ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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王都編

ギガンテ・ドゥマ

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『ギガンテ・ドゥマ』…古くから深海に棲息されてると噂されていたクラーケン(成体)の素材を使用した全身防具(頭以外)。
通常状態でも高い防御力を誇るが、瞬間的な防御力は更に凄まじい物となる。

関節部は龍種の物と同程度の強度を誇る『大海獣の厚龍殻』を使用している為、大砲を食らったとしてもビクともしない。

更にこの素材は丁寧に加工していけば衝撃吸収能力が備わり、溜めに溜めた力を瞬時に全方位に解放する必殺技『エルプシオン・ヴォルカニカ』を発動する事が可能。
だが、発動の際周囲から人を遠ざける事をお勧めする。


受け流し効果(大)、攻撃力上昇(大)、防御力上昇(特大)、身体能力上昇率3割、衝撃吸収

衝撃吸収効果『エルプシオン・ヴォルカニカ』の発動目安:装備の色が暗めの深海色→鮮やかな青に変化すると発動可能。



「うわぁ~…見た目もそうだけど、性能が凄まじ過ぎて普段使いし辛ぇ…」

「見た目はそんなか?暗めの深海色だからそこまで目立たないけどな。」

「いや、見た目が物語とかでよく聞く魔王みたいじゃないですか。」

「あ?魔王みたいな力持ってる奴にお似合いじゃねぇか。
良いからさっさと着た着た。」


デオに促され防具立てから装備を外し、装着してみる。
分からない所や多少の説明がいる所はガーラや、ギルドメンバーの手を借りて装着していく。

余談だが、この装備に兜が付いていないのは、素材に頭骨が無かったのと、視界が塞がるからだそうだ。


バチン!バチン!

「よし、そこを繋いだら次は…」

バチン!

「ああ、なるほど…で、ここをこうですね…」

ガチン!ガチン!

「よし…よし、これで完了だ!
何だ、なかなか似合ってるじゃねぇか。」


『ギガンテ・ドゥマ』を装着したノアの見た目は、 深海色の『大海獣の柔肌』をインナーの様に着込み、その上から外部装甲の様な造りをした黒色の『大海獣の厚龍殻』で胸部、肩、脇腹、肘、膝を防御。

また以前の装備から荒鬼神の装着部はそのまま流用し、『大海獣の筋繊維』で補強。
その上から太腿を防御する様に腰骨辺りから『大海獣の厚龍殻』で作製した外部装甲で覆う。
その装甲に使用された『大海獣の厚龍殻』には数多くの爪や牙で付けられた細かな傷痕が刻まれ、光の当たり方によっては高名な彫金師によって彫られた装飾品かと見間違う程の煌びやかさを放っている。

重鎧の様な見た目をしているが、非常に軽く、その上『身体能力上昇率3割』が付与されている為、前よりも断然体が軽く感じられる。


カチッカチン!ギュッ!ギュッ!ヒュン!ヒュバッ!

手に籠手とグローブを嵌めたノアは、荒鬼神やナイフ等を振って動作を確認。

ブォン!ズバッ!ブォオン!スタッ!

後ろ回し蹴りから足を刈る動作をし、腕の力だけで体を持ち上げ、逆立ちの体勢で大きく腰を捻り回転蹴りの様な動きをして身を翻して立つ。


「うん、異常はありません。」

「相変わらずお前さんの動きは異常だがな。
どうだ、体が滅茶苦茶軽く感じるハズだ。」

「ええ、今ならバーサークベアに一撃も食らわずに勝てそうです。」

「はは、本当にやりそうだから恐いなぁ、お前さんの場合。」

「それで、依頼費ってどれ位になりますか?」

「そこなんだよな、問題は。
未知の素材だから価値を付けられねぇんだ。」

「え?じゃあ無料?」

「勝ち目無いだろうけどはっ倒すぞ!
さて冗談はさておき、取り敢えずこの後俺らと【防具】ギルドの連中で協議して料金を決める。
お前さんの事だから踏み倒すこたぁねぇだろうからそのまま着てっちまえ。」

