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王都編
静寂
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コモンは王の居る方向に向かって手を差し出し、攻撃の合図を送る。
瞬間的に辺りは静寂に包まれる。
「え?」
「あれ?」
「ん?」
「おや?」
「は?」
「何も起こらないぞ?」
「ぷ、くくく…スロアよ、貴殿は自分が有利に立つとベラベラ喋る癖は健在の様だな…」
王と側近のシアロはくっくっくと笑っている。
状況が飲み込めないコモンは、背後に立つエルベストに詰め寄る。
「エ、エルベスト!どうした!何故動かん!貴様に力を与えたのは私だぞ、指示に従わんか!」
と、叫ぶがエルベストに反応は無い。
するとそんなコモンに近付いてくる者が1人。
「スロア殿、その者はエルベストではございませんよ。」
「な、何!?」
コモンが声のした方を見ると、そこにはジョーが立っていた。
「な、何を言って…コイツは間違い無くエルベス…まさか貴様この商人に情報を売って…」
「だから、その者はエルベストでは無いと言っているでしょう。
全く…王命があると言って店を出てったと思ったら、まさかそんな所で任務を受けていたとはね。
もう姿を晒しても良いんじゃないか?
"カサグリア"。」
「え?カサ…え?」
「そうね。
もうあのうざったらしいガキの真似事するなんてこりごり…
どうもぉ、ジョー様の商会で従業員兼【密偵】の真似事をやってます【変装】のカサグリアでーす。」
そうエルベストの姿で話していたが、それでも信じられないと言った表情をするコモンの為に、フードを外し、ぐしゃぐしゃっと髪をかき乱すと、金髪が銀髪に、髪の長さも短髪から長髪に、肌色の肌を軽く擦ると、下から小麦色の肌が見え、胸をドンっと軽く叩くと、フードの下がゆさっと揺れて豊満な胸が現れる。
最後に顔をごしごしと擦ると、特徴的な耳がぴょこんと飛び出し、以前見たカサグリアの顔が姿を現した。
「な、な…では初めからコイツが私の元にやって来たのか…?」
「いーや、貴方とエルベストがこの街で会った時は本物のエルベストよ?」
「は、はぁ?」
「その後、貴方がエルベストに『ヒュドラの竜血』を渡し近郊の山で使った後からは、私が代わりに彼の役をやってたって訳。」
「じ、じゃあ本物のエルベストは…」
「それは「そこからは私が話そう。」
カサグリアの言葉を遮って話し始めたのはエルニストラ王であった。
「奴は貴殿から『ヒュドラの竜血』を貰い受けた後、山中に持って行き即座に使用した。
物的証拠を報告していればまだ温情を与えたものを…」
そこで一旦話を中断して頭をガリガリと掻き
「あ奴は『ヒュドラの竜血』の力に耐えられず、直ぐに呑まれて人外へと成り下がった。
放って置いても悪影響しか無いのでな、私の手で直々に葬ってやった。」
そう、コモンがエルベストに『ヒュドラの竜血』を与えた日の晩、多くの地点で目撃された天空に伸びる光の筋の正体は、エルベストが放った集束ブレスでは無く、人外へと堕ちたエルベストを抹殺する為にエルニストラ王が放った広域殲滅魔法の光であった。
「し、しかし、翌日隊員らが『竜種のブレス』と…」
「ん?貴殿の領では、誰が聞いてるとも知れん場所で任務の報告やらを大声で叫ぶ輩が居るのか?」
「…あ…」
「まぁ私の指示だがな。
そしてカサグリア殿にお願いしてエルベストに【変装】して貰い、貴殿と行動して貰う事にしたのだ。」
「いやー、姿形は変えられても記憶迄は真似れないからね。
本物と私とで話し方違わなかった?」
「…え?…あっ!?」
"んあ?アンタは…スロアさんか…今更何だよ…"
"悪かったなスロア殿、あなたから貰って得たこの力、色々試してみたくなってついついぶっ放しちまったぜ。"
カサグリアから言われ、色々と思い出したコモンは口を開いて固まってしまった。
「あ、どうやら少しは話し方違ったみたいだね…
危ない、危ない。
貴方の意識が別の所に向いててくれて助かったわ。」
顔をポリポリと掻きながら安堵しつつカサグリアが答える。
すると、コモンが何かを察して試合場の方を見る。
「ま、まさか貴様…」
「ああ、知ってましたよ。
まぁ、気付いたのは貴方が僕を殺そうと、鉱山の昇降機を爆破した手の者を調べていた時ですがね。」
試合場でこの流れを見ていたノアが答えると、一気に観客席がどよめく。
「ですので僕はわざと貴方を煽る様な行動を起こしてたんです。
貴方が僕に仕向けた監視の者を襲ったり、わざわざ貴方の前に出て宣戦布告みたいな事をしたのも、僕に目を向けさせて他の者を動き易くしてたんですよ。」
「んでもって私がエルベストに扮して『ヒュドラの竜血』を催促したら貴方私兵に持って来させたでしょ?
