ?」「あら?」

ズルッ「おわっと!?」ガシッ!


ノアが最上層に戻ってくると、目の前を塞いでいた毛玉の塊に突っ込む。

毛玉の正体は、どうやら様子を見に来たドゥの様で、毛の弾力で押されたノアが縦穴に落下。
寸での所で縁に掴まって事なきを得た。



「はぁ…これがフラグ回収って奴か…」
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