「え!?良いんですか?」

「ああ、どのみち直ぐには決めらんねぇ、最低2~3日は掛かっからな。
決まり次第連絡が行くハズだから、そん時に払ってくれりゃ良い。
そんじゃ、明日の御前試合頑張れよ!」


そう言って半ば強引に【防具】ギルドから追い出されたノアは、どこにも立ち寄らず宿へと戻り翌日に備えて眠りに着く事にした。









~王都のとある路地裏~

「スロア様、要請通り全隊王都周辺に召集致しました。」

「ご苦労。
して、彼は何処にいる?」

「お呼びかな?スロア殿。」

「ふふふ、エルベスト殿いよいよ明日だが、調子はどうかな?」

「ああ…まずまず、と言った所かな。
だがあの糞ガキに復讐するには十分だろう。任せときな。」


そう言ってエルベストは再び路地裏へと姿を消す。


「…スロア様、大丈夫でしょうかエルベスト殿は…」

「ふん、自身の力を過信する所は変わらんな。
そんな事だから新人冒険者に遅れを取ったのを学習せんとは…
おい、"アレ"を持ってきたか?」

「は!こちらに。」


配下の者が懐から懐中時計の様な物を取り出し、スロアに渡す。
それを受け取ったスロアはパカッと蓋を開けると、中には生物の心臓の様な物が蠢いていた。

パタン。

「最悪奴に"コレ"を使い、私の新事業の検証に役立てるとしよう。」

「良いのですか?"アレ"はまだ実践投入するには不安要素も多く…」

「不安要素が多いから敢えてこの街で実践投入するのであろうが。
どちらにしろ我々には利しかない。」

「なるほど、畏まりました。」

「ではな、明日の正午だ。忘れるなよ。」

「は!」


そう言って配下の者は姿を消す。
その場に残ったスロアは不敵な笑みを溢していた。







コンコンコン

「あのー、ノア君居ますかー?
私です、ラ「あ、ライリさん、ちょっと待ってて下さーい、今出まーす。」

バチン!バチン!    ガチャッ!

「気付いてましたか…って、うわっ、何か凄い防具着けてますね。」

「ええ、新調しました。
…それよりも、御前試合の会場に向かうのですか?」

「ええ、それで呼びに来たの。
会場は王城の直ぐ近く、この宿から近い所にあるから歩いて行きましょ。」

「…と言うか歩きじゃないと行けませんよね?
外、かなり騒がしいですし…」

「ふふ、それだけ皆【鬼神】に注目してるのよ。」


そう言ってライリはノアを引き連れて宿の外へと向かう。




わいわい   ガヤガヤ

「お!出て来たぞ!【鬼神】の少年だ!」
「【鬼神】!?」
「本当!彼よ!」
「黒い幅広の二刀…確かに噂通りだ!」
「【鬼神】さまー、頑張ってねー!」
「本当に新人冒険者じゃねぇか…」
「何だあれ、凄ぇ防具じゃん…」



「うわぁ…」
「凄い人だかりですね…」


宿の外へ出ると、人、人、人の山である。
昨日までいた貴族や商人、何処ぞのご令嬢以外にも、新人~上級までの冒険者も追加され、大通りは足の踏み場も無いお祭り状態である。


「と、通してー、通してくださーい。」


会場に向かう為、人だかりを掻き分けて進むも人の壁に阻まれ、なかなか進めずにいた。
前を歩くライリの小さな体がどんどんと人だかりの飲まれていく。


「はぁ…ライリさん、ちょっと失礼。」

「え?ひっ!『ズダンッ!』きゃあっ!?」


ライリに断りを入れたノアは、軽めの<殺気放出>を行う。
すると周囲の人だかりが僅かに動きを止めたので、ライリを抱えて近くの建物の上へと跳躍した。

スタッ!

「取り敢えず、あるあの建物まで行けば良いですよね?」

「そ、そうだけど、降ろして貰って大丈夫…
ここからは私が先導するわ。」

「了解でーす。」


ノアは抱えていたライリを建物の屋根に降ろし、2人は王城の隣に建つ、大きな楕円形の建物へ向け、駆け出して行った。
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