そこから私兵の後を尾行て、私邸まで行ったらこっちのものよ。
彼のお陰で動き易くしてくれたから、貴方の私邸には私兵が居らず、何人かの使用人しか居なかったから捜査がし易かったわ。」
「さて、スロア殿。何か申し開きはあるかな?」
「……。」
コモンは口をパクパク開いてはいるが、何も発せずにいた。が
「くそぉっ!」
コモンが何やら魔法陣を展開させ、巨大な火球を作り出す。
その火球の光量は凄まじく、かなりの温度であると窺える。
パチンッ! バチンッ!「がっ!?」
突如、コモンの腰辺りに雷魔法が発動し感電。
近くで彼の護衛をしていた私兵も同じく感電し、コモン共々観客席に倒れ込む。
「な、何…を…」
「暴れられても困るのでな、カサグリア殿に頼んで貴殿の服に符を仕込ませて貰った。」
「試合開始前に話す機会があったでしょ?あの時に仕込ませて貰ったわ。」
「よし、連行しろ。
1度は許してやったが2度目は無いと言ったろう。お前は一生牢屋暮らしだ。」
カサグリアが倒れ伏すコモンを後ろ手に縛り始めるが、コモンは逃れようと暴れる。
「くっ…放…放せ!」カラン!
コモンの懐から懐中時計の様な物が転がり落ちる。
それを見たコモンは少し間を置いてそれに齧り付き、無理矢理こじ開けると、身を捩って胸に押し当てる。
その動きを見た周囲の者は何が起こったのか分からず、その光景を見守っている。
カサグリアも何をやったのか分からず戸惑っていると
ズギュル!ドズッ!「うごあっ!?」
ズヂュッ!ドッ!「がああっ!?」
コモンの体から触手の様な物が飛び出し、共に倒れている護衛に食らい付く。
護衛は悲鳴を上げ、身を捩って逃れようとするが、成す統べなく取り込まれていく。
「な!?何だこれは!?」
カサグリアも驚きの声を上げていると
ブチッ!ズギュル!
後ろ手に縛られた状態だったコモンが、縄を引き千切り、背後にいるカサグリアへ触手を伸ばす。
「「カサグリアさん!」」
ルーシー姉妹がカサグリアの元へ向かおうとするが、大勢の人に阻まれ向かう事が出来ない。
カサグリアは突然の事過ぎて身動きが取れず、胸の辺りに触手が到達するまであと僅かとなった時だった。
ズゴンッ!!「おごぁああっ!?」
変異したコモンの脇腹に深々と荒鬼神が突き刺さる。
バシュンッ!
観客席から変異したコモンの姿は消え、一瞬の内に試合場に転移、脇腹に荒鬼神が突き刺さったコモンはのたうち回る。
焦った様子のノアが『新鋭の翼』メンバーらに声を荒げて伝える。
「皆は試合場から出ろ!コイツに掴まれたら取り込まれるぞ!」
「ま、待て…父上が…」
「よく見ろ!コイツはもうお前の父親じゃない!コイツはもう別の何かだ!」
ノアが言う様にコモンの体は破壊と再構築を繰り返し、至る箇所が次々に変化を起こしていた。
「い、嫌…違…『ドスッ!』
姿形は変わってしまったが、未だそれを父親として見るデミが手を差し出すと、変異したコモンが放った触手がデミの腕に突き刺さる。
「がぁあぁああっ!?」
「くそっ!」
デミを助ける為に駆け出したノアだが
ゾンッ!
アイテムボックスから斧を取り出したガドラが躊躇無くデミの腕を切り落とす。
「何か手はあるのか?」
「取り敢えず観客から遠ざけただけだ!
さぁ早くデミを連れて避難を!」
腕を切り落とされ、意識が朦朧としているデミを連れて試合場から客席へと移動するのを尻目に、ノアは王に向かって叫ぶ。
「エルニストラさん!先程話にあった広域殲滅魔法は放てますか!?」
「あ、ああ可能だが、この人の多さでは放てん、巻き添えを食ってしまう!」
「くっ仕方無いか!では『新鋭の翼』の皆さんの退避が完了したら試合場を覆う程の結界を張って下さい!?」
「な!?…わ、分かった!
