ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
311 / 1,117
王都編

お、おいひぃ…

しおりを挟む
「「「ふわぁ~…お、おいひぃ…」」」

「うわっ、ホントだ、マジ美味ぇ。」
「泥臭くねぇし、鶏肉に近いな。」
「ホント、肉自体は結構サッパリしてるのね。」
「だが塗ってあるタレが甘辛くて肉が進む進む。それに酒が欲しくなるなぁ。」
「う、美味ぇ!」ガツガツ!
「あ、あの…お代わり良いかしら…?」

「ふふ、まだまだ尋常じゃ無い量あるから幾らでもお代わりして良いですよ~」


ランペイジ・クロコダイルの肉にノア特製のタレを掛け、遠火でじっくり焼き上げた炙り肉に、村の子供達は俗に言うメシの顔をし、住人達は舌鼓を打つ。

各ギルドの面々は言わずもがな。
バドロ率いる『アレアトリア』のメンバーも美味しそうに頬張っている。

ちなみにヴァモスとベレーザは一言も喋らず、無言で食い続けている。

取り敢えずのつもりで1メル四方程の大きさの肉を焼いたのだが、速攻で無くなりそうだったので追加で2メル焼く事になった。

それでも足りなかったので何度か焼く事になった。






「あー食った食った…」
「美味しかったわね。」
「おい、お前ん家で飲もうぜ。」
「おお、良いぜ。坊主美味かったぜ、ありがとな!」
「「「お兄ちゃんおいしかった、ありがとー。」」」


一頻り食べた住人達は腹を膨らせ、ノアに感謝の言葉を言いつつ大満足で各々の家へと進んでいった。

ノアは家路に着く子供達に手を振って見送ると、周囲を見やる。


『アレアトリア』は全員集まって何やら相談していた。
恐らく明朝、例の未発見のダンジョンに向かうかどうかの話し合いをしているのだろう。

各ギルドの面々は腹が膨れた事で睡魔が訪れたのだろう。
手早く野営の準備に取り掛かっていた。

ヴァモス、ベレーザも既にうつらうつらとしている。
ちなみに2人は奴隷時の影響か、完全な闇夜の状態では不安になり眠れない様で、寝る時はお互い寄り添い、焚き火の近くで寝ている。


そんな2人を横目にドカリと近くの岩に座ったノアは


「もう"酔い"の方は大丈夫ですかヴァンディットさん?」

ズルリ…

「うう…お騒がせしました…」


影から出て来たヴァンディットは凄く申し訳無さそうにノアに頭を下げる。

焚き火の光に照らされたヴァンディットの顔色はいつも通り青白いのだが、珍しく頬は赤らみ、目が少しとろんとしている。

別に酒を嗜んでいた訳では無いのだが、先程までヴァンディットは酩酊状態であった。

原因はランペイジ・クロコダイル戦である。
ノアが体内から突き破った際に大量の返り血を浴びたのだが、それが良くなかった。

吸血鬼の特性なのか、辺りが大量の血で満たされていたりすると"酔ってしまう"との事。

それは影の中でも影響するらしく、時折影の中から手を出しては足首をニギニギしたり、脇腹をくすぐられたり、首筋を撫でられたり、肩をモミモミされたり、頬をムニムニさわられたりとやたらスキンシップを取って来ていた。

それとどうやらヴァンディットは、酔っている間の記憶がある様で、ずーっとノアにペコペコと頭を下げていた。


「ヴァンディットさんは酔うと絡んでくるんですねぇ…
そう言えば最近色々あり過ぎて構ってませんでしたものねぇ…」

「あ、あの、先程の行いは私の願望とかでは無く、酔った勢いというもので…」

「気にしてませんから落ち着いて下さい。」


しどろもどろになってるヴァンディットを落ち着かせる様に頭をこれでもかと撫でくり回していると、バドロ達がノアの元にやって来ていた。


「お取り込み中だったかな?」

「いえいえ、お気になさらず。
僕の所に来たと言う事は、例の未発見ダンジョンに向かう事にしたのですか?」

「察しが良くて助かるよ。
未発見ダンジョンの探索なんて冒険者家業やってても請けれるかどうか分からないからね。」

「私とディオは元々支援要員だからランペイジ・クロコダイルに立ち向かうのは厳しかったけど、バドロとストラの脳筋コンビが居れば立ち向かえるわ。」

「「誰が脳筋だ、誰が。」」


その後話を進めて行くと、明朝には北の村を出立して未発見ダンジョンの方へと向かうらしい。

バドロ達が元々請けていたデカピパラの調査報告等は、ベルドラッドに渡して完了にするとの事だ。


「了解しました。
それでは明朝渡したい物がありますので声掛けて貰って良いですか?」

「ん?分かった。」


簡単に挨拶をしてバドロ達と別れたノアは【植物】ギルドのマロイとの元へと向かう。


「マロイさん、今日は色々ありましたけど、朝頼んでいた葉苺の葉とシビビ頂いても良いですか?」

「えぇ、量はこんな物で良いかしら?
でもコレで何作るの?」


マロイは葉苺の葉50枚と、シビビを30枚を手渡す。


「まぁまぁ、出来てからのお楽しみという事で。」


マロイから素材を受け取ったノアは、続いて【錬金術】のストリアの所へと向かい獣脂を受け取る。


「ヴァンディットさん、ちょっとお願いしたい事があるのですが良いですか?」

「は、はい、何でしょうか?」

「葉苺の葉とシビビから薬効成分の抽出と濃縮をお願いしても良いですか?」

「はい、畏まりました。それでは1時間程時間を貰っても宜しいでしょうか?」

「1時間ね、了解。
それまでに色々と済ませておくから待ってるよ。」


素材を渡されたヴァンディットは影の中へと戻り、渡したノアはアイテムボックスからキッチンを取り出して何やら作り始めたのだった。







チュン、チュンチュン…

「よっしゃっ、でーけた。」

「ノア様、この丸薬みたいな物は何ですか?
葉苺の葉とシビビから抽出した濃縮液と小麦粉。
それと昨日、商人の方から購入した謎の木の実を砕いて粉にした物を混ぜて丸めて表面を軽く焼いた物…匂いはお菓子みたいですが、材料からして人が食べる様な物じゃありませんよね?」

「そだね。」ザクッ。


と言いながらノアは1粒口の中へ放り込む。


「ノ、ノア様っ!?」

「大丈夫安心して、効果が発揮さるかどうかの確認だよ。」ムグムグ…


ノアが丸薬の様な物を口に入れてから3噛み後


「うおっと、来た来た…うわっ!?来た来たっ!?」


ノアが急に2段階で声を上げた。
恐らくノアの狙った効果が発揮されたのだろう。

よくノアの状態を観察してみると、手足は小刻みに震え、ふらついている。


「ノ、ノア様、直ぐに吐き出「大丈夫。」


ヴァンディットが慌てて吐き出す様に促した時、ノアの震えやふらつきは収まり、いつもの様にケロッとしていた。


「うん、中々の効き目だ。
各種耐性を持っててもそれなりに効いた事から、効果としては十分だな。」

「…ノア様、一体それは何なのですか…?」

「対モンスター用の餌だよ。」 
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった

海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。 ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。 そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。 主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。 ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。 それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。 ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...