しかし【鬼神】殿、逃げる手立てはあるのか?」
「流石に無策で残るつもりはありませんよ。
さぁ早く急いで!」
ノアの言葉を受けた王は、苦渋の表情を浮かべつつも、直ぐ様行動に移すのだった。
瞬間的に辺りは静寂に包まれる。
「え?」
「あれ?」
「ん?」
「おや?」
「は?」
「何も起こらないぞ?」
「ぷ、くくく…スロアよ、貴殿は自分が有利に立つとベラベラ喋る癖は健在の様だな…」
王と側近のシアロはくっくっくと笑っている。
状況が飲み込めないコモンは、背後に立つエルベストに詰め寄る。
「エ、エルベスト!どうした!何故動かん!貴様に力を与えたのは私だぞ、指示に従わんか!」
と、叫ぶがエルベストに反応は無い。
するとそんなコモンに近付いてくる者が1人。
「スロア殿、その者はエルベストではございませんよ。」
「な、何!?」
コモンが声のした方を見ると、そこにはジョーが立っていた。
「な、何を言って…コイツは間違い無くエルベス…まさか貴様この商人に情報を売って…」
「だから、その者はエルベストでは無いと言っているでしょう。
全く…王命があると言って店を出てったと思ったら、まさかそんな所で任務を受けていたとはね。
もう姿を晒しても良いんじゃないか?
"カサグリア"。」
「え?カサ…え?」
「そうね。
もうあのうざったらしいガキの真似事するなんてこりごり…
どうもぉ、ジョー様の商会で従業員兼【密偵】の真似事をやってます【変装】のカサグリアでーす。」
そうエルベストの姿で話していたが、それでも信じられないと言った表情をするコモンの為に、フードを外し、ぐしゃぐしゃっと髪をかき乱すと、金髪が銀髪に、髪の長さも短髪から長髪に、肌色の肌を軽く擦ると、下から小麦色の肌が見え、胸をドンっと軽く叩くと、フードの下がゆさっと揺れて豊満な胸が現れる。
最後に顔をごしごしと擦ると、特徴的な耳がぴょこんと飛び出し、以前見たカサグリアの顔が姿を現した。
「な、な…では初めからコイツが私の元にやって来たのか…?」
「いーや、貴方とエルベストがこの街で会った時は本物のエルベストよ?」
「は、はぁ?」
「その後、貴方がエルベストに『ヒュドラの竜血』を渡し近郊の山で使った後からは、私が代わりに彼の役をやってたって訳。」
「じ、じゃあ本物のエルベストは…」
「それは「そこからは私が話そう。」
カサグリアの言葉を遮って話し始めたのはエルニストラ王であった。
「奴は貴殿から『ヒュドラの竜血』を貰い受けた後、山中に持って行き即座に使用した。
物的証拠を報告していればまだ温情を与えたものを…」
そこで一旦話を中断して頭をガリガリと掻き
「あ奴は『ヒュドラの竜血』の力に耐えられず、直ぐに呑まれて人外へと成り下がった。
放って置いても悪影響しか無いのでな、私の手で直々に葬ってやった。」
そう、コモンがエルベストに『ヒュドラの竜血』を与えた日の晩、多くの地点で目撃された天空に伸びる光の筋の正体は、エルベストが放った集束ブレスでは無く、人外へと堕ちたエルベストを抹殺する為にエルニストラ王が放った広域殲滅魔法の光であった。
「し、しかし、翌日隊員らが『竜種のブレス』と…」
「ん?貴殿の領では、誰が聞いてるとも知れん場所で任務の報告やらを大声で叫ぶ輩が居るのか?」
「…あ…」
「まぁ私の指示だがな。
そしてカサグリア殿にお願いしてエルベストに【変装】して貰い、貴殿と行動して貰う事にしたのだ。」
「いやー、姿形は変えられても記憶迄は真似れないからね。
本物と私とで話し方違わなかった?」
「…え?…あっ!?」
"んあ?アンタは…スロアさんか…今更何だよ…"
"悪かったなスロア殿、あなたから貰って得たこの力、色々試してみたくなってついついぶっ放しちまったぜ。"
カサグリアから言われ、色々と思い出したコモンは口を開いて固まってしまった。
「あ、どうやら少しは話し方違ったみたいだね…
危ない、危ない。
貴方の意識が別の所に向いててくれて助かったわ。」
顔をポリポリと掻きながら安堵しつつカサグリアが答える。
すると、コモンが何かを察して試合場の方を見る。
「ま、まさか貴様…」
「ああ、知ってましたよ。
まぁ、気付いたのは貴方が僕を殺そうと、鉱山の昇降機を爆破した手の者を調べていた時ですがね。」
試合場でこの流れを見ていたノアが答えると、一気に観客席がどよめく。
「ですので僕はわざと貴方を煽る様な行動を起こしてたんです。
貴方が僕に仕向けた監視の者を襲ったり、わざわざ貴方の前に出て宣戦布告みたいな事をしたのも、僕に目を向けさせて他の者を動き易くしてたんですよ。」
「んでもって私がエルベストに扮して『ヒュドラの竜血』を催促したら貴方私兵に持って来させたでしょ?
そこから私兵の後を尾行て、私邸まで行ったらこっちのものよ。
彼のお陰で動き易くしてくれたから、貴方の私邸には私兵が居らず、何人かの使用人しか居なかったから捜査がし易かったわ。」
「さて、スロア殿。何か申し開きはあるかな?」
「……。」
コモンは口をパクパク開いてはいるが、何も発せずにいた。が
「くそぉっ!」
コモンが何やら魔法陣を展開させ、巨大な火球を作り出す。
その火球の光量は凄まじく、かなりの温度であると窺える。
パチンッ! バチンッ!「がっ!?」
突如、コモンの腰辺りに雷魔法が発動し感電。
近くで彼の護衛をしていた私兵も同じく感電し、コモン共々観客席に倒れ込む。
「な、何…を…」
「暴れられても困るのでな、カサグリア殿に頼んで貴殿の服に符を仕込ませて貰った。」
「試合開始前に話す機会があったでしょ?あの時に仕込ませて貰ったわ。」
「よし、連行しろ。
1度は許してやったが2度目は無いと言ったろう。お前は一生牢屋暮らしだ。」
カサグリアが倒れ伏すコモンを後ろ手に縛り始めるが、コモンは逃れようと暴れる。
「くっ…放…放せ!」カラン!
コモンの懐から懐中時計の様な物が転がり落ちる。
それを見たコモンは少し間を置いてそれに齧り付き、無理矢理こじ開けると、身を捩って胸に押し当てる。
その動きを見た周囲の者は何が起こったのか分からず、その光景を見守っている。
カサグリアも何をやったのか分からず戸惑っていると
ズギュル!ドズッ!「うごあっ!?」
ズヂュッ!ドッ!「がああっ!?」
コモンの体から触手の様な物が飛び出し、共に倒れている護衛に食らい付く。
護衛は悲鳴を上げ、身を捩って逃れようとするが、成す統べなく取り込まれていく。
「な!?何だこれは!?」
カサグリアも驚きの声を上げていると
ブチッ!ズギュル!
後ろ手に縛られた状態だったコモンが、縄を引き千切り、背後にいるカサグリアへ触手を伸ばす。
「「カサグリアさん!」」
ルーシー姉妹がカサグリアの元へ向かおうとするが、大勢の人に阻まれ向かう事が出来ない。
カサグリアは突然の事過ぎて身動きが取れず、胸の辺りに触手が到達するまであと僅かとなった時だった。
ズゴンッ!!「おごぁああっ!?」
変異したコモンの脇腹に深々と荒鬼神が突き刺さる。
バシュンッ!
観客席から変異したコモンの姿は消え、一瞬の内に試合場に転移、脇腹に荒鬼神が突き刺さったコモンはのたうち回る。
焦った様子のノアが『新鋭の翼』メンバーらに声を荒げて伝える。
「皆は試合場から出ろ!コイツに掴まれたら取り込まれるぞ!」
「ま、待て…父上が…」
「よく見ろ!コイツはもうお前の父親じゃない!コイツはもう別の何かだ!」
ノアが言う様にコモンの体は破壊と再構築を繰り返し、至る箇所が次々に変化を起こしていた。
「い、嫌…違…『ドスッ!』
姿形は変わってしまったが、未だそれを父親として見るデミが手を差し出すと、変異したコモンが放った触手がデミの腕に突き刺さる。
「がぁあぁああっ!?」
「くそっ!」
デミを助ける為に駆け出したノアだが
ゾンッ!
アイテムボックスから斧を取り出したガドラが躊躇無くデミの腕を切り落とす。
「何か手はあるのか?」
「取り敢えず観客から遠ざけただけだ!
さぁ早くデミを連れて避難を!」
腕を切り落とされ、意識が朦朧としているデミを連れて試合場から客席へと移動するのを尻目に、ノアは王に向かって叫ぶ。
「エルニストラさん!先程話にあった広域殲滅魔法は放てますか!?」
「あ、ああ可能だが、この人の多さでは放てん、巻き添えを食ってしまう!」
「くっ仕方無いか!では『新鋭の翼』の皆さんの退避が完了したら試合場を覆う程の結界を張って下さい!?」
「な!?…わ、分かった!
しかし【鬼神】殿、逃げる手立てはあるのか?」
「流石に無策で残るつもりはありませんよ。
さぁ早く急いで!」
ノアの言葉を受けた王は、苦渋の表情を浮かべつつも、直ぐ様行動に移すのだった